優秀な社員をつなぎとめるのは難しいものですが、本来そうである必要はありません。企業が犯す過ちの大半は、簡単に避けられます。過ちを犯すと、最も選択肢の多い優秀な社員から真っ先に去っていきます。
優秀な社員の意欲を保てなければ、彼らをつなぎとめることはできません。これは常識のはずですが、十分に浸透していません。CEBの調査によると、スター社員の3分の1が雇用主に対して意欲を失い、すでに新しい仕事を探しています。
優秀な社員は、辞めるときに一度に意欲を失うわけではありません。むしろ、仕事への関心が徐々に薄れていきます。この現象をキャリアの大半をかけて研究してきたマイケル・キブラーは、これをブラウンアウトと呼んでいます。消えゆく星のように、スター社員は仕事への情熱を少しずつ失っていきます。
「ブラウンアウトは燃え尽き症候群とは異なり、影響を受けた社員が明らかな危機に陥っているわけではありません」とキブラーは述べています。「膨大な時間を働き、チームに貢献しながら仕事をこなし、会議では適切な発言をしているため、順調に見えます。しかし、本人は絶え間ない重圧に静かにさらされており、その結果として意欲を失っていくのです。」
ブラウンアウトを防ぎ、優秀な人材をつなぎとめるには、企業や管理職は、意欲が徐々に薄れる原因となる自らの行動を理解しなければなりません。以下は特に問題の大きい慣行です。優秀な社員をつなぎとめるには、これらをなくす必要があります。
愚かな規則をたくさん作る。企業に規則が必要なのは当然ですが、秩序を作るために近視眼的で安易な規則を設ける必要はありません。過剰に厳しい出勤規定であれ、社員のマイレージを取り上げることであれ、不要な規則が二つ三つあるだけで、人々をうんざりさせかねません。優秀な社員が「ビッグブラザー」に監視されていると感じれば、別の職場を探すでしょう。
誰もが平等に扱われる。このやり方は学校の子どもには通用するかもしれませんが、職場は違うはずです。誰もが平等に扱われると、どれほど高い成果を上げても(一般に、優秀な人材はよく働きます)、ただ出勤して時間を過ごすだけの無能な人と同じ扱いを受けるのだと、トップパフォーマーに伝えることになります。
成果の低い社員を容認する。ジャズバンドは最も下手な奏者の実力で決まると言われます。メンバーの中にどれほど優れた人がいても、誰もが最も下手な奏者の音を耳にします。企業も同じです。弱点となる社員を何の責任も問わずに放置すれば、周囲の足を引っ張ります。とりわけ、優秀な社員への影響は大きくなります。
成果を認めない。特に、内発的動機づけの強いトップパフォーマーに対しては、ねぎらいの言葉が持つ力を過小評価しがちです。誰もが称賛を喜びますが、懸命に働き、全力を尽くす人はなおさらです。個人の成果に報いることは、きちんと目を向けていると伝えることになります。管理職は社員と話し、何が喜ばれるのか(昇給を望む人もいれば、公の場での評価を望む人もいます)を把握し、よい仕事に報いる必要があります。適切に行えば、トップパフォーマーにはこうした機会が何度も訪れるでしょう。
社員を大切にしない。仕事を辞める人の半数以上は、上司との関係が理由です。賢明な企業は、管理職がプロとしての姿勢と人間らしさのバランスを取れるようにしています。そうした上司は社員の成功を祝い、つらい時期にある人に寄り添い、ときには耳の痛いことを言いながら成長を促します。社員を心から大切にしない上司のもとでは、離職率は常に高くなります。個人的に関わろうとせず、成果以外には関心のない人のもとで、1日8時間以上働き続けるのは無理です。
全体像を社員に示さない。社員に仕事を割り当てて次に進むだけなら効率的に思えるかもしれません。しかし、全体像を示さないことは、スター社員にとって受け入れがたいことです。スター社員は仕事を心から大切にしているため、より大きな負担を担います。だからこそ、自分の仕事に目的が必要です。目的が分からなければ、疎外感を覚え、方向を見失います。目的を与えられなければ、別の場所に見つけるでしょう。
情熱を追求させない。Googleでは、社員に勤務時間の少なくとも20%を「Googleにとって最も役立つと考えること」に使うよう義務づけています。こうした情熱を注ぐプロジェクトは、GmailやAdSenseなど、Googleを代表する製品に大きく貢献していますが、最大の効果は、意欲の高いGoogle社員を生み出すことにあります。才能ある社員は情熱を持っています。その情熱を追求する機会を与えれば、生産性と仕事への満足度が高まります。しかし、多くの管理職は社員を狭い枠の中で働かせようとします。社員が視野を広げ、情熱を追求すれば生産性が下がると恐れているのです。その懸念に根拠はありません。研究によると、仕事で情熱を追求できる人はフローと呼ばれる高揚した精神状態を経験し、そのときの生産性は通常の5倍になります。
仕事を楽しいものにしない。社員が仕事を楽しめていないなら、やり方を間違えています。仕事が楽しくなければ、人は全力を尽くしません。また、楽しさはブラウンアウトを防ぐ大きな要因です。働きがいのある企業は、社員が少し肩の力を抜けるようにすることの大切さを理解しています。たとえばGoogleは、無料の食事やボウリング場、フィットネスクラスなど、仕事を楽しくするためにできることをほぼ何でもしています。考え方はシンプルです。仕事が楽しくなれば、成果が上がるだけでなく、より長く働き続け、キャリアも長く続けられます。
まとめ
管理職は、離職の問題についてあらゆる原因を責めがちですが、核心を見落としています。人は仕事を辞めるのではなく、上司のもとを去るのです。


