私たちは、気候変動を主因とし、酸性化、汚染、乱獲、沿岸生息地の破壊など、さまざまなストレスによってさらに深刻化する、海洋の大きな激動の時代に入りつつある。すでに、資源を利用する人々や沿岸地域のコミュニティは、依存する生態系の激しい変動に翻弄されている。重要な魚類資源は極地方へと移動している。また、複数の圧力が重なることで、破局的な「状態転換」が起こる危険性が高まっている。つまり、豊かな生産性と多様性を備えた海洋生態系が、不毛の荒廃地へと突然かつ不可逆的に変貌するおそれがある。
既存の政策、管理体制、慣行は、海洋は無限の回復力を持つという根強い思い込みと、海洋がもたらすかけがえのないサービスの価値を慢性的に過小評価する姿勢から生まれている。これらは、この新たな時代に到底対応できない。変動する資源に対処するには硬直的すぎるうえ、政治の機能不全、情報の不足、インセンティブの不整合、そして数多くの実務上の問題に阻まれている。
第4次産業革命は、海洋で何が起きているのかを理解し、それを管理する能力を大きく変える可能性がある。クラウドソーシング、自律型の海洋センサーやドローン、リモートセンシング、動物や船舶の追跡、画像撮影と画像解析、ゲノミクスと遺伝学、市民科学は、いずれも強力な新しいデータの流れを生み出している。人工知能、コンピュータービジョン、機械学習は、データの流れを理解の流れへと変換し、ストレス要因の発生源、相互作用、影響を明らかにする可能性をもたらす。
これらの新たな能力を組み合わせることで、複数のストレス要因にさらされるシステムの複雑な動態を理解し、リスクを予測し、回復力を高める鍵となる手段を特定し、リアルタイムで適応するための前例のない可能性も開かれる。これにより、海洋管理は、静的から動的へ、縦割りから複数の分野にまたがるものへとパラダイムシフトを遂げる。また、政策の枠を超え、資源利用者、地域コミュニティ、買い手、消費者の行動に直接影響を与える可能性もある。次のような取り組みがある。Global Fishing WatchとProject Eyes on the Seasは、船舶トランスポンダーと衛星画像から得られるリアルタイムデータを活用して違法漁業を発見し、法執行を可能にしている。海洋を航行するドローンは、既存のコストのごく一部で、海洋状況や魚類資源に関するより迅速なデータを提供する。安価なDNA検査により、管理者は生態系にどの種が生息しているかを検出できる。ビットコインを支えるブロックチェーンのような技術は、漁船からスーパーマーケットまで魚を追跡する手段として期待されている。
新たなアプローチ
歴史的に、海洋資源の管理改善に向けた取り組みは、既得権益や制度・政治に根深く組み込まれた慣性によって、しばしば阻まれてきた。この慣性を打ち破る機会となる3つの動きがある。
1つ目は危機である。生態系が崩壊したり、魚類資源が消失したりするなかで、一部の資源管理者や利用者が現状への安住から揺さぶられ、答えを切望する姿がすでに見られる。こうした混乱は確かに遅行指標だが、頻度と深刻さが増すにつれて、行動を促す力となる。
2つ目はガバナンスの革新である。地球規模の共有資源がもたらす課題に取り組む新たなアプローチは、大きな可能性を示している。市民社会や有力企業は、持続可能な漁業の認証などの自主的な取り組みを通じて、実質的な変化を促せると認識しつつある。より幅広い連携も生まれている。例えば、世界経済フォーラムの取り組みでは、NGO、世界最大級の小売業者、マグロ加工業者、各国政府が一堂に会し、2020年までにマグロ漁業の完全なトレーサビリティを義務付ける共同の約束を掲げている。これは同分野を持続可能な形で管理するための基盤となる。こうした革新は、政治的な行き詰まりを打開し、必要な変化を進める道筋となる。
3つ目は、データ革命そのものがもたらす新たな解決策の大きな可能性である。20年前に認証制度が登場したときと同様、新たなツールや解決策を生み出すことで、慣行の変更が可能になり、実際に行動を促せることが分かっている。データ革命は、リスクを明らかにして機会を特定し、対応を支えるリアルタイム情報を提供し、資源をより持続可能な形で管理・利用する新たな能力を生み出すことで、行動を促すツールをつくる豊富な機会をもたらす。
これから待ち受ける困難な課題に、簡単な答えはない。しかし、この課題に取り組むうえで、第4次産業革命の革新がかけがえのない力となり得ることは明らかだ。





