デジタルノマドはもう古い。環境に配慮するデジタル「スロマド」に注目

Concerns are growing over the environmental impact of digital nomads.
Concerns are growing over the environmental impact of digital nomads.Image: Unsplash/ Dessidre Fleming
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  • リモートワークの普及により、仕事をしながら世界各地を旅するデジタルノマドが登場した。

  • しかし今、一部の人々は環境への意識を高めたデジタル「スロマド」になりつつある。一か所に長く滞在し、持続可能な宿泊施設を選び、環境保全プロジェクトに投資したり貢献したりしようとしている。

  • しかし、気候変動対策活動家は、世界各地を移動して働くには依然として航空旅行が欠かせず、それが世界の温室効果ガス排出量の最大3%を占めていると指摘する。

リスボン中心部のカフェのテラスに座り、ビクター・ソトは、ほぼ3,000 km(1,864マイル)離れたスロバキアに拠点を置く企業の販売戦略を練っていた。

英国とペルーにルーツを持つ33歳の彼が、いわゆる「デジタルノマド」になったきっかけは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックだった。

「このライフスタイルのおかげで、選択肢と自由が大きく広がりました」と、彼はトムソン・ロイター財団に語った。旅行への情熱を満たすため、完全リモート勤務を認める企業だけで働くことにしたと、ソトは説明した。

ソトも今では、より落ち着いたペースの暮らしを求めるデジタルノマドの間で広がる動きの一員だ。

新しい「スロマド」も仕事道具を携えて世界を旅するが、一か所により長く滞在することを選んでいる。豊かな文化体験を楽しむための人もいれば、環境への配慮を深めたいという思いに動かされる人もいる。

世界各地で新型コロナウイルスによるロックダウンが解除されて以降、リモート勤務や柔軟な働き方が急速に広がった。AirBnBからTwitterまで大手企業が後押しし、最長2年間滞在して働けるデジタルノマドビザを発給する国も増えている。

専門家や研究者によると、デジタルノマドの典型像は変わりつつある。島々を渡り歩く20代に加えて、パートナーや子どもと旅をする30代、40代のオンラインワーカーも増えている。

しかし、環境への影響を懸念する声が高まっている。

最長2年間滞在して働けるデジタルノマドビザを発給する国が増えている。Image: ジョアンナ・ギル/トムソン・ロイター財団

デジタルノマドのカーボンフットプリントに関するデータは乏しいが、「スロマド」は飛行機の利用を減らし、持続可能な宿泊施設に滞在し、環境保全プロジェクトに投資したり貢献したりしようと努めている。

しかし、気候変動対策活動家は納得していない。この社会現象も依然として航空旅行に依存しており、航空旅行は世界の温室効果ガス排出量の最大3%を占めると指摘する。

「このライフスタイルの最大の問題は飛行機での移動なので、私たちは少し罪悪感を覚えていると思います」と、デジタルノマドを経験し、現在はリモートワーカーなど向けの共同生活スペースを提供するOutsiteの最高経営責任者を務めるエマニュエル・ギセットは語った。

ペースを落とす

パンデミック以前、デジタルノマドの典型像といえば、20代のフリーランサーが、短パンとビーチサンダル、ノートパソコンほどの荷物で、陽光あふれる場所を次々と渡り歩く姿だった。

今では、年齢を重ねてから仕事と旅行を組み合わせる人が増えている。家賃の安さを生かし、地域の文化をより深く理解して貢献するため、一か所に長く滞在することも多い。

5月に発表された世論調査によると、フリーランス向けマーケットプレイスのFiverrと旅行ガイド出版社のLonely Planetが調査したノマドの3分の1は、1~3か月ごとに移動していた。一方、55%は一か所で働き、3か月以上たってから移動することを楽しんでいた。

デジタルノマドの大半を米国人が占める。2021年のUpworkの調査は、採用担当者の習慣を調べ、2025年までに米国市民3,620万人がリモート勤務をするようになると推計した。パンデミック前と比べて87%の増加となる。

観光地はデジタルノマドをいち早く受け入れ、一か所に長く滞在する人が増える傾向を、パンデミック中のロックダウンで被った損失を取り戻す手段と見ている。

アルバ、バルバドス、カーボベルデ、クロアチア、エストニア、インドネシア、マルタ、ノルウェーなどの旅行先では、最長2年間滞在して働けるデジタルノマドビザを導入している。

リスボンは特に人気の高い滞在先の一つで、2022年にはAirBnBのデジタルノマド向け旅行先ランキングでポルトガルの首都が首位となった。Image: ジョアンナ・ギル/トムソン・ロイター財団

宿泊施設の貸し出しを行うAirBnBによると、ポルトガルでの長期予約は昨年、2019年と比べて90%増加した。同社は、どこでも働き暮らせることを活用する人が増えていることの表れだと説明した。

それでもデジタルノマドは、特に新型コロナウイルス感染症対策の制限が緩和されて以降、飛行機での移動が依然として多いことを認めている。ただし専門家によると、観光客やビジネス客と比べてノマドが占める航空便の割合を特定するのは難しい。

欧州のクリーン交通キャンペーングループ、Transport and Environment(T&E)で企業航空を担当する専門家のデニース・オクレールは、パンデミック中に見られた出張の減少を維持し、不要な飛行機利用を減らす「またとない好機」だと語った。

しかし彼女は、デジタルノマドとして働く従業員のカーボンフットプリントを、企業が年間排出量報告に算入しているのか疑問を呈した。

Outsiteのギセットによると、ノマドの間ではカーボンオフセットの利用が増えている。植林などを通じて排出量を削減するプロジェクトに資金を提供し、自らの気候への影響を埋め合わせようとするものだ。

しかし、一部の環境団体は、こうしたカーボンクレジットの仕組みを「見せかけ」だと退けている。

「問題がこれほど多いのに、環境に優しい飛行をしているという誤った安心感を人々に与えます」と、グリーンピース・オランダの航空専門家デウィ・ズロッホは語った。

彼女は、欧州委員会のために行われた2017年の調査を挙げた。同調査は、カーボンオフセットの仕組みが、実際に測定可能な排出削減をもたらしていないと指摘している。

デジタルノマド向け共同生活スペースのTraditional Dream Factoryは、再生型の村づくりの一環として、数百本の木を植えてきた。Image: サミュエル・ドゥレスク

環境に配慮した暮らし

一方、パンデミックを受けたリモートワークの急増により、共同生活や共同作業のスペースが生まれ、その一部では環境に配慮したアイデアを実践に移そうとしている。

Outsiteがカリフォルニアの共同生活施設で事業を始めた当初、アンデス山脈からインドネシアまで、各地で予約1件につき1本の木を植えていた。

2023年夏の開業を予定するTraditional Dream Factoryは、ポルトガルの広大な農村地帯、アレンテージョ地方にある共同生活スペースで、さらに意欲的な取り組みを試みている。

共同創業者のサミュエル・ドゥレスクによると、同じ志を持つデジタルノマド、エンジニア、アーティスト、暗号資産起業家が集まり、土地の再生にも取り組むコミュニティをつくることが目標だ。

この組織はすでに、森林伐採された土地に窒素固定作物を植え始め、数百本の木を植樹した。

さらに、居住棟に断熱材を施し、節水と自給自足を実現するため、自然の池やシャワーをつくる計画もある。

元ソフトウェアエンジニアでデジタルノマドでもあるドゥレスクは、南アフリカや米国などへの事業拡大を計画している。

フランスとデンマークにルーツを持つ起業家の彼は、環境を大切にすることがプロジェクトの中心にあると語った。

「経済的価値と生態学的価値を一致させられなければ、私たち人類は本当に破滅する運命にあります」と、彼は付け加えた。

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