気候変動に伴う気温上昇と激しさを増す異常気象は、気候変動を「21世紀最大の世界的な健康脅威」にしており、この20年間ですでに、さらに数億人が被害を受けていると、医療関係者らは水曜日に警告した。
鋭い批判を込めた報告書を医学誌『ランセット』が発表した。科学者や医療専門家らは、熱波から激しさを増す暴風雨、洪水、火災まで、気候変動の影響が拡大し、医療体制を圧倒する恐れがあると述べた。
「それが本当に夜も眠れないほど心配なことです」と、『ランセット・カウントダウン』のエグゼクティブディレクター、ニック・ワッツ氏は語った。同報告書は、公衆衛生と気候変動の関連を追跡する年次報告書だ。
例えば暴風雨や洪水は、けがを直接引き起こすだけでなく、病院の機能を停止させ、感染症の流行を招き、住まいを失った人々に長引く精神的な問題をもたらすこともあると同氏は述べた。
山火事も同様に、人々を負傷させ、住み慣れた土地から追い立てるうえ、広い地域の大気汚染を大幅に悪化させる。
干ばつにあおられたカリフォルニア州の最近の山火事では、80人以上が死亡しただけでなく、東はマサチューセッツ州にまで大気汚染が広がったと、米環境保護庁の元長官で、現在はハーバード大学公衆衛生大学院に所属するジーナ・マッカーシー氏は述べた。
ワシントン大学のグローバルヘルス教授、クリスティ・エビ氏は、気候変動に関連する複数の健康への影響が、しばしば同時に襲いかかると述べた。「地域社会に、それらが一斉に押し寄せるのを目にします」と同氏は語った。
世界27の組織の医師、学者、政策専門家が作成した『ランセット』の報告書は、気候変動を抑え、増大する課題に備えて世界の医療体制を強化するため、迅速な行動を呼びかけた。
「急速に変化する気候は、人間の暮らしのあらゆる側面に深刻な影響を及ぼす。脆弱な人々を極端な気象にさらし、感染症のパターンを変え、食料安全保障、安全な飲料水、きれいな空気を脅かす」と警告した。
熱波にさらされる人々
報告書によると、昨年、世界では2000年と比べて1億5,700万人多くの人々が熱波にさらされた。
気温上昇により、2017年には労働時間が1,530億時間失われた。2000年から60%増加したこの損失は、建設業や農業などの労働者が作業を中断したために生じ、多くの場合、家計収入を圧迫した。
ワッツ氏によると、インドでは暑さのため、2017年の労働時間が約7%減少した。
報告書は、裕福な国々も暑さの影響を受けていると指摘した。
例えば欧州と東地中海地域は、アフリカや東南アジアよりも脆弱とみられると報告書は述べた。
その主な理由は、特にリスクの高い高齢者が、熱をため込み、周辺地域より気温が高くなることのある都市に多く暮らしているためだと、報告書は述べた。
ワッツ氏によると、例えばイングランドとウェールズでは、今年6月から7月にかけての15日間の熱波で、通常より700人多く死亡した。
米国マサチューセッツ総合病院の救急医で、報告書の執筆者でもあるレニー・サラス氏は、最近、建設現場の仕事を2つ掛け持ちしようとして熱中症で倒れた30歳の男性を治療したと語った。
「どの統計にも、一人ひとりの物語があることを忘れないでください」と同氏は訴えた。こうした医療事例は、「気候変動がもたらす、見えにくいことの多い人間的な代償」だと付け加えた。
飢餓と病気
報告書によると、気候変動に伴う気温上昇で、デング熱など蚊が媒介する病気の潜在的な流行地域が広がり、その他の健康上の脅威も増している。
1950年以降、バルト海地域ではコレラ流行に適した沿岸地域が24%増加した。一方、サハラ以南アフリカの高地では、マラリアを媒介する蚊が生息できる地域が27%拡大した。
サラス氏によると、気温上昇によって、病気を引き起こす一部の微生物が抗生物質への耐性を強めている可能性もある。
また報告書は、気温上昇により、世界のすべての地域で農地の最大収穫量が抑えられ、収穫量が増え続けていた従来の傾向が逆転しつつあると指摘した。ワシントン大学のエビ氏は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇により穀物の栄養素が減少し、十分な量を食べている人でさえ、栄養不良のリスクが高まっていると述べた。
一方、過熱する世界で自分の将来を心配する子どもから、災害による損失に苦しむ家族まで、メンタルヘルスへの脅威も高まっていると同氏は述べた。
クリーンエネルギーへの転換や、徒歩や自転車を利用する人を増やすことなど、気候変動を抑えるために迅速に行動すれば、排出削減に必要な額と同程度の医療費を削減できるとエビ氏は述べた。
「緩和策のほとんどは健康に良く、しかも今すぐ健康に良いのです」と同氏は語った。







