産業の脱炭素化は考えられていたより容易かもしれない3つの理由

A fossil fuel burning factory, illustrating the need to decarbonise industry
Industry must decarbonise fast for the sake of the planetImage: Photo by Patrick Hendry on Unsplash
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  • 産業は気候変動を引き起こす最大の要因であり、世界の排出量のほぼ3分の1を占めています。

  • 産業を脱炭素化できなければ、気候目標は達成できません。

  • しかし産業には、産業由来の排出量の半分以上を削減できる可能性を秘めた方法があります。再生可能電力と蓄熱を組み合わせることです。

産業は気候変動を引き起こす最大の要因であり、世界の排出量のほぼ3分の1を占めています。この事実は厳しい現実を浮き彫りにしています。産業を脱炭素化できなければ、気候目標は達成できません。

すべてのセクターが脱炭素化に課題を抱えていますが、多くのセクターには実現に向けた明快な方法があります。電力網では、安価な風力・太陽光発電と24時間対応のエネルギー貯蔵を組み合わせます。建築物では電化と効率化、陸上輸送では電気自動車と充電網が鍵となります。

一方、産業は「脱炭素化が困難」と呼ばれてきました。しかし産業にも、独自の明快な方法があります。再生可能電力と蓄熱を組み合わせれば、産業由来の排出量の半分以上を削減できる可能性があります。

産業用熱がもたらす機会

ほぼすべての産業施設では、材料を溶かす、乾燥させる、調理する、分離する、焼成するなど、さまざまな加工に熱を利用しています。この熱は、3分の2にあたる産業全体のエネルギー消費量と、産業由来の排出量の大部分を占めています。

非常に複雑なセクターである産業ですが、その大半で使われる熱の仕組みは驚くほど単純です。ほとんどあらゆるものを製造する際、製造業者は化石燃料を燃やし、パイプを通じて製造工程に蒸気や熱風を供給しています。

クリーンな産業用熱という課題を解決できれば、産業の脱炭素化を速やかに進める新たな道を切り開けます。

再生可能エネルギーで稼働する蓄熱によって、産業用熱を脱炭素化できます。

ほぼすべての産業施設が熱をつくるために化石燃料に依存しているのは、偶然ではありません。化石燃料は安価で、貯蔵しやすく、産業工程に熱として届けるのも容易です。これまで、代替手段がこの3つすべての点で化石燃料に対抗するのは困難でした。

しかし状況は変わりつつあります。産業の脱炭素化は、多くの人が可能だと考えていたよりも迅速かつ簡単に進められる理由を3つ紹介します。

1. 安価な再生可能エネルギーが産業の脱炭素化に大きな機会をもたらす

誘導加熱装置から電気アーク炉まで、産業施設では、仕組みが単純で、化石燃料の燃焼よりもはるかに高い温度を実現できるため、電力が幅広く利用されています。しかし、産業用熱をつくるために24時間電力網の電力を使うと、施設内で化石燃料を燃やす場合に比べ、費用が5倍になることも少なくありません。一方、この10年で再生可能エネルギーのコストは大幅に低下し、地球上のほぼあらゆる場所で、風力と太陽光が新たな電力の最も安価な供給源となりました。

近年、再生可能エネルギーの導入が急増したことで、電力コストの状況は変わっています。日が差したり風が吹いたりすると、電力コストはゼロに近づき、さらにはマイナスになることもあります。再生可能エネルギーの導入率が高い地域では、すでにこうした現象が見られます。米国の一部地域では昨年、卸電力価格が時間の30%にもわたってマイナスになりました。

しかし、安価な風力や太陽光だけでは産業用熱を脱炭素化できません。産業では、何百万もの施設で毎日24時間、工程用の熱を必要としています。安価な再生可能エネルギーの脱炭素化の可能性を引き出すには、エネルギーを貯蔵し、昼夜を問わず安定して供給できるようにする必要があります。

2. 蓄熱によって、安価で拡張性が高く豊富な材料を使ってエネルギーを貯蔵できる

蓄熱(TES)を使えば、再生可能エネルギーが最も安価なとき、つまり日が差したり風が吹いたりするときに利用して、「蓄熱池」を数千度まで加熱し、その熱を数時間から数日間貯蔵して、必要に応じて取り出せます。エネルギー貯蔵の非常にシンプルな方法である蓄熱池は、低コストで組み立てられ、容易に保守でき、数十年にわたって運用できます。

何より重要なのは、蓄熱池が、ほかの多くの電池で必要となる高価で希少な材料に依存しないことです。蓄熱池は電気ではなく熱としてエネルギーを貯蔵するため、コンクリートや炭素などの安価で豊富な材料を使い、シンプルな断熱容器で囲むことができます。

炭素を例に挙げましょう。TES企業が利用する固体炭素には、Antora Energyなどがあり、非常に安価で、年間3,000万トンを超える既存の広大な供給網があります。これはリチウムの50倍以上です。さらに、大量の熱を貯蔵するのに必要な特性も備えています。極めて高温でも固体のままで、エネルギー密度が非常に高く、大量のエネルギーをすばやく吸収・放出できます。

世界の再生可能エネルギー発電容量は昨年、約10%増加した。
世界の再生可能エネルギー発電容量は昨年、約10%増加した。
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3. 蓄熱によってクリーンエネルギーを既存の産業工程に直接組み込める

蓄熱池は、地球上のほぼすべての産業工程に最適です。炭素などの材料は、1,500°Cを超える温度で熱を供給でき、鉄鋼やセメントの製造に十分な高温を実現します。同じく重要なのは、高いエネルギー密度によって、この熱を非常に小さな設置面積で貯蔵できることです。設置面積が小さいため、熱が必要な場所に蓄熱設備を設置できるうえ、断熱材や配管など蓄熱池に付随するほかのすべての部品のコストと複雑さも抑えられます。

また、風力・太陽光発電所は数マイル離れた場所からでも効率損失を最小限に抑えて接続できるため、蓄熱池は最適な再生可能エネルギー発電所からクリーンな電力を供給できます。こうして、化石燃料が優位に立ってきたコスト、貯蔵、供給の三拍子がそろいます。

産業由来の排出量の半分以上を削減できる

産業の脱炭素化が困難であることは確かです。鉄鋼、セメント、ガラス、化学製品、食品など、私たちの世界を形づくる素材の生産に新たな技術を適用する必要があります。また、完全な脱炭素化に向けて、炭素回収から素材の革新まで、セクターごとに異なる手法が求められます。

しかし、こうした課題があるからといって、産業由来の排出源のうち、最大かつ対策可能性の高いものへの取り組みを止めるべきではありません。蓄熱と豊富な再生可能エネルギーを組み合わせれば、拡張性の高い、地球上に豊富にある材料を使って、化石燃料より安価に産業用熱を供給できます。その結果、産業由来の排出量の半分以上を削減できます。

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