プラスチックの脱炭素化、2050年は思うほど遠くない

A man holds a tray with recycled material including plastics in a factory in Guimaraes, Portugal, February 24, 2023.
The decarbonisation of plastics is a critical front in the fight against climate change.Image: REUTERS/Pedro Nunes
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  • 野心的なネットゼロ目標とネットポジティブの実現を目指すには、プラスチック産業はスピード、人材、政策という3つの重要な要素に頼ることになります。

  • 欧州のプラスチックメーカーは移行に取り組む姿勢を示していますが、現在のマクロ経済の逆風の中で歩みを止めずに進めるかどうかが大きく影響します。

  • しかし、こうした目標の達成は最終的に欧州の競争優位につながり、気候変動との闘いに大きな進展をもたらします。

欧州のプラスチックメーカーはネットゼロへの移行に取り組む姿勢を示していますが、現在のマクロ経済の逆風の中で歩みを止めずに進めるかどうかが大きく影響します。

地政学的不安定と、インフレに起因するマクロ経済環境の悪化は、世界各地の家庭、企業、国々に大きな不安をもたらしています。同時に、気候変動は今日の世界における最大のリスクであり、変化を促す主な要因でもあります。

プラスチックが広く普及し、現在その炭素集約度が高いことから、プラスチック産業は、線形型の消費モデルが地球の限界をいかに損なうかを示す警鐘となっています。今日の厳しい事業環境にもかかわらず、今後3~5年は、プラスチック産業が今世紀半ばまでに脱炭素化できるかを左右する重要な期間となります。

リサイクルと循環型経済へのロードマップ

現在、欧州ではプラスチック廃棄物のわずか14%しかリサイクルされておらず、「実効的にリサイクル」されているのはわずか2%です。これは、高付加価値用途に適した素材へと再生されていることを意味します。

高品質のプラスチック製品を環境効率の高い方法で複数のライフサイクルにわたって流通させ続ける循環型経済が解決策です。

プラスチックと炭素の循環性を実質的に前進させるには、気候中立に向けた実行可能なロードマップの策定が欠かせません。こうしたロードマップを作成するため、プラスチック産業のバリューチェーン全体から約100社が、NGOや有力なサステナビリティ・コンサルタントと協力しました。

各社は、明確な優先順位に基づいて実施する、相互に補完し合う多様な解決策を求めました。この「カスケード型」ポートフォリオには、さまざまなリサイクル技術、「バージン品質」のプラスチック製品向けの代替基礎原料(原料)に加え、リサイクル性を高める新たなビジネスモデルや製品設計の原則が含まれます。

こうした代替原料が「ABC」です。

A: 直接炭素回収による大気中の炭素への影響の低減。

B: 原料としてのバイオマス。

C: リサイクル原料から得られる循環炭素を活用し、製造された資源の寿命を延ばすことで、製品に蓄えられた炭素を無駄にしない。

プラスチック廃棄物への新たな持続可能なアプローチには、現在のプロセスに大幅な変更が必要です。Image: Systemiq

2050年は驚くほど近い

素材の循環利用が、炭素排出削減の可能性の大部分を占めます。2050年までに、65%の削減を実現できます。これは、再利用やリサイクルを前提とした設計、機械的・化学的リサイクルなどの方法によって、現在の欧州産業が生み出す排出量を削減するものです。

残る排出削減の可能性は、バージン・プラスチック素材そのものの製造を脱炭素化することで実現すると見込まれています。再生可能エネルギー源の利用とグリーン水素が重要な要素です。

資本が長期間固定されるため、場合によっては40年を超えることもあり、今後5年間にリサイクル施設、焼却炉、クラッカーへ行われる投資は、数十年先まで影響を及ぼします。また、産業界は投資判断の段階で、設備改修への対応力も考慮する必要があります。さらに、イノベーションのサイクルは長期に及ぶことがあります。今日研究室で実験されていることが、移行プロセスの後半になって初めて気候面の成果をもたらす可能性もあります。

気候中立型の生産プロセスや製品の普及、そして技術開発の成長は、直線的ではなく指数関数的な曲線をたどることを認識しなければなりません。そのため、今実施が遅れれば、曲線の臨界量に達する時期が2050年の目標を過ぎてしまいます。だからこそ、よく聞かれる見方とは異なり、2050年は遠くありません。実際、驚くほど近いのです。

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プラスチックとエネルギー

プラスチック産業の脱炭素化の取り組みは、世界のほぼすべての製造品を包含する下流産業に大きな波及効果をもたらします。それに加え、プラスチック産業は、産業プロセスで発生する炭素を回収し、再処理することで、最終的には他産業の炭素吸収源となる可能性があります。

この取り組みの成否は、欧州連合(EU)に直接的な影響を及ぼします。欧州のエネルギーと資源の安全保障を確保するには、一次エネルギーのネットゼロと資源の循環利用が唯一実行可能な道です。

スピード、人材、政策

ネットゼロを実現するうえで重要な要素は、スピード、人材、政策の3つです。第一に、プラスチック産業、その顧客、政策立案者は、状況の深刻さに見合う緊急性をもって行動しなければなりません。第二に、より持続可能な未来への移行に永続的な影響を与えたいと願う、最も優秀で創造性豊かなエンジニアを産業界は引きつける必要があります。

第三に、産業界と政策立案者の対話を一層深める必要があることは明らかです。共通の目標は、必要なインフラとイノベーションへの投資を促す環境を整えることであり、欧州産業の競争力を確保しながらこれを実現しなければなりません。

もちろん、目標を設定すること、特に高い目標を掲げることは簡単です。こうした約束を支えた人々が指揮を執る立場を退いた後、何十年も先に「請求」が来るのであれば、なおさらです。

その結果生じるモラルハザードを避けるため、進捗を継続的に監視しなければなりません。2050年までの気候中立への約束は、期間の満了時に元本全額の返済が一度に求められる「期限一括返済型」融資ではありません。企業は定められた「償却」スケジュールを守り、数年ごとに約束を「借り換える」必要があります。つまり、中間目標を達成しなければなりません。

課題の規模は大きいものの、楽観できる明確な理由が2つあります。第一に、プラスチック産業は協働性が非常に高いことです。これにより、産業界とその顧客はそれぞれの知識や専門性を生かし、解決策を共同で開発できます。第二に、欧州グリーンディールには、適切に実行されれば、欧州の移行を促す触媒となり、これからの希少性の時代に競争優位をもたらす循環型モデルへと導く可能性があります。

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