テクノロジーは、私たちの暮らし方、学び方、働き方を変えています。誰もが繁栄できるよう、リーダーは何をすべきでしょうか?

An employee controls the arms of a manned biped walking robot "METHOD-2" during a demonstration in Gunpo, South Korea, December 27, 2016.
How do we use technology in ways that will create not just prosperity, but shared prosperity?Image: REUTERS/Kim Hong-Ji
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2004年3月、モハーベ砂漠で、失敗続きの喜劇のような出来事が繰り広げられた。DARPAグランド・チャレンジでは、240kmのコースを完走できる自動運転車に100万ドルの賞金が用意されていた。最も優れた車でさえ、12kmも進まないうちにヘアピンカーブで道路から外れ、土手にはまってしまった。参加した15台のうち1台は、スタートラインを離れる前に自らひっくり返ってしまった。

わずか10年余りで、キーストン・コップスのようなドタバタ劇から、多くの都市の道路を安全に走る自動運転車へと進歩したとは、驚くべきことだ。その道のりを支えた大きな要因の一つは、明確な目標を掲げ、賞金を懸けるというシンプルな仕組みの驚くべき力である。MITチームの大学院生や教授たちがDARPAグランド・チャレンジに夢中になり、食事も睡眠も忘れていたことを覚えている。人は目標があれば、驚くほど熱心に取り組み、成果を上げられる。

今日、自動運転車をめぐる主な議論は、技術的に実現できるかどうかではなく、社会への影響と産業の変革についてだ。職を失うタクシー運転手やトラック運転手にとって、別の生計手段を見つけるのはどれほど難しいだろうか。車を、所有していても使うのは時間のわずか5%にすぎないものと考えるのをやめ、必要なときに利用するサービスと捉えるようになれば、業界はどう変わるだろうか。事故や汚染、渋滞をどれだけ減らせるだろうか。

あらゆる種類の自動化について、同じ議論が交わされている。楽観的な人たちはこう言う。「エリック、心配はいらない。これまでずっとそうだったように、テクノロジーは誰にとっても暮らしを良くしてくれる」。悲観的な人たちはこう言う。「エリック、抵抗しても仕方がない。次の機械の能力の波に人間はついていけない。大量失業と極端な不平等が広がる世界に向かっている」。

私はどちらの見方にも賛同しない。未来は機械によってあらかじめ決められているのではない。人間がつくるのだ。テクノロジーは道具であり、さまざまな使い方ができる。繁栄だけでなく、その恩恵を分かち合える繁栄を実現するには、テクノロジーをどう活用すればよいのか。低・中所得者層にとって望ましい選択をするには、どうすればよいのか。

新たなグランド・チャレンジ

答えの一つはこうだ。目標を定め、賞金100万ドルを用意しよう。新たなグランド・チャレンジを始めよう。

アンディ・マカフィーと私が共同で設立したMITデジタル経済イニシアチブでは、インクルーシブ・イノベーション・チャレンジというアイデアが生まれた。エンジニアに画期的なテクノロジーを生み出す意欲を持たせる賞は、すでに数多くある。それは素晴らしいことだ。だが、経営幹部や社会科学者に、こうした素晴らしいテクノロジーをより良く活用する方法を考えてもらうための賞を設けてはどうだろうか。

民間セクターのリーダーシップによって、少数の人だけでなく多くの人が恩恵を受けられるよう、テクノロジーの活用を後押しできると考える4つの分野を定めた。

1. 将来の仕事の機会に人々がアクセスし、そこで活躍できるようにするにはどうすればよいか。

2. 年齢、居住地、教育、能力にかかわらず、より多くの人々をインターネットやテクノロジーにつなぐにはどうすればよいか。

3. より多くの人々の経済的な安定を確保するにはどうすればよいか。より多くの人々が金融サービスの恩恵を受けられるようにするには、どうすればよいか。

4. 生活の質と生活水準を十分に確保できるよう、労働者が十分な所得を得て、所得を増やせるようにするにはどうすればよいか。苦境にある産業を再構想し、新たな雇用機会を生み出すには、どうすればよいか。

エリック・シュミット氏とウェンディ・シュミット氏、ブラッド・フェルド氏、エイミー・バチェラー氏、ジョー・イースティン氏などの個人、ジョイス財団とロックフェラー財団、NASDAQ財団、アクセンチュア・デジタルなどから賞金を集めた。専門家による審査員団を招き、250件を超える応募が寄せられた。応募内容はどれも非常に優れていた。数か月前、初年度の受賞者を発表した。

受賞者には、マサチューセッツ州ローウェルに製造業の雇用を呼び戻している99Degrees Customという企業が含まれていた。MITのキャンパスからわずか約30マイルの場所だが、まったく異なる町だ。繊維産業を基盤に発展したこの町では、自動化や海外移転によって労働者階級が大きな打撃を受けている。

かつての仕事は戻ってこない。しかし、99Degrees Customの従業員が高度にカスタマイズされた繊維製品の製造に使っているような最先端技術を活用し、新たな製造業の雇用を生み出せる。こうした仕事は、かつての工場の仕事よりも魅力的で、賃金も高く、他の職場でも生かせる高度な製造スキルを労働者に身につけさせる。

もう一つの受賞者はIora Healthだった。同社はヘルスコーチを雇用し、患者と組み合わせて、医師が勧めた食事療法や運動習慣を続ける手助けをしたり、薬を飲むよう声をかけたりする。こうした方法は治療成果を高め、費用を15~20%削減できると研究で示されている。その差が、患者の回復につながることもあれば、再入院の費用がかかるかどうかを分けることもある。

テクノロジーの恩恵を広げる

こうしたコーチは医療訓練を受けたスタッフではなく、所得水準も低い。それでも、ロボットには当面、あるいは決して身につかないかもしれない人間ならではのスキル、つまり共感力、動機づける力、感情知能を生かし、確かな価値を生み出している。

もちろん、テクノロジーの恩恵を広げるには、教育、インフラ、規制、税制、社会保障などの分野で政府のリーダーシップも必要だ。同時に、個人も自らのスキルを磨く責任を担う必要がある。民間セクターのリーダーシップが、テクノロジーによる社会の変革をどのように形づくれるかを示す好例がここにある。

変化は一夜にして起こるものではない。第1次産業革命では、蒸気機関の発明から社会の変化が現れるまでに数十年を要した。電気が広く使えるようになった後も、産業界がその恩恵を生かすために工場やビジネスモデル、組織構造を全面的に見直すまでには、さらに約30年かかった。

同じように、自動運転車から医療、製造業、金融サービスまで、今日登場しつつある多くのテクノロジーが社会に及ぼす影響が明らかになるには、数十年かかるだろう。多くの産業で、私たちは今、物事の進め方を見直す転換点にいる。今下す選択は、文字どおり未来を形づくる。

この記事を読んでいる皆さんに、テクノロジーによってどのような世界をつくりたいか考えてほしい。思い描いた未来は自動的には実現しないと認識してほしい。あなたに何ができるだろうか。多くの人が恩恵を分かち合える繁栄をつくるため、私たちと一緒に取り組んでみてはどうだろう。次回のインクルーシブ・イノベーション・チャレンジに参加してもよい。あるいは、自分自身のグランド・チャレンジを定めてもよい。

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