2030年までに、10億件の仕事がテクノロジーによって変革されます。
アラブ世界は自動化の影響を受けやすい一方、若年人口の多さは適応の機会となります。
この地域で数多く実施されているリスキリングプログラムは、未来への道筋を示しています。
いまが正念場です。自動化によって労働者が取り残されないようにするには、リスキリング革命が不可欠です。
世界経済フォーラムは、世界中の仕事の3分の1に当たる10億件の仕事が、2030年までにテクノロジーによって変革されると予測しています。データ分析、生成AI、ソフトウェア開発などの新興技術への需要の移行に伴い、従来の産業が衰退するのは避けられません。
2025年までに、従業員の半数が、仕事で必要とされ続けるために新たなスキルを身につける必要があります。技術的能力に加え、創造性、感情的知性、複雑な問題を解決する力への需要が高まっています。リスキリングとは、明日の産業で活躍するための手段を人々に提供することです。新技術や人口動態の変化によって仕事の世界が絶えず移り変わるなか、これはいつの時代にも有効な政策です。
いま、特に中東・北アフリカでその重要性が高まっています。バーレーンとサウジアラビアでは業務活動の46%、カタールでは52%が自動化の影響を受けやすいとされています。同時に、この地域の人口の半数を子どもや若者が占めています。彼らはまだ労働市場に参加していない「変革の担い手」です。変化が急務であるなら、それを実現する条件は整っています。
そのため、政府、企業、学術機関の連携を原動力に、アラブ諸国では最先端の研修プログラムが活況を呈しています。ここでは、スキル向上の取り組みの実例、地域を変革している理由、そして各セクターが専門性を最大限に生かす方法を紹介します。
1. ビジョンを策定し、投資する
サウジアラビアでは、国家戦略「ビジョン2030」が経済の多角化を推進しており、2022年だけで、テクノロジー分野とスタートアップへの64億ドルの投資が発表されました。
ビジョンを後ろ盾とするプロジェクトには、「サウジ版シリコンバレー」と呼ばれる「ザ・ガレージ」や、ゼロカーボンのスマートシティ「NEOM」があり、デジタル分野の専門人材への需要を押し上げています。必要な人材の育成も成り行き任せにはされていません。IBMとの提携では、5年間でサウジアラビアの若者10万人のスキル向上を目指し、デジタル分野の専門人材に対する需要の高まりに応えるため、政府機関とその職員が新興技術に触れる機会も設けます。
同様に、バーレーンでは、政府が少なくとも2万人の国民にサイバーセキュリティの研修を行うことを目指しています。これは経済復興計画に基づく情報技術戦略の一環です。さらに、政府機関タムキーンとバーレーン工科大学の提携により、国内で需要の高いSwiftおよびiOSアプリ開発の研修を住民100人に実施します。修了後には、実務経験とキャリア上の人脈を得るための1カ月間のインターンシップに参加できます。
研修からキャリア形成までを網羅するこの全方位的なリスキリングの取り組みは、効果的な政策と投資がもたらす好循環を反映しています。人々は安定した仕事や、より良い待遇の仕事に就くためのスキルを身につける一方、急速に拡大する地域のテクノロジー産業は、すぐ近くで高度なスキルを持つ人材を確保できます。
2. 未来に必要なスキルを、いま身につける
バーレーンやサウジアラビアと同様に、アラブ首長国連邦(UAE)も将来の労働力を育成しています。2021年、ドバイはGoogle、Microsoft、Facebook、Ciscoなどの企業と提携し、5年間でコンピュータープログラマー10万人を育成し、最終的には地域にデジタル企業1,000社を設立することを目指しました。注目すべき点として、コーダー向け国家プログラムは首長国内外の人々を対象とし、デジタル経済の規模を2倍の2,000億AED(アラブ首長国連邦ディルハム)に拡大することを目指しています。明日の仕事を教えるうえで産業界の専門知識が重要な役割を果たすとすれば、今日のデジタル化の姿を示すうえでも、産業界の影響力は同じように重要です。
バーレーンのクラウド・イノベーション・センター(CIC)プログラムは、タムキーン、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、バーレーン工科大学の提携により、公共部門のデジタル変革を加速させるため2019年に始まりました。政府機関、民間部門、学術機関が連携し、AWSのテクノロジーを活用して、最も差し迫った課題の解決に取り組みます。
プロジェクトには、利用者が窓口に出向かなくてもオンラインで住所証明書を発行できる対話型チャットボットなどがあります。こうした定型業務の自動化は、利用者と職員の双方に時間の節約と生産性向上をもたらします。同時に、実用的な用途を通じてなじみのない技術を紹介する効果的な方法でもあります。明日の仕事への関心を高める取り組みは、まさにここから始まるはずです。
3. 能力だけでなく、姿勢も教える
技術スキルとともに、学習や問題解決に前向きに取り組む姿勢を育むことが重要です。適応力と革新性が高く評価される、変化が激しく急速に進化する雇用市場に備えることができます。
生徒に需要の高いスキルを身につけさせ、デジタル時代に備えさせるため、GEMS EducationとIBMは2020年に協力し、「IBM Digital-Nation」プラットフォームを立ち上げました。このクラウドベースのプラットフォームは、UAE全土の2,000人を超える生徒と70人の教師に、AI、ブロックチェーン、IoT、サイバーセキュリティなどの新興技術に関する講座を提供しています。デジタルスキルの格差を埋め、生徒がデジタル時代に対応できるよう、包括的なアプローチを提供することを目指しています。IBM Digital-Nationプラットフォームは能力を伸ばすだけでなく、学習、革新、問題解決に前向きに取り組む姿勢を育むことにも重点を置いており、生徒を未来に備えさせる優れたツールとなっています。
最後に、ドバイ・フューチャー・アカデミーは、高齢者や転職を考える人々にスキル向上の機会を広げる方法を示しています。このプログラムでは、UAEおよび世界各地の参加者に、無料のオンラインデジタル講座を提供します。重要なのは、決まった日程ではなく、希望するタイミングで受講できることです。ブロックチェーンやIoTなどの新興技術に焦点を当てる一方で、将来予測や将来に必要なコミュニケーションスキルといった概念も扱います。つまり、業界や職種に固有の能力にとどまらず、生涯学習に開かれた、変化に強い考え方を育みます。究極的には、それが未来に最も必要なスキルとなるでしょう。
この地域で特に成果を上げているスキル向上の取り組みの多くは、政府、民間部門、学術機関の連携によるものです。これらは変革に欠かせない3つの要素、すなわち政策、専門知識、教育を担っているためです。力を合わせることで、社会と経済を幅広く変革する可能性が生まれ、アラブ諸国は柔軟で将来に強いソリューションの拠点となりつつあります。


