スマートフォンの普及により、勤務時間外でも上司からいつでも連絡を受ける状態になっています。
その結果、ストレスや燃え尽き症候群につながり、仕事と私生活のバランスが損なわれることがあります。
「つながらない権利」があれば、労働者は勤務時間外に仕事から離れる権利を得られます。
オーストラリアの労働者には、退勤後に職場との連絡を断つ権利が認められる見通しです。
これにより、「雇用主からの不合理な要求であれば、勤務時間外の仕事の電話やメールを無視できるよう労働者を後押しする」と、この改革を推進してきた緑の党のバーバラ・ポコック上院議員は述べています。。
先週、上院委員会は公正労働法の「抜け穴を塞ぐ」改正案を審査し、職場で連絡や対応可能な時間について明確な期待を定めるため、「つながらない権利」の導入を勧告しました。水曜日には、アルバニージー政権がこの改正案を支持すると表明しました。
なぜ「つながらない権利」が必要なのか
昨年、仕事とケアに関する上院特別委員会は「対応可能時間の際限ない拡大」に注意を促しました。従業員に勤務時間外の仕事を求める傾向が強まっているというものです。
スマートフォンによって、上司はいつでも労働者に連絡しやすくなりました。新型コロナウイルスのパンデミック中にリモートワークへ移行したことで、仕事と私生活の境界はさらに崩れていきました。
「未来の仕事センター」の2022年の報告書によると、調査対象となった労働者の71%が、過重労働や上司からの圧力を理由に、予定された勤務時間外にも頻繁に働いていました。
その結果、調査対象者の約3分の1は疲労、ストレス、不安の増加を経験し、4分の1を超える人は人間関係や私生活に支障が生じ、約5分の1は仕事への意欲や満足度が低下しました。
議会の調査では、予定された勤務時間外に働くことが、心身の健康、生産性、離職率に及ぼす悪影響が指摘されています。
対応可能時間の際限ない拡大は、多額の無給残業を招いており、それは「労働者から、働いた分に見合う公正な賃金を得る機会を奪う」ものです。
特定の労働者には、影響がとりわけ深刻です。不安定な雇用契約で働く人は、対応可能時間の拡大に抵抗する力がありません。無給の介護責任を負う人は、仕事と生活の両立がさらに難しくなる可能性があります。
「勤務表の公正さ」
「つながらない権利」は、こうした課題への解決策となります。仕事とケアに関する上院特別委員会は、この権利によって労働者に「勤務表の公正さ」をもたらし、勤務時間の見通しをより確かなものにできるとしました。
ヨーロッパ、アジア、北米、南米の多くの国では、雇用主が勤務時間外に労働者へ連絡することを制限する法律や規則がすでに設けられています。
少なくとも56件の企業協定が現在オーストラリアで施行されており、「つながらない権利」を定めています。教員や警察官、さまざまな銀行・金融機関を対象とする協定も含まれます。
産業関係担当大臣のトニー・バーク氏は、「つながらない権利」に関する法案では、勤務時間外に従業員へ連絡する「合理的な理由」が雇用主に認められると示唆しました。シフトに入れるか従業員に電話で尋ねることなどが該当する可能性があります。
「つながらない権利」の条項をすでに含む企業協定を参考にすれば、公正労働委員会が、勤務時間外のどのような連絡が「合理的」とみなされるかを判断するよう求められるでしょう。委員会が雇用法のほかの分野で何が「合理的」かを判断してきた長い伝統を踏まえれば、この方法は妥当と思われます。
雇用主が「不合理」に、通常の勤務時間外の無給労働を従業員に期待した場合、委員会には、勤務時間外に従業員へ連絡することを防ぐ「停止命令」を出し、場合によっては罰金を科す権限が与えられる可能性があると、トニー・バーク氏は述べています。
教員や警察官を代表する組合などは、「つながらない権利」を支持しています。オーストラリア警察連盟によると、
警察官はトラウマを目の当たりにし、被害者の家族や同僚のトラウマにも向き合い、捜査や裁判への出廷、メディア対応もしなければなりません。それでも家に帰れば、家族と向き合う必要があります […] 「つながらない権利」があれば、警察官は少しだけ息をつく余裕を得られます。
雇用法の専門家や人事の専門家も、対応可能時間の拡大が労働者のウェルビーイングに及ぼす悪影響を踏まえ、この権利を設けるべきだと強く考えています。
雇用主団体の支持はそれほど強くありません。オーストラリア商工会議所(ACCI)は、最近の上院調査で「つながらない権利」は「従業員を含め、利益より害のほうが大きい、強引な手段」になると述べました。勤務時間外の連絡が認められなくなれば、通常の勤務時間内に柔軟な働き方を求める従業員の要望に、雇用主が応じにくくなると主張しています。
ACCIの最高経営責任者、アンドリュー・マッケラー氏によると、「つながらない権利」は「オーストラリアがバナナ共和国になるための最後の一歩」となるとのことです。
しかし、スマートフォンが登場する前から、労働者には事実上「つながらない権利」があったことを忘れてはなりません。テクノロジーによって、かつては明確だった仕事と家庭の境界が損なわれたいま、こうした保護を明文化する必要があります。
仕事のあり方や雇用主の慣行が変化するなか、雇用規制もそれに応じて見直すことが不可欠です。雇用主が労働者の自由時間に踏み込むことから労働者を守る「つながらない権利」は、必要な対応です。


