紛争から逃れて近隣諸国へ、さらには遠方へと向かう難民が増えるなか、受け入れ国政府は現場の状況の変化への対応に苦慮している。多くの難民受け入れ国で財政圧力、経済の縮小、失業率の上昇が広がるなか、大規模な難民人口の存在がさらなる負担となっている。
受け入れ地域社会において、難民はしばしば社会の周縁に置かれている。雇用の選択肢は、制度面でも法的にも限られている。レバノンでは、シリア難民には働く権利がない一方、パレスチナ難民はUNRWAキャンプ内でのみ合法的に働くことが認められ、特定の職業への従事も制限されている。ヨルダンでは、シリア人が働けるのは指定された分野に限られる。トルコには分野別の制限はないが、雇用主が雇えるシリア人は、雇用するトルコ人10人につき1人に限られる。欧州では、難民が到着後いつから働けるかは国によって異なり、ギリシャやスウェーデンではほぼ直ちに働くことが認められる一方、英国やフランスなどではさらに長く待たなければならない。この遅れにより、多くの難民が非公式で不安定な雇用に頼らざるを得なくなっている。

受け入れ地域社会における雇用への法的・構造的な障壁に加え、もう一つの大きな問題は、仕事が不足していることだ。拡大可能で持続可能、かつ他の地域でも再現できる雇用創出モデルが緊急に求められている。雇用に関する新たな考え方は、移民や難民だけでなく、受け入れ地域社会にも役立つものでなければならない。地理的な制約を受けず、テクノロジーがもたらす機会を活用し、世界的なスキル不足に対処するとともに、オンラインでのスキルベースの教育モデルを活用する解決策は、実行可能な選択肢となり得る。
想像してみてほしい。アンマンの難民がロンドンの企業向けに翻訳し、イスタンブールの経済移民がドバイの企業のデータ入力を行う一方、ギリシャの庇護申請者がシリコンバレーの企業向けにコーディングをする。
このリモート雇用の構想は、インターネットを介したプロジェクトベースの仕事とし、国際的なサイバーセキュリティプロトコルに準拠した安全なオンラインシステムを通じて報酬を支払うものだ。相互に評価できる仕組みがあれば、個人や企業の実績と信頼性を築ける。事業者の需要に結び付いた教育要素を組み込み、採用候補者が必要なスキルを備えていることを雇用主が確認できるようにする。リモートワークの機会は多くの人々に、特に難民や避難民、その他の脆弱な立場にある人々に、経済的自立を取り戻す機会をもたらし得る。
リモートワークの傾向は世界的に広がっており、その恩恵は大きい。米国では、2015年に労働者の24%がリモートで働いていた。また、2016年のギャラップ調査では、回答者の43%が少なくとも一定の時間をリモートで働いていたことが分かった。中東でもリモートワークの機会が大幅に増加している。サウジアラビアでは、70都市の500社が個人のリモートワークを認めている。アラブ首長国連邦を拠点とするdubizzleは、商品の売買や検索ができる無料のクラシファイド広告サイトで、従業員にリモートワークや勤務時間の選択を認め、仕事と生活のバランスを保てるようにしている。企業は、世界中から優秀な人材を採用できるほか、生産性、機動性、拡張性の向上、離職率の低下、従業員の定着率向上という利点を得る。なかでも大きいのは、大幅なコスト削減だ。リモート勤務の仕組みを導入する企業は、リモートワーカー1人当たり年間最大22,000ドルを節約できる。
難民を対象とするリモートワークの取り組みもある。NaTaKallamは、アラビア語学習者とシリア難民を結び、Skypeを通じて会話形式のアラビア語レッスンを提供するプラットフォームだ。現在、シリア難民50人を雇用しており、彼らは時給10ドルを得ている。英国を拠点とするChatterboxはNaTaKallamと同様の仕組みで、難民を雇用してアラビア語、ペルシャ語、トルコ語など、さまざまな言語を教えている。レッスンはリモートまたは対面で行われる。ReBootKampはヨルダンを拠点とし、シリア難民やイラク難民、ヨルダン人を対象に、コーディングとウェブ開発の集中研修を提供している。卒業生の多くは現地のテック業界で働いているが、米国のテック企業でリモートワークを見つけ、現地で得られる額の最大4倍の報酬を得る人もいる。こうした取り組みは可能性を示す優れたモデルではあるものの、対象は限られている。
リモートワークを大規模に展開するモデルを構築する機会がある。この構想は、難民の個別のニーズを考慮しながら、より大きな難民人口にも適用できる。世界の民間セクターは難民に仕事を提供するとともに、その仕事に必要なスキルについて助言できる。リモート雇用が考えられる分野には、テクノロジー、翻訳、教育、管理、金融、マーケティング、調査がある。さらに、オンラインまたは既存の研修プログラムとの連携を通じて、「ブートキャンプ型学習」のような革新的な教育モデルとリモート雇用を組み合わせれば、雇用主は難民が必要なスキルを身に付けていると確認できる。
この取り組みには、政治面(立法・規制)、社会面(教育・スキル・考え方)、金融面(支払い)、技術面など、多くの障壁がある。しかし、次のものを実現するための十分な政治的意思があれば、これらの障壁は乗り越えられる。
難民受け入れ国への働きかけを通じて実現する、適切な法的枠組み
企業が労働者、特に難民をリモートで雇用するためのビジネス上の根拠
企業の専門スキルへの需要に応える、幅広い研修プログラム
革新的な支払いの仕組みと、適切な技術・人事システム。
この革新的な仕組みは、多くの人々の暮らしを変えるとともに、難民を受け入れる地域社会の経済にも良い影響を与える可能性がある。シリア難民の状況を例に考えてみよう。UNHCRによると、中東には登録済みのシリア難民が500万人以上おり、その50%は18歳から59歳までである。危機以前、シリアの人々の15%は大学の学位を取得していた。大学卒業者だけを対象としても、約375,000人のシリア難民がこの仕事に必要な能力を備えている可能性がある。労働者1人当たりの平均月給を1,000ドルと仮定すると、受け入れ国の経済には毎月3億7,500万ドルが流入する可能性がある。
このモデルには大きな可能性があり、双方に利益をもたらす解決策となる。難民と受け入れ地域の住民は、世界の労働市場で求められる市場価値のあるスキルを学び、安定した仕事に就ける。受け入れ国の経済は、可処分所得を持つ生産的な労働力を得て、失業率の低下という恩恵を受ける。難民は、帰国する場合も新たな受け入れ国へ移る場合も、国境を越えて活かせる形で雇用され、自らの生活を立て直し、地域社会に積極的に貢献するためのスキルを身に付ける。企業は、従業員が社外で働くことでコストを削減し、世界中の人材にアクセスして従業員の定着率を高められる。
リモートワークは、最も脆弱な立場にある人々に仕事を届ける革新的な解決策となる。避難を余儀なくされた人々の雇用のあり方を変える可能性を秘めている。


