自然を活用した気候変動対策(NCS)は、適切に実施すれば、技術的な解決策より低コストで企業の排出量の相殺と削減を支援し、大きな便益をもたらします。
企業は、気候と自然に関する統合的な企業戦略を通じて正当な懸念に対応できます。その戦略では、生態学的に適切かつ社会的に責任ある方法でNCSを実施します。
これまでに25社が合計で35億本を超える樹木について、55か国以上で保全、再生、育成することを約束しました。これは、最初の1t.orgの誓約が1か月前に発表されてから40%の増加です。
今世紀半ばまでに世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにするのは、容易な課題ではありません。COP26は、すべての産業で急速な脱炭素化が必要であり、2030年までに温室効果ガスの絶対排出量を少なくとも50%削減しなければならないことを改めて示しています。これには、現在、世界の排出量の約4分の1を占める森林破壊と土地利用への対処も含まれます。自然を活用した気候変動対策(NCS)の支援があって初めて、この世界的な実質ゼロ目標は達成可能になります。これこそが、実質ゼロにおける「実質」の部分です。
NCSは、最大で正味排出削減量の3分の1を実現できる可能性があり、1.5℃を超える温暖化を防ぐ軌道に乗るために、2030年までに必要とされる削減量を支えます。NCSは技術的な解決策より低コストです。地球が人新世に入り、第6の大量絶滅が差し迫るなか、自然を活用した気候変動対策は、地球上の生命の均衡を保ち、気候と自然の双方を支える重要な役割を果たします。
NCSは、2030年までに必要な正味排出削減量の最大3分の1を実現できる可能性がある

気候変動への取り組みにおける自然の役割は、中心的な議題となります。これは国連気候変動会議(UNFCCC COP26)でのことで、同会議は国連生物多様性会議(CBD COP15)のハイレベル・セグメントに続いて開催されます。COP15では、一部の国が気候変動対策資金の一部を生物多様性の支援に充てることを約束しました。しかし、政府の約束だけでは不十分です。
企業や地方政府も、自然への投資は気候変動対策として有効だと認識しています。これには、森林破壊による排出を回避・削減する、健全な森林生態系の保全に加え、大気中にすでに存在する温室効果ガスを除去・吸収する森林再生の誓約も含まれます。自然は、生態系と絶滅危惧種を含む生物多様性の保護、劣化した土地の再生、生計の支援など、他にも貴重な便益とレジリエンスをもたらします。これらは、安定し繁栄する持続可能な経済の基盤となります。
2020年と2021年の両年に、世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書」は、生物多様性の喪失を、発生可能性と影響度の両面で上位5位に入るリスクの一つに挙げています。NCSへの投資は、気候と自然の双方に関わるリスクに対処します。
発生可能性で見た世界の主要リスク
影響度で見た世界の主要リスク
よくある懸念への対応
一部の関係者は、気候変動の緩和や地域の環境と住民のニーズを顧みない植樹関連の取り組みに、正当な懸念を抱いています。どのような懸念があり、どうすれば解消できるのでしょうか。
懸念その1:排出削減・回避に向けた信頼できる取り組みをせず、企業がオフセットに投資する
実質ゼロ目標を掲げず、企業のサプライチェーンで排出を迅速に回避・削減することもなく、樹木の保全、再生、育成に投資するのは、グリーンウォッシュです。一方、企業が野心的な気候目標を掲げる場合、回避できない現在および将来の残余排出を相殺するのは適切です。樹木の成長には時間がかかるため、今保全に投資することで将来の排出を相殺できます。企業は試験的なプログラムから貴重な教訓を得て、今後のオフセット戦略に生かすことができます。
懸念その2:科学に基づく目標ではオフセットが認められない
新たな科学に基づく目標イニシアチブのネットゼロ基準は、あらゆる分野の企業に対し、2030年までに排出量を半減させること(森林、土地利用、農業による排出を含む)と、土地と自然の保護、再生、持続可能な管理にポートフォリオ方式で投資することの両方が必要だと助言しています。自然を活用した気候変動対策が、事業活動による排出削減の妨げになってはなりません。排出削減に「代わるもの」ではなく、「それに加えて」行うものです。実質ゼロ目標における「実質」を達成するうえで不可欠です。
懸念その3:企業は樹木への投資成果をあまり示さない
信頼できる植樹投資戦略には、モニタリングが不可欠です。NCS投資による炭素面および社会・生態学的な便益を主張するには、企業は長期的なモニタリング、報告、検証の仕組みを導入する必要があります。地理空間データ、リモートセンシング、現地でのデータ収集ツールや手法を活用することで、投資による追加的な効果や、樹木の生存と成長を長期にわたり、より確かな方法で把握し、炭素その他の測定値を精緻化できます。1t.orgの信頼と透明性を支える基盤インフラは、世界的なパートナーシップを通じて、国連生態系回復の10年のもとで整備が進められています。
懸念その4:炭素だけを目的として自然に基づく解決策に投資する
炭素排出の回収だけを目的に無責任に植えられた樹木は、生存率が低くなったり、地域の生態系に侵略的外来種を持ち込むリスクを生んだりする一方、地域社会にもたらす長期的な便益がほとんどない場合があります。単一樹種の植林地は、その顕著な例です。1t.org企業アライアンスのメンバーは、地域の知識と科学的根拠に基づき、森林と地域社会のニーズに応える、生態学的・社会的に責任ある投資を約束しています。こうした場は、企業が学び合い、知見を共有する機会となり、誤りを犯す可能性を減らしながら、将来の戦略づくりに役立つ情報を提供します。
企業による森林保全・再生投資の拡大
持続可能な開発インパクト・サミットで企業による世界規模の誓約が始まってからわずか1か月で、1t.orgへの誓約総数は40%以上増加し、25社を超える企業が、55か国以上で35億本を超える樹木を保全、再生、育成することを約束しました。
企業は、NCS投資アクセラレーターを通じてNCSへの誓約を集約し、2025年までに質の高いNCSを10億トン分確保する企業需要の高まりを示しています。これには、方向性の一致するパートナーの特定、NCSへの投資、確実に効果をもたらすための取り組みが含まれます。
一方、1t.orgに誓約した企業であるAmazon、Nestlé、Salesforce、Unileverなどは、LEAF連合の創設メンバーです。同連合は、森林保護を実施する熱帯林の国々への前例のない資金支援を促し、供給側と需要側の双方で最高水準の誠実さを備えた持続可能な投資を通じて、環境に配慮したレジリエントな成長に貢献します。
ムーブメントに参加する
COP26では、Bayer、Ericsson、EY、Krystal、Pottery Barnが 、樹木の保全、再生、育成に取り組む企業の増加するリストに名を連ねています。1t.org米国支部は、Droneseed、King County、Chesapeake Bay Foundation、Blue Forest Conservation、Viridis Terra、State of Hawaii、Washington Department of Natural Resources、Green Assets、Para la Naturaleza、Caribbean Philanthropic Alliance、State of Marylandによる新たな誓約を発表します。
1.5℃目標の達成には、一本一本の樹木、一つ一つの行動、そしてすべての企業が重要です。企業には、全社的な排出削減目標を設定したうえで、1t.orgに参加し、自社の気候戦略とその先を支えるNCSへの投資方法を学ぶことが呼びかけられています。
1.5℃という世界目標は野心的ですが、達成可能です。その実現には、あなたの力が必要です。
今すぐムーブメントに参加しましょう。






