昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の採択からほぼ2年が経ちましたが、政府と企業による実施は遅れています。
COP16は、2030年までに自然喪失を食い止め、逆転させるというGBFの目標に向け、実効性ある行動を約束する世界で最も大きな機会です。
企業は、自主的な取り組みや政府に政策改革を求める働きかけを通じて、GBFの目標達成を支援するうえで重要な役割を果たします。
2022年12月、世界は自然危機の規模を認識し、その対処に向けた最初の大きな一歩を踏み出しました。モントリオールで開催された国連生物多様性COP15で、196カ国が昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)を採択しました。この枠組みは、社会のあらゆる部門が共通の目標、すなわち2030年までに自然喪失を食い止め、逆転させることを目指すためのロードマップを定めました。
「自然界のパリの瞬間」と呼ばれたGBFの採択は、転換点となりました。しかし2年が経った今も、実施に向けた進展は遅れており、来週コロンビアで開かれるCOP16の重要性は一段と高まっています。
自然喪失の流れを変える歴史的な機会
実施に焦点を当てるCOPとして、COP16は政策立案者、企業のリーダー、科学者、研究者、市民社会の代表者が協力し、実行に移す段階へ進むための重要な機会となります。
この機会の重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。プラネタリー・ヘルス・チェックによると、大気中の二酸化炭素濃度から土地や水の利用変化に至るまで、9つのプラネタリー・バウンダリーのうち6つがすでに限界を超えており、7つ目も差し迫っています。社会と経済を支える自然界の衰退を食い止められなければ、壊滅的な結果を招きます。自然喪失を放置すれば、リスクとコストが増大し、さらにすでに甚大な近年の危機の影響さえもはるかに上回るでしょう。たとえば、2008年の金融危機や新型コロナウイルス感染症のパンデミックが挙げられます。
これは、昆明・モントリオール生物多様性枠組の実施が容易だという意味ではありません。政府と企業の双方が取り組みを大幅に強化し、これまでの小さいながらも心強い進展を迅速に積み上げるため、新たな形で協力する必要があります。
大胆な変革を可能にする政策
政策面では、政府は意欲的な国家計画を策定し、企業の行動を促す政策や規制を導入するという重要な役割を担っています。しかし、COP15以降、国家生物多様性戦略・行動計画(NBSAP)または国別目標を更新した政府は、現在のところ半数にわずかに届かない44%です。
昆明・モントリオール生物多様性枠組のターゲット15に沿って、一部の国や地域では、自然関連情報の開示義務化に向けた心強い規制が導入されています。たとえば、中国は2026年までに上場企業450社に自然関連情報の開示を義務付ける方針です。
一方で、他の動向が大きな進展を損なっています。環境に有害な補助金(EHS)の世界全体での額は、現在、年間少なくとも2.6兆ドルに上ります。これは世界のGDPの2.5%に相当します。生態系の破壊や種の絶滅を加速させる補助金に、これまで以上の資金を費やしているということです。政策の一貫性を確保し、自然にプラスの経済への明確な転換を実現するには、ターゲット18に示されているように、EHSを迅速かつ効果的に改革する必要があります。
自然関連情報の開示義務化とEHS改革は、20項目の政策提言のうちの2つです。Business for Nature連合は、150を超えるパートナーの意見を取り入れてこれらを策定し、企業の自然保全行動を促進し、後押しする措置を政府に導入してもらうことを目指しています。提言は、次の5つの主要な勧告にまとめられています。これらは230社を超える企業が支持しており、参加企業の合計収益は1.7兆ドルに上ります。

先見性ある企業の行動
企業側でも、健全な地球が事業のレジリエンスの基盤だと理解する先進的な企業による前向きな動きが見られます。ビジネスモデルや事業運営の変革に踏み出す企業は増えており、25社を超える企業がすでに、信頼できる自然戦略を策定し、公開しています。これは「It’s Now for Nature」キャンペーンを通じたものです。GSK、Kering、L’Occitane Group、Natura &Co、Orstedなどの企業は、自然に対する最も重大な影響と依存関係にどう対処するかを明確に示しています。透明性と説明責任の模範を示し、他の企業が自社の戦略策定に着手する自信を後押ししています。
しかし、こうした自主的な取り組みは、まだ一般的とは言えません。また、自然再生活動への企業投資は年間推定350億ドルにとどまり、生態系に今なお直接的な害を及ぼす民間資金5兆ドルと比べると、はるかに小規模です。
つまり、先進的な企業による自主的な行動だけでは不十分であり、実効性ある変化をもたらすには、政府が義務化や規制を行うことが極めて重要です。
自然にプラスの世界に向けて企業リーダーが貢献する方法
自然危機への対処の鍵は、協力と統合にあります。残された時間が限られるなか、企業リーダーには、自然に有利な形で経済のルールを変えるよう政策立案者に働きかけるためにできることが多くあります。
1. 組織の事業運営と投資を変革し、昆明・モントリオール生物多様性枠組の効果的な実施を支援する。そのためには、意思決定のあらゆる側面に自然への配慮を組み込み、事業運営において持続可能な資源利用を優先し、投資を自然にプラスの成果につながるよう整合させる必要があります。TNFDやSBTNなどの組織の指針を活用した、自然戦略ハンドブックやセクター別の自然にプラスの行動に関する報告書などの資料は、重要なツールです。
2. あらゆるレベルの政府に大胆な政策を提唱する。その内容は、次のことです。国際合意の強化を支持し、自然喪失に関する主要な課題に取り組むことから、NBSAPの策定と実施を支援すること、さらに業界団体と協力して、各セクターを後押しする政策を支持することまでが含まれます。
3. COP16に積極的に参加することで、先進的な企業が実効性と意欲のある行動を通じて貢献する用意があると政府に示します。企業リーダーは、二国間会合、イベント、ワークショップを通じて交渉に参加し、すでに実施している取り組みを紹介できます。
4. 協力し、つながることで、同じ志を持つ企業や会議に参加する他のステークホルダー、すなわち都市、先住民族、地域社会、学術界、若者と連携し、自らの行動や戦略を改善します。
私たちは重要な転換点に立っています。COP15で掲げられた意欲的な目標を達成するため、国連生物多様性COP16は、政策立案者と企業リーダーの大胆なリーダーシップと徹底した協力によって、自然にプラスの行動の新たな時代を切り開く機会とならなければなりません。私たちの未来と生計がそれにかかっています。
自然に関して世界経済フォーラムは何をしているのでしょうか?
自然・気候センターは、気候、自然、経済発展の相互関係をリーダーが理解するための支援をしています。また、プラネタリー・バウンダリーの範囲内でレジリエンスと繁栄を支える道筋を探る場を提供しています。
セクターや地域を越えた協力を可能にすることで、センターはパートナーが共通理解を実践的な気候・自然ソリューションへとつなげることを支援しています。






