世界でグリーン雇用の機会が急速に拡大する一方、気候変動に対処するための関連スキルを持つ労働者はごく一部にとどまっています。
教育制度は、エネルギー転換の要請に緊急に適応し、化石燃料業界からの資金提供を通じて根付いた化石燃料教育から脱却する必要があります。
より環境に優しい未来を支えられる人材を育成するため、教育課程には持続可能なエネルギーと再生可能エネルギーを重視する内容を取り入れなければなりません。
クリーンエネルギーへの世界的な移行には、産業分野に特化した教育とスキルが必要です。過去5年間、グリーンスキルとこの分野の人材への需要は指数関数的に高まり、再生可能エネルギー産業では数百万人分の新たな雇用が生まれました。しかし、世界経済フォーラムによると、クリーンエネルギー分野の雇用が急増する一方で、グリーン雇用――風力タービン技術者、太陽光発電設備の設置作業員、太陽光・風力・水力エネルギーのエンジニア、電気技師、エネルギーアナリスト、ソフトウェア開発者、エネルギー貯蔵技術者、建設管理者など――は、グリーンスキルを持つ労働者の増加を2倍の速さで上回っています。
2023年、国際エネルギー機関(IEA)の事務局長ファティ・ビロル氏は、エネルギー転換が前例のない速度で進むことで「世界中に数百万人分の新たな雇用機会が生まれているが、その充足は十分に速く進んでいない」と指摘しました。さらに、LinkedInの2023年グローバル・グリーンスキル報告書によると、気候変動の緩和に関連するスキルを持つ人は8人に1人にすぎません。
労働力の供給不足の原因は何でしょうか。大学は、グリーン人材と必要なスキルセットの急速に拡大する不足に対応できているでしょうか。
ノルウェー国際問題研究所に所属する同僚のインドラ・オーバーランドと私は、これらの問いを調査で検討しました。対象は196カ国の18,400大学です。大学が教育課程において、化石燃料から再生可能エネルギーへ移行しているか、またどれほど速やかに移行しているかを分析することが目的でした。
主な、そして最も憂慮すべき調査結果の一つは、世界の大学が今なお、再生可能エネルギー産業よりも化石燃料産業向けに多くの人材を育成していることです。
調査によると、世界のエネルギー関連学位課程の68%は今なお化石燃料に重点を置き、再生可能エネルギーに重点を置くものはわずか32%です。変化が現在のペースで続けば、大学の再生可能エネルギー関連学位課程が100%に達するのは、遠い未来の2107年になります。

化石燃料経済を支える教育は、今も大半の地域に広く見られます。アジア太平洋地域では、主に中国とインドで教育課程が増えたことを背景に、クリーンエネルギー教育の支援が目覚ましく進みました。他のアジア諸国は後れを取っています。
グリーンスキルの需要は、中南米、アフリカ、中東、ユーラシアの発展途上国で特に高い一方、これらの地域の大学が提供するクリーンエネルギー関連の学位課程はごくわずかです。

大学の脱炭素化は困難な課題
大学は石炭と石油の研究を優先するため、クリーンエネルギー分野の人材需要の拡大に応えられていません。改革が遅れる一因として、炭素ロックインが考えられます。大学は何十年にもわたり、政府や石油会社から資金援助を受け、数千人の学生に化石燃料教育を提供してきました。
こうした資金提供は、化石燃料に重点を置く大学、学部、研究所という形で深く根付いた「ハード」な炭素インフラと、教員、エンジニア、教材、教科書、カリキュラム、考え方などの人的資本という形をとる「ソフト」な炭素インフラの土台を実質的に築きました。
その結果、世界の大学の脱炭素化は、さまざまな関係者の抵抗や、化石燃料業界から大学への継続的な支援と資金提供によって困難になっています。
調査によると、再生可能エネルギー教育の推進では、私立大学のほうが公立大学より積極的でした。私立大学は化石燃料関連企業からの支援への依存度が低く、炭素ロックインの影響を受けにくいため、この熱意につながっている可能性があります。
一方、大学で提供される教育内容は、世界のクリーンエネルギー分野の関係者や市民社会の担い手による精査が十分に行われていません。熟練人材の不足によって多くの国がクリーンエネルギーへの移行に苦慮しているにもかかわらず、大学の化石燃料関連学部や学位課程の段階的廃止を議論する人はいません。
こうした重点の見直しによって数百万ドルを節約し、各国の方針を再生可能エネルギー教育のニーズに沿わせることができます。この調査は問題への認識を高め、世界各地の大学における化石燃料教育課程の段階的廃止をより速やかに進める一助となり得ます。
再生可能エネルギー教育への投資拡大が不可欠
人材供給が限られているもう一つの重要な要因は、高等教育が世界的なエネルギー転換の重要な要素として長らく見過ごされてきたことです。その結果、現在、再生可能エネルギー教育への資金は、化石燃料教育と比べて世界的に著しく不足しています。
国際機関や民間投資家は長年、風力・太陽光技術の生産と導入、電化の促進、送電網の拡張など、エネルギー転換の重要分野を優先してきました。また、エネルギー転換における雇用面にも注目してきましたが、再生可能エネルギー教育にはほとんど注意を払ってきませんでした。
今日、再生可能エネルギー教育は投資の優先分野としてほとんど取り上げられていません。この状況は、世界各地で政府の支援が限られていることでさらに悪化しています。
この状況を変えることが何より重要です。再生可能エネルギー教育への投資を拡大し、世界のクリーンエネルギー関係者にとっての優先分野とすることが急務です。大学と政策立案者は、再生可能エネルギー分野の人材育成を優先する必要があります。
大学、とりわけ発展途上国の大学には、新たなグリーンエネルギー学部や学位課程の設置に向けて、より多くの資金援助と支援が必要です。
さらに、現在、化石燃料を対象とする教育に充てられている公的・民間資金を、再生可能エネルギー教育に振り向けるべきです。教育省は大学と連携し、太陽光、風力、水力エネルギーに関する学位課程の認定を迅速化する必要があります。これを怠れば、パリ協定の実施が危うくなるおそれがあります。
新たな国際教育イニシアチブが登場しているのは心強いことです。例えば、世界経済フォーラムの「リスキリング革命」イニシアチブは、2030年までに2億人を超える人々がグリーン雇用に就けるよう、必要なスキルを身につけることを目指しています。
欧州サステナビリティ科学・研究スクールは、欧州でサステナビリティ科学の教育を推進しています。大学と連携することで、こうしたイニシアチブや同様の取り組みは、クリーンエネルギー産業に必要な人材の質の高い育成を後押しできます。





