低所得国の人々は、避難を余儀なくされる可能性が4倍高く、豊かな国に暮らす人々よりも極端な気象現象の影響を受けやすい。
気候レジリエンスと経済発展は健全な生態系に依存しているため、自然への投資は、貧困地域の人々の気候正義を確保するうえで欠かせません。
企業の気候危機への対応が、レジリエンスと繁栄を備えた未来の実現に貢献するには、平等、公正、自然への投資がいずれも不可欠です。
グラスゴーでの気候交渉の行方が左右されるなか、地球規模の緊急事態に対応する企業の役割は、Race to Zeroなどの取り組みを通じて、かつてないほど重要になっています。
危機への寄与が最も少なく、暮らしがレジリエンスの高い自然環境に依存している社会の最も脆弱な層が、最も深刻な影響を受けています。それだけに、企業は気候変動への取り組みの中核に平等と公正を据えなければなりません。
世界人口の最も裕福な上位10%が、汚染を引き起こすガスの52%を排出した一方、1990年から2015年までの累積炭素排出量に占める、最も貧しい下位50%の割合はわずか7%でした。
洪水、暴風雨、干ばつ、火災などの気候災害は、インフラの質が最も低く、復興に使える資源も限られた地域社会に、最大の被害をもたらします。低所得国の人々は、避難を余儀なくされる可能性が4倍高く、豊かな国に暮らす人々よりも極端な気象現象の影響を受けやすいのです。また、気候変動は、農業、林業、漁業、観光業など、天然資源に依存する産業に深刻な影響を及ぼします。貧しい人々は、こうした産業に生計を依存していることが少なくありません。例えば、アフリカでは雇用の65%を農業が占め、小島嶼開発途上国では沿岸観光業がGDPの20%~50%を占めています。
公正な移行の実現
したがって企業は、何百万人もの労働者とその地域社会を取り残さない、環境負荷が低く低炭素な経済への転換である「公正な移行」の実現に貢献するとともに、事業運営、サプライチェーン、慈善活動、政策対話への参加を通じて、気候正義を確保することが重要です。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの復興とグリーン経済への移行は、グリーン雇用を生み、社会的価値を創出する産業を支えるための資本再配分を促す可能性を秘めています。しかし、気候正義に取り組まない「より良い復興」は、状況を悪化させかねません。例えば、貧困層への影響を緩和せずに汚染をもたらす燃料のコストを引き上げる政策は、エネルギー貧困を深刻化させ、脆弱性を高めるおそれがあります。支援がなければ、不利な立場にある地域社会の人々は、低炭素経済で活躍するために必要な訓練やスキルを身につけることに苦労するでしょう。
Business Fights Povertyの報告書、ビジネスと気候正義は、企業が気候変動への対応に気候正義をどう組み込めるかを検討し、多くの機会を示しています。これには、バリューチェーン全体で小規模生産者のレジリエンスに投資すること、特に女性の経済的機会を支援すること、保険など不可欠な製品やサービスへのアクセスを拡大し、手頃な価格で提供すること、そして炭素集約型産業からの移行の影響を受ける地域で、特に低賃金労働者に焦点を当てながら、地域社会の再生と経済の多角化に投資することが含まれます。
自然にプラスの効果をもたらす対応
気候レジリエンスと経済発展は健全な生態系に依存しているため、自然への投資は、貧困地域の人々の気候正義を確保し、世界的なパンデミックからの包摂的な復興を実現するうえで欠かせません。特に重要なのは、気候変動の影響を最も受ける地域社会を支援し、UpLink気候正義チャレンジなどの取り組みを通じて、大胆な環境・社会経済的解決策を拡大することです。同チャレンジでは現在、気候災害の影響を最も受ける地域社会から革新的な解決策を広く募っています。その目的は、地域社会の自己決定を支え、アイデアを後押しし、人々の声を届けることです。
企業が貢献できる方法の一つは、持続可能な地域事業を支援することです。WWFのNature Pays Hubは、世界各地の何百もの地域事業と連携し、自然保護、社会正義、経済的機会を結びつけています。持続可能な事業に取り組む地域社会は、世界でも特に貴重な自然景観を守る強力な協力者です。また、気候変動に対するレジリエンスも高めています。マダガスカルのヴェゾ族はその好例です。地域社会はWWFおよび国際輸出業者のOcean Farmersとともに海藻養殖事業を立ち上げ、自然環境の保全に貢献しながら、漁業に携わる地域社会に持続可能な収入をもたらしています。
さらに、WWFが新型コロナウイルス感染症のパンデミックから地域社会が復興できるよう進めてきた支援策の多くは、例えば、エコツーリズムに依存する人々が収入源を多角化できるよう支援することなど、気候レジリエンスにも応用し、その強化に役立てることができます。
世界の気温上昇を1.5°Cに抑える機会は極めて限られていますが、まだ可能性はあり、気候と自然に対する企業の統合的な行動への機運も高まっています。しかし、社会全体を巻き込まず、不平等に対処せず、幅広い基盤を持ちイノベーション主導のグリーン経済を築かない取り組みでは、気候の影響と脆弱性に対応しようとしても、人類のニーズを満たすには不十分です。
企業の気候危機への対応が、レジリエンスと繁栄を備えた未来の実現に貢献するには、平等、公正、自然への投資がいずれも不可欠です。
世界経済フォーラムの初期段階イノベーション促進イニシアチブであるUpLinkは、ネットゼロで自然にプラスの効果をもたらし、公平な未来に欠かせない、目的意識を持った起業家を支援し、その成長を加速しています。詳しく知り、UpLinkコミュニティに参加するには、こちらをクリック。




