人権の保護や保障に今も苦慮している国で事業を営む企業と聞くと、労働法の不備、最低賃金の欠如、環境規制の弱さを喜んで利用する不誠実な企業の姿を思い浮かべがちです。しかし、多くの場所で実情は大きく異なります。民間部門自体が脆弱な人権保護による悪影響を受けているだけでなく、国レベルに存在する弱点を補うため、企業自身が率先して主導的な役割を担わざるを得ないのです。
企業批判が少なからずあるなか、今月初めに開かれた第3回国連ビジネスと人権フォーラムでは、企業はひるむことなく前に出て、 ビジネスと人権に関する国連指導原則の実施において主導的な役割を果たすという決意を改めて表明しました。人権の保障と保護は、力強く広く行き渡る経済成長に不可欠です。従業員とその家族の健康状態の悪化、手頃な価格の住宅の選択肢の少なさ、教育や技能訓練の不足は、人権上の問題であるだけでなく、企業が潜在力を十分に発揮して事業を行う妨げにもなります。
今年初め、私たちはパプアニューギニアの80社を超える企業を対象に調査と聞き取りを行いました。 これは、犯罪と暴力の社会経済的コストを調べる研究の一環でした。 パプアニューギニアは、犯罪と暴力の発生率が世界で最も高い国の一つであり、特に女性に対する暴力が蔓延しています。企業は、これが事業に及ぼす影響について明確に語り、生産性の損失、安全上の懸念による市場アクセスの欠如、サプライチェーン全体で負担され転嫁される高額な安全対策費などを挙げました。
パプアニューギニアの企業は政府と対話し、政策や文化の変革を支援しようとしてきました。同時に、次のような方法で従業員を人権保障の不備から守るため、主導的な役割を担ってきました。
犯罪や暴力の被害に遭うリスクを減らすため、地元採用の従業員は自宅と職場の往復に送迎車を利用しています。多くの企業が、自宅から職場への送迎専用の社内バス車両を運行しています。
女性従業員を特有のリスクから守るための対策が講じられています。企業は、女性従業員にとって職場への行き帰りの安全確保が最重要であり、国内で極めて深刻なレベルにある家庭内暴力によって、女性の安全と福祉も危険にさらされていると指摘しました。男女の従業員は、全般的な健康とウェルビーイング、家庭内暴力、性と生殖に関する健康について研修を受けています。
従業員やその家族のために、敷地内に健康・トラウマ治療センターを設けていると報告した企業もあり、事例の大半は暴行や家庭内暴力に関するものでした。多くの企業は、女性従業員へのハラスメントを一切容認しない方針を設け、暴力行為に関与した従業員を解雇していると述べました。
一部の企業は、従業員向けの敷地内宿舎や寮を提供し、場合によってはその家族も受け入れています。こうした施設にも固有の社会的問題はありますが、手頃な価格の住宅がほとんどない地域で従業員を支援するため、企業は施設に投資しています。
従業員向けの貯蓄制度や原価での融資の提供は有益です。パプアニューギニアの一般の人々にとって、融資やその他の金融サービスを利用できないか、利用できても非常に高額だからです。多くの人が、家族の病気や死亡、追加の学費など、予期せぬ出費を賄うために借金をする必要があります。
教育制度の弱点により、機能的な読み書き能力や計算能力、技能を備えた従業員を十分な数確保することが難しいため、多くの企業は従業員への技能訓練や継続教育の提供を不可欠と考えています。
企業が労働者の基本的人権の保障と保護を支援するために行っているこうした取り組みなどは、単なる「収益上の」判断ではありませんが、従業員の生産性向上や人員の安定につながる効果もあります。
もちろん、これにはコストが伴います。調査に参加した企業は、犯罪や暴力の影響に対処するために多額の費用がかかり、さらなる投資や事業拡大が妨げられていると述べました。聞き取りを行った企業の過半数は、パプアニューギニアの暴力や治安・秩序の状況が、新たな商品やサービスの提供や新たな地域への進出を妨げており、追加コストの少なくとも一部を消費者に転嫁せざるを得なかったと述べました。
結局のところ、人権の保障や保護が欠如したり損なわれたりすると、その影響は広範囲に及び、企業を含むすべての人が悪影響を受けます。パプアニューギニアでは、企業が主導的な役割を果たし、革新的な解決策を見つけ、欠けている部分を補っていることが分かりました。国や世界の人権問題の解決策を探る際には、この点を考慮すべきです。
この 投稿は、世界銀行「東アジア・太平洋地域の台頭」ブログに初めて掲載されました。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:Carolyn Blacklockは、2010年からIFCのパプアニューギニア駐在代表を務めています。Sadaf Lakhaniは、世界銀行の社会的結束・暴力防止チームのコンサルタントです。
画像:パプアニューギニアの首都ポートモレスビーの通りで、フェンス沿いを歩く女性たち。REUTERS/David Gray

