カタールの低炭素都市は、より環境に優しい中東の未来を示せるか

A view of Msheireb Downtown Doha, a new under-construction, district in Doha, Qatar, August 13, 2018.
A greener tomorrow.Image: Thomson Reuters Foundation/Heba Kanso
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ドーハのうだるような夏は、気温が摂氏45度に達することもあり、蒸し暑さで体感温度はさらに高くなる。博物館の運営責任者であるファハド・アル=トゥルキーは、車での移動が多く、主に屋内で過ごす傾向がある。

しかし、彼が働く首都の建設中地区、ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハでは、涼しく過ごすのが容易になりつつある。

「世界最大級の持続可能な都市の一つ」を目指す、76エーカーの再開発地区の開発者たちは、雨水の貯留から、屋外を涼しく歩けるよう日陰をつくる張り出し屋根まで、環境に配慮した設備を整えている。

「外に出てコーヒーを買いに行ったり、レストランへ歩いて行ったりできるのは、これまでと違う体験です」と、30歳のアル=トゥルキーは話した。ドーハの従来型のオフィスタワーの周辺には、「本当に日陰がほとんどありません」と言う。

ムシェイレブにある100棟を超える建物の多く――集合住宅、オフィス、ホテル、ショッピングモール、小学校――には、太陽光パネルや太陽熱温水器が設置され、周囲の歩道に日陰をつくる張り出し屋根も備わっている。

建設に8年を費やし、この春に初めて住民を迎える準備を進めている複合用途地区には、地下の廃棄物収集施設など、目に見えない設備もある。また、市内で計画されている公共交通機関と接続する予定だ。

さらに、雨水やエアコンの結露水を回収して地下タンクに貯めるシステムもある。水はそこで、灌漑やトイレの洗浄水として再利用される。

地区を開発するムシェイレブ・プロパティーズのプロジェクトマネジャー、アリ・サレハ・アル=ヤフェイは、「ムシェイレブでは、持続可能な都市を築き、ここで環境を守り、二酸化炭素排出量を減らす責任を担っています」と語った。

天然ガス資源に恵まれたカタールは、国民1人当たりの二酸化炭素排出量が世界で最も多い。世界が気候変動を抑え、異常気象の激化から海面上昇まで、さまざまな問題を回避しようとする中で、これは課題となっている。

石油産出国が並ぶ湾岸地域では、各国の当局者が、自国も他国と同じように環境を効果的に守れることを示そうとしている。

しかし、その取り組みには多くの課題がある。例えば、多くの国では化石燃料由来の電力や水が非常に安価に供給されているため、消費者が使用量を減らす動機は限られる。

一方、すでに酷暑の地域で気温がさらに上昇していることは、湾岸地域も気候変動の大きな影響を受けることを思い起こさせる。

ムシェイレブの開発者たちは、このプロジェクトが、化石燃料や水の使用を減らすなどして、カタール、そして中東全体が排出量を削減し、気候変動の抑制に貢献する方法を示せることを期待している。

アル=ヤフェイはトムソン・ロイター財団に、「これがこの地域の進むべき道です。気候の温暖化を防ぐため、持続可能性や環境配慮型の建物について考える開発事業が増えています」と語った。

中東で持続可能な都市を推進する取り組み「カルブーン」の創設者で、持続可能性コンサルタントのカリム・エルゲンディは、ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハを「この地域でしばらく見た中では、都市再生の最良の例」と評する。

「ムシェイレブは、都心を立て直そうとする本格的な取り組みです」と彼は話した。

カタールのドーハで建設中の新たな持続可能な地区、ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハの眺め。2018年8月13日。Image: トムソン・ロイター財団/ヘバ・カンソ

中東への影響

総額200億カタール・リヤル(55億ドル)のムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハ事業は、統治する首長の父が設立した教育・研究機関、カタール財団の傘下にあるムシェイレブ・プロパティーズによる事業だ。

このプロジェクトは、カタールの「国家ビジョン2030」計画を実現するための、より広範な取り組みの一環だ。同計画は、エネルギー消費量と国のカーボンフットプリントの削減などを目指している。

2022年のサッカー・ワールドカップを開催するカタールは、大会関連の排出量を減らす方法や、首都以外の都市での対策も検討している。

ドーハの北23キロ(14マイル)に建設中で、ワールドカップの競技場の一つが置かれる予定の新都市ルサイルでは、ライトレールや節水型の灌漑システムが整備されている。

カタール大学の生物・環境科学部門の責任者、ラドワン・ベン・ハマドゥによると、夏の暑さと湿気にうだる国を涼しく保つため、同市は多くの樹木や緑地を備える設計にもなっている。

カタールのワールドカップは、同国の冬季に当たる11月と12月に開催される。しかし大会後も年間を通じて競技場を使えるよう、すべての競技場に冷却技術を導入すると当局者は述べている。

ベン・ハマドゥは、カタールの各都市が排出削減に向けてそれぞれ独自の道筋を必要とすると考えているが、新しい都市はルサイルから教訓を得られると話した。

そこには、「機能的で完成された都市をつくる」ための公園、開放空間、地域住民向け施設の必要性も含まれる。

ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハ事業は、カタールにおける持続可能性の「指針」をいくつか示せると彼は言う。一方で、「それ自体がそのまま複製できる単位というわけではありません」とも述べた。

例えば、建物を涼しく保つための緑化屋根が十分でなく、緑豊かな公園もあまり整備されていないと彼は話した。

さらに彼は、カタールや他の中東諸国で炭素削減につながる環境改善を行っても、それだけでは気温上昇を抑えられないと警告した。

気候変動は地球規模の問題であるため、問題に効果的に対処するには、世界各国の行動が必要だと彼は述べた。

「気候システムは、どこか一国の排出量によって決まるものではありません」と彼は言う。「ムシェイレブによって気候が変わるわけではありません。」

一方、この地域の他の国々も、炭素排出量の削減や、暑い環境でも暮らしやすい都市づくりに向けて、初期段階の取り組みを始めている。

夏には夜間でも気温が摂氏42度(華氏107度)を下回らないことがある、オマーンのうだるように暑い首都マスカットでは、ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハ事業をモデルにした市街地の拡張が計画されている。

ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハを設計した英国企業アライズ・アンド・モリソンは、マスカットのマディナト・アル・イルファン事業も設計している。

この地域でより環境に優しく涼しい住宅をつくることについて、エルゲンディは「誰もがやりたがっています。実際に実現するのは、もっと難しいのです」と語った。

カタールのドーハにある建設中の新地区、ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハの建物の屋上に設置された太陽光パネル。2018年8月13日。Image: トムソン・ロイター財団/ヘバ・カンソ

新たな「暮らしやすさ」

アル=ヤフェイによると、ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハでは、そよ風を地区に通す「風の通り道」となるよう道路が設計され、背の高い建物は他の建物に最も効果的に日陰をつくる位置に意図的に配置されている。

歩きやすく快適に移動できるよう設計されたコンパクトな地区は、人々が車から降りて移動することも目指している。

地区で最初の集合住宅がこの春に入居開始となるのを前に、ベン・ハマドゥは、この地区が暮らしやすい地域のあるべき姿について、人々の考えを変える助けになると考えている。

「特にここカタールやこの地域の若者の意識を高め、資源をどうすれば節約できるかについて知ってもらううえで、ムシェイレブはとても良い実例になるでしょう」と彼は語った。

アル=トゥルキーは、カタール郊外に建てた自宅に、勤務先の環境配慮型地区で目にしたアイデアをすでにいくつか取り入れている。

例えば、日差しの差し込みを抑えるために窓を壁面より奥まらせ、窓に着色フィルムを施している。

「こうした経験を取り入れて、自宅でも実践してみたいと思うかもしれないと、自分に気づかせ、挑戦を促すものです」と彼は話した。

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