債務に苦しむ国々は、マクロ経済上の問題によってさらに困難な状況に置かれている。
債務は、保健や教育など、国にとって不可欠な分野への支出を妨げる深刻な問題である。
環境に配慮した経済への移行は、債務に苦しむ国々の発展を後押しし、債務負担を軽減する可能性がある。
サプライチェーンの混乱、ロシア・ウクライナ戦争、高インフレなど、世界が複数の課題に直面するなか、多くの国が債務危機の瀬戸際にある。国連は、深刻な債務問題を抱える開発途上国を54か国と特定した。ガーナ、エクアドル、スリランカなど、機能する政府があり大きな可能性を秘めた国々も、そのなかに含まれる。
債務は、保健や教育など、国にとって不可欠な分野への支出を妨げる深刻な問題である。多くの国では、利払いが社会保障、教育、保健を合わせた支出を上回る。これは、国民と経済に長期的な問題をもたらす。しかし、開発途上国が直面する危機は債務だけではない。世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2023』によると、10年後に深刻度が最も高いリスクは気候変動の緩和に失敗することであり、次に深刻なリスクは気候変動への適応に失敗することである。
開発途上国は気候変動の脅威に直面している一方、深刻な債務危機のために気候変動対策の資金を調達できず、大きく制約されている。このため、多くの指導者が、自国の経済問題から抜け出すグリーンな道筋を描こうとしている。
よりグリーンな経済への支持
マッキンゼーの調査によると、世界全体でネットゼロを達成するには、今後30年間、毎年9.2兆ドルの投資が必要となる。IPCCの報告書は、気温上昇を産業革命前の水準から1.5℃以内に抑えるには、世界が2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロ目標を達成する必要があるとしている。よりグリーンな経済は、幅広い市民の支持を得ており、企業からも後押しされている。投資家の85%がサステナビリティを考慮すると述べている。
あるデロイトの報告書によると、ミレニアル世代とZ世代のほぼ半数が、個人の倫理観に基づいてキャリアの選択をしたと答えている。その結果、サステナビリティへの取り組みが優れた企業ほど、優秀な人材を引きつけている。グリーンへの移行にはスキルが不可欠だ。国内からも海外投資からも適切な人材を引きつけるには、開発途上国はグリーン化を進めなければならない。
課題
よりグリーンな経済への移行には課題が伴う。主な課題の一つは、報告の枠組みが多種多様で、統一性に欠けていることだ。そのため、進捗の測定が複雑になる。データの収集も課題である。どの報告基準を使うにしても、提供されるデータの質と量に左右されるからだ。大企業によるグリーンウォッシングは当初、苦い経験となる。しかし、企業が従業員、顧客、株主、市民社会、メディアを長期にわたって欺き続けることはできないため、いずれ徐々に姿を消すだろう。
最後に、多くの開発途上国で債務危機が広がり、世界も複数の危機に直面するなか、双方に利益をもたらす機会を探す必要がある。幸い、グリーンな繁栄を実現するために必要な政策、技術、資金はすべてそろっている。中国やインドのように、気候変動を主に問題としてではなく、グリーン市場を獲得し経済を成長させる機会と捉える開発途上国が、先頭に立つ可能性が高い。重要なのは、開発援助を待つことではなく、国内でグリーン成長の条件を整えることだ。開発援助は遅く、官僚的で、金額も小さい傾向がある。
グリーン債務スワップは、債務危機と環境問題を結びつける方法の一つだ。先駆けとなったのはセーシェルで、パリクラブとの合意により、インド洋の真ん中にある広大な自然保護区を守る一方、債務について有利な扱いを受け入れた。
開発途上国における、よりグリーンな経済のプラス効果
投資
多くの開発途上国では債務がもはや持続可能な水準ではないため、債務返済に必要な外貨を得る重要な方法は、投資を呼び込むことだ。デロイトによると、大企業の経営幹部の75%が、自社は過去1年間にサステナビリティ投資を増やしたと述べている。2020年には、85%の投資家が投資前にESG要因を検討しており、とりわけ環境に対する投資家の関心の高まりがうかがえる。世界最大の資産運用会社ブラックロックのCEOが最近発表した書簡は、投資家がサステナビリティを正しいこととしてだけでなく、利益につながることとしても捉えていることを示している。
エネルギー安全保障
多くの開発途上国が直面する大きな危機の一つは、エネルギー需要を満たすための輸入に必要な外貨準備が不足していることだ。多くの開発途上国では貿易赤字が膨らんでおり、エネルギーの輸入がその主な原因となっている。再生可能エネルギーを利用すれば、貴重な外貨準備を温存し、ほかの開発目的に充てることができる。再生可能エネルギーは今や、あらゆる地域で化石燃料より安価である。水力、太陽光、風力などの国内資源に切り替えれば、国内で雇用を創出し、外貨を節約できる。その外貨は教育、インフラ、保健により有効に活用できる。再生可能エネルギーは大半が国内で生産されるため、エネルギー安全保障、国内の成長、地球環境への配慮のすべてにとって好ましい。痛ましいことではあるが、ウクライナでの戦争は再生可能エネルギーの開発を大きく加速させる可能性が高い。小島嶼開発途上国は、グリーンな国内資源への転換で最も大きな恩恵を受ける国々の一つだ。輸送距離が長いために割高な化石燃料を購入しているからである。
食料安全保障
多くの開発途上国は、農業の非効率な手法が原因で食料を輸入している。その結果、貿易赤字が膨らみ、これらの国々にとって大きな負担となっている。貿易赤字を減らすため、輸出産業に不可欠な多くの製品の輸入関税を引き上げることも多い。これは、輸出を重視する製造業に深刻な不利をもたらす。ロシア・ウクライナ戦争は、肥料の28%、小麦輸出の30%がロシアとウクライナから供給されていることを通じて、世界の食料供給がいかに脆弱かを示した。より環境に配慮した農業政策は、資源の使用量を減らし、循環型の利用を取り入れた、より効率的な生産につながり、開発途上国の食料生産を増やす可能性がある。水は今後、希少な資源になると見込まれている。農業におけるグリーン技術は、Googleが支援する垂直農法企業ボウリー・ファーミングが示すように、水の使用量を最大95%削減する。
輸出の拡大
債務に苦しむ国々が融資を返済するには外貨準備が必要であり、そのためには輸出の拡大が欠かせない。EUのタクソノミーや、多くの国がネットゼロ目標を設定していることを踏まえると、開発途上地域の多くの産業は、EU、中国などに輸出するために、環境面で持続可能な製造方法へ切り替える必要がある。アップルやマイクロソフトをはじめとする大手民間企業は、2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することを約束している。つまり、開発途上国のサプライヤーは、世界のサプライチェーンに加わるため、よりグリーンな方法で製造しなければならない。
要するに、グリーン化は開発途上国にとって高くつく負担ではなく、進歩と発展を実現する大きな機会である。






