人間活動はかつてない速さで生物多様性を破壊している。
絶滅の危機にある種のほぼ80%が経済活動の影響を受けている。
COP15サミットでは、自然保護に関する新たな世界協定に向けた取り組みが始まった。
自然界を守り、GDPを数兆ドル押し上げる5つの重要な変革がある。
都市に住んでいても、農村部に住んでいても、海辺に住んでいても、生物多様性の減少に気づいている可能性が高い。街の餌台を訪れる鳥が減った、周囲の野原や森林で大型哺乳類を見かけることが少なくなった、あるいは釣りに出かけても釣果が減ってきた、と感じているかもしれない。
私たちが目の当たりにしているのは、生態系全体が依存する生物多様性の、壊滅的な結果を招きかねない損失だ。
自然保護に向けた世界の取り組み
自然破壊を食い止める取り組みが続くなか、2022年の国連生物多様性会議では、カナダのモントリオールに各国の代表が集まり、動物、植物、昆虫の急速な減少を食い止めることに焦点が当てられた。COP15としても知られるこの会議では、生物多様性を守る新たな世界協定に向けた取り組みが進められた。
厳しい口調の開会演説で、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は各国代表に、「人類は大量絶滅をもたらす兵器となった」と語った。グテーレス氏は会議を「この破壊の乱痴気騒ぎを止める機会」と表現し、参加者にさらなる圧力をかけた。
グテーレス氏が言及した破壊は地球規模で広がり、大規模に進行している。国連の「世界土地概況」評価によると、現在、100万種を超える種が絶滅の危機にさらされており、その消失速度は1,000万年間で見られなかった水準に達している。地球の陸地表面の最大40%が劣化していると考えられている。
国際自然保護連合の調査では、食料生産、インフラ、エネルギー、採掘に関わる人間活動が、絶滅の危機にある種への影響の79%を占めることが分かった。
自然にプラスとなる経済の構築
こうしたシステムを根本的に変革して初めて、破壊的な人間活動から自然にプラスとなる経済へと移行できる。世界経済フォーラムの新しい自然経済レポート IIは、自然の損失を食い止め、瀬戸際から引き戻すためのさまざまな移行策を示している。こうした変化がなければ、世界は生物多様性の取り返しのつかない破壊に直面し、経済と地球上のあらゆる生命に広範な影響が及ぶ。
この報告書は、自然を破壊することで生み出しているリスクについて厳しい警告を発し、「企業が自然とその恵みに依存しているため、経済価値の創出額44兆ドル、すなわち世界のGDP総額の半分以上が、潜在的なリスクにさらされている」と述べている。
生物多様性の損失は、今後10年間に人類が直面する最も深刻な脅威の第3位に、世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2022』でランク付けされた。
世界経済における5つの重要な移行は、生物多様性の損失を大幅に抑える可能性があるとともに、数兆ドル規模の新たな経済機会をもたらし、1億人を超える雇用を生み出す可能性がある。
その移行策は次のとおり。
1. コンパクトな建築環境
高密度な都市開発によって、農業や自然のための土地を確保できる。また、野生生物の生息地や動植物を破壊する都市のスプロール化を抑えられる。既存の都市や居住地では、戦略的な高密度化を検討すべきだ。開発を免れた地域の生物多様性を守るため、保全管理プロジェクトを立ち上げる必要がある。この移行によって、2030年までに300万人の雇用を生み出し、6,650億ドルの機会が創出される。
2. 自然にプラスとなる建築環境
こうした建築環境では、自然と空間を共有する。人間中心の考え方を抑え、生物多様性をプロジェクト設計の中核に据える。インフラの立地は自然破壊を回避または最小限に抑えるよう選定され、すべての建物でエネルギーと資源が効率的に利用される。開発には、都市の野生生物の生息地をつなぐ自然に優しい空間やエコブリッジを設けなければならない。こうした建築環境には9,350億ドルの機会があり、2030年までに3,800万人の雇用を創出できる可能性がある。
3. 地球と両立する都市ユーティリティ
生物多様性の損失を食い止めるには、都市環境における大気、水、固形廃棄物の汚染を効果的に管理するユーティリティが必要だ。自然に恩恵をもたらすだけでなく、すべての人がきれいな空気と水を利用できるようになる。スマートセンサーなどの第4次産業革命の技術は、都市ユーティリティを変革し、地球と両立するものにできる。これらの整備により、6,700億ドルのビジネス機会が生まれ、2030年までに4,200万人の雇用を創出できる。
4. インフラとしての自然
この変革では、自然の生態系を市街地に取り入れる。開発によって氾濫原、湿地、森林を破壊するのではなく、新たな建築環境に不可欠な要素として組み込む。この開発アプローチは、きれいな空気や自然による水の浄化を実現し、極端な気候事象によるリスクを減らすのにも役立つ。自然をインフラとして活用することで、1,600億ドルのビジネス機会が生まれ、2030年までに400万人の雇用を創出できる可能性がある。
5. 自然にプラスとなる接続インフラ
「接続インフラ」には道路、鉄道、パイプライン、港湾が含まれる。この分野の移行とは、生物多様性への影響を減らす計画づくりへの転換を意味し、出発地と目的地の間の所要時間や距離について妥協を受け入れる姿勢も求められる。野生生物の回廊を整備し、輸送に再生可能エネルギーを導入することは、自然にプラスとなる接続インフラの重要な要素だ。この分野では、2030年までに2,900万人の新たな雇用を生み出す機会とともに、最大5,850億ドルのビジネス機会が見込まれる。
自然と和解する時
COP15生物多様性サミットの成果は、人類と自然界との関係の方向性を形作る。
アントニオ・グテーレス氏は各国代表に対し、意見の相違を乗り越え、自然保護について合意するよう促し、会議でこう述べた。「世界が広範な生物多様性の枠組みを採択し、自然との真の平和協定を結び、すべての人にとって緑豊かで健全な未来を実現する時だ」





