気候変動による海面上昇は、大規模な沿岸都市に深刻な脅威をもたらしている。
最近のIPCC報告書によると、既存の防潮施設では都市を海から守りきれない。
専門家は緊急の対策を求めているが、すでに手遅れだと考える人もいる。
世界の海面は上昇しており、迅速に保護対策を講じなければ、今世紀末までに世界有数の都市の一部が水没するおそれがある。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今世紀末までに、海面が現在より最大1.1メートル上昇する可能性があるうえ、標高の低い都市では深刻な洪水が頻繁に起こるようになると予測している。
世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2020』は、極地の氷床が予測を上回る速さで融解しているため、海面上昇の影響を受けやすい人々の数は1億9,000万人に上り、従来の推計の3倍になったと警告した。
気候変動に対して、世界経済フォーラムはどのような取り組みをしているのか?
「海面上昇によって、低地から逃れる人々が難民となるケースはますます増えるだろう。実際、防衛・情報機関は、気候変動が全人口を故郷から追い立てるほど深刻な紛争を引き起こすおそれがあると、いまや定期的に警告している」と報告書は付け加えている。
『2019年版報告書』で著者らは、海面上昇への適応策として3つの戦略を示した。水の侵入を防ぐ土木工事、自然を活用した防御策(マングローブ林や塩性湿地の保全など)、そして世帯や企業をより安全な土地へ移転することだ。
2050年気候変動指数は、タイの首都バンコクを、海面上昇に対して世界で最も脆弱な都市に挙げた。2011年には市域の5分の1が水没したと報告されている。この地域は当時、過去最悪のモンスーン洪水に見舞われ、500人以上が死亡したと伝えられた。
洪水リスクの高いほかの都市と同様、バンコクも地盤沈下が進んでいる。異常気象や高潮の頻度が増すとの予測と相まって、2050年までに市域の3分の1が水没する可能性がある。世界銀行の推計によると。
沈みゆく都市
地球の反対側にあるニューオーリンズでも、地盤沈下が進んでいる。低地の沿岸都市が異常気象によって受ける壊滅的な被害は、2005年に甚大な洪水を引き起こしたハリケーン・カトリーナによって、痛ましい形で示された。市域のおよそ半分は、すでに海面より低い。
1895年当時、海面より低かったのは市域のわずか5%だった。時がたつにつれ、土地の排水が改善されたことで土壌が乾燥し、最終的に大規模な地盤沈下につながった。科学者らによると、これをはじめとする要因によって、市内の一部は年間最大40ミリメートル沈下している。
地盤沈下が進むもう一つの沿岸都市がベネチアだ。標高の低い120の島々に築かれ、建物は堆積土に打ち込まれた木杭で支えられている。海面上昇に伴い、同市は年間1ミリメートルの速度で沈下している。
イラクの港湾都市バスラは、かつて淡水の運河があることから「東洋のベネチア」と呼ばれていた。しかし、その運河は標高の低い同市を洪水に弱くしている。特に近年の紛争の影響で、運河がごみで詰まっている。
異常気象
モンスーンによる洪水は、すでにコルカタで頻繁に発生している。同市は、インドの西ベンガル州の州都で、人口は約1,500万人に上る。海面が上昇し、気候変動によって年間降水量が増すなか、コルカタの将来は危うい。市内の一部は、現在でも海抜わずか1.5メートルしかない。
米国のサバンナでは、気候変動の脅威が深刻化していることを示すように、かつては100年に一度だった洪水が、2050年までに毎年起きると予測されている。2つの川に挟まれた同市は、すでに高さ3メートルに達する「キングタイド(大潮)」に沿岸部がさらされる危険を抱えている。
都市を守るために、私たちに何ができるだろうか?
排出量を削減し、海面上昇を引き起こす気温上昇を防ぐとともに、世界各地の多くの都市はすでに、人々と財産を守るための対策を進めている。
ロバート・ムガーが2019年に世界経済フォーラムで説明したように、対策は3つのカテゴリーに分けられる。第一に、防潮堤や高潮防壁などの大規模な土木工事。第二に、マングローブの再生などの環境面からのアプローチ。第三に、都市設計や撤退計画など、人々に焦点を当てたアプローチだ。
例えばニューオーリンズでは、ほかの取り組みとともに、新たな開発事業の立地、建設、設計を管理し、洪水リスクを減らすための水管理戦略に取り組んできた。タンザニアのダルエスサラームも同様の方針を採り、高リスク地域での建設を制限する取り組みを進めた。




