2018年の幕開けにあたり、楽観できる理由があります。世界経済の自律的な成長と国際貿易の回復は、昨年さらに勢いを増しました。
しかし、特定の社会経済的な亀裂は広がり続けています。インテリジェント・テクノロジーが人々と企業の間の社会契約をさらに損なう可能性への懸念に、早急に対処する必要があります。
包摂的でつながり合う世界の担い手として、ビジネスリーダーはテクノロジーをどう活用すれば、重要かつ持続的な変化をもたらせるかを考えるべきです。私は、将来の労働力の育成、複雑な社会問題への取り組み、規制の枠組みの形成を強く支持しています。この3つのテーマはいずれも、より大きなイノベーションと成長に関わるものです。
将来の労働力を育成する
大胆な成長戦略を掲げる責任ある雇用主は、インテリジェント・テクノロジーを取り入れなければなりません。自動化や効率化を進めるためだけではなく、最終的に新たな成長と雇用の機会を生み出す、新しい成果を実現するためです。
企業は、将来の労働力を全面的に再編する必要があります。そのためには、自動化と人間のスキルの適切なバランスを取り、既存の従業員を再訓練して新たな価値を生み出すことが求められます。従来の職務記述が時代遅れになるにつれ、人々はますます知能を高める機械と新たな形で協働していく必要があります。
実際、メルセデス・ベンツは製造工場でロボットを高度な技能を持つ従業員に置き換えました。カスタマイズ車への需要に応えるうえで、人間の方が効率的で柔軟性に富むことが分かったのです。アクセンチュアも、数千の職務を自動化した後、従業員構成に大きな変化がありました。大規模なリスキリング投資を行った結果、職を失った人は一人もいませんでした。多くの人がより高い付加価値を生む職務に就き、その一部はインテリジェント・テクノロジーを活用しています。
社会的な成果を高める
世界経済フォーラムが描く「分断された世界」では、商業的利益をもたらすと同時に、社会的な成果を高めるためにもテクノロジーを活用しなければなりません。地域のNGOや政府と協力すれば、ビジネスリーダーは驚くべき規模で両方を実現できます。
例えば、個人識別について考えてみましょう。10億人を超える人々、つまり世界人口のおよそ6分の1は、最も基本的なデータである、自らの存在と身元を証明する公的書類がないため、社会から大きく取り残されています。それがなければ、正規の経済活動から締め出されます。給付金、銀行サービス、教育、医療、住居、選挙権など、私たちが当然と考える基本的なものを利用できません。
この問題に取り組むため、マイクロソフトとアクセンチュアは、ID2020を支援するために協力しています。ID2020は、ブロックチェーンと生体認証技術を用いて、人々が電子的に自分のデータにアクセスし、共有できるようにするデジタルプロジェクトです。この種のイノベーションにより、人を雇用すること、雇用されること、そして人々の幅広い福祉の向上が容易になります。より広範な経済成長も後押しします。
より良い規制の枠組みを形づくる
働き方を改善するインテリジェント・テクノロジーの可能性には、課題もあります。イノベーションの自由に対して、AIが社会に及ぼす影響への懸念が立ちはだかります。政府はしばしば、相反する二つの方向に引き寄せられます。さらに、規制の性質上、急速なイノベーションのペースについていくのが難しい場合があります。
そのため、AIの早期導入企業は模範を示さなければなりません。信頼が鍵です。すでに一部の企業は、説明責任、公平性、透明性の高い基準を守り、人々を第一に考える手法である「責任あるAI」を実践しています。こうした民間部門の先駆者たちは、自社の市場での存続と拡大が、顧客と自社スタッフの長期的な利益を守ることにかかっていると認識して事業を進めています。そのため、バランスの取れた規制の枠組みづくりに知見を提供するのに最も適した立場にあります。
インテリジェント・テクノロジーが、私たちの知る世界に変革をもたらし続けることは間違いありません。その影響は、良い面でも悪い面でも、計り知れないものとなるでしょう。ビジネスリーダーとして、責任ある対応を進め、将来の労働力とより広い社会へのリスクを軽減することは、私たちの責務です。
テクノロジーを応用してイノベーションを起こし、新たな成長の流れを生み出すことで、私たちは重要な役割を果たせます。そのためには、人々、より良い社会的成果、確かな倫理を、事業目的の核心と経営戦略の中心に据えるという決意が必要です。


