「組織の沈黙」とは何か、労働者にどのような影響を及ぼすのか?

Workers tend to be dissatisfied in their current jobs if feel they can’t speak up, explains a behavioural expert.
Workers tend to be dissatisfied in their current jobs if feel they can’t speak up, explains a behavioural expert.Image: Unsplash/Mario Gogh
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  • 近年、米国の職場では大きな変化が起き、従業員の行動にも新たな傾向が見られます。

  • 記録的な数の労働者が仕事を辞めた「大退職」がありました。

  • そして最近では、必要最低限の仕事しかしない、あるいは仕事で成果を上げようと努力しないことを指す「静かな退職」があります。

  • 行動科学の専門家によると、声を上げられないと感じる労働者は、現在の仕事に不満を抱きがちです。

  • 従業員から継続的に意見を求め、意見を述べたことを罰するのではなく称賛することで、声を上げるよう促すために、リーダーはもっと取り組む必要があると彼は言います。

ここ数か月、米国の労働者は3つの大きな潮流の最前線に立ってきました。

まず「大退職」があり、記録的な数の労働者が仕事を辞めていました。それと同時に、労働組合結成の動きが相次ぎ、スターバックスやアップルを含む米国の大手企業に広がりました。最近では、「静かな退職」という言葉を耳にした人も多いでしょう。誤解されることも多いこの言葉は、仕事で必要最低限のことしかしないこと、あるいは期待を上回る成果を目指さないことを意味します。

私は経営学の教授として20年以上にわたり労働者の行動を研究してきましたが、これらはすべて同じ問題への反応だと考えています。労働者は今の仕事に不満を抱き、組織の問題や非倫理的な行為について、あるいは知識や創造的なアイデアを共有するためでさえ、声を上げられないと感じています。その結果、たいていは黙って苦しみながら、職場を去るか、努力を減らすのです。

こうした状況は変えられますが、変えるのは簡単ではありません。端的に言えば、労働者だけでなく、立法者や企業にも勇気ある行動が求められます。

「組織の沈黙」という問題

職場で勇気を持つことは、実は私の研究の主な焦点です。つまり、問題に気づいたときや、改善策や革新案を提案できるとき、労働者はどれくらいの頻度で声を上げるのでしょうか。私たちの分野では、声を上げないことを「組織の沈黙」と呼びます。同僚と私は、米国の職場を調べるあらゆる場面でそれを確認しました。

オンライン調査を2018年から実施しています。その調査によると、違法、非倫理的、傷つける、あるいはその他の不適切な行為について、労働者が上司や他の上位者に異議を唱えるのは、およそ3回に1回です。業務上の問題や組織を改善する方法など、それほど扱いにくくない問題について声を上げる場合も、その頻度はさほど高くなりません。相手が自分に対する権限を持たない同僚でも、数字は同様です。

内部告発を研究する同僚たちも、重大な不正を目撃した人のうち、それを止めるために十分な行動を取るのは一部にすぎないと指摘しています。また、別の研究者たちは、労働者がマイクロアグレッションを目撃しても、ほとんど何も言わないことを明らかにしています。

私が行った小規模な実験も、この問題をよく示しています。「Defining Moments」という授業で、困難な状況でも適切に声を上げる方法を学生に教えています。授業では、学生一人ひとりが、正体を明かしていない組織のダイバーシティとインクルージョンの取り組みを改善する提案を、幹部役の俳優2人に説明するシミュレーションを録画します。私は男性俳優に、学生との短いやりとりの間に、女性の同僚に向かって「ねえ、あなたが議事録を取って」といったマイクロアグレッションを少なくとも3回言うよう指示します。

年齢が約25歳から50歳までの学生の半数ほどは、侮辱的な発言に対してまったく反応しません。残りの学生も、耳にしたマイクロアグレッションの約半分にしか反応せず、その多くは発言そのものに異議を唱えるのではなく、「私が議事録を取ります」と被害を受けた人を助ける形です。

これらの知見を総合すると、人々が沈黙を守ることで重大な問題が生じ、それが悪化する可能性もあることがわかります。また、従業員の意欲低下を大きく招き、多くの人が職場で自分らしく振る舞えず、無力だと感じたり、あるいは行動しなかったことを悔やんだりすることにもつながります。

東アフリカの労働者たちは、コンピューターで行動を追跡され、速いペースで働くことを求められるなどの労働条件に抗議しました。Image: Wikimedia/Fibonacci Blue

4つの恐れ

大抵の場合、人々が対応できる、あるいは対応すべき問題に気づいていないわけではありません。

たとえば、マイクロアグレッションのシミュレーション直後に行った調査では、最初の問題発言に気づいた参加者は、その発言について声を上げた参加者の3倍を超えました。さまざまなコンサルティング案件で私が関わる管理職たちは、上司や同僚、さらには部下に対して言いにくいことを伝える必要がある場面で、「すべきこと」と「実際にすること」の間に隔たりがあると率直に認めます。その理由を尋ねると、研究で繰り返し示されているのと同じ答えが返ってきます。人々はそうした会話を始めることを恐れているのです。

その一因は、今日の米国で働くことの性質にあります。米国の労働者のおよそ4分の3は「随意雇用」で、ほぼどんな理由でも、あるいは理由がなくても解雇される可能性があります。そのため、人が職場の問題について声を上げたために解雇される話を耳にするのです。また、参考までに言うと、職場では言論の自由が保障されていません。合衆国憲法修正第1条は「民間の主体には適用されない」からです。

2021年に出版した著書『Choosing Courage』で述べたように、人々が声を上げることや、声を上げる際に完全に率直であることを妨げる、よくある恐れが4つあります。

1. 経済的またはキャリア上の不利益――勤務時間や勤務地について、上司にもっと柔軟な対応を求めると、昇進の道から外されたり、新しい仕事を探すよう告げられたりするかもしれません。

2. 社会的な排除――締め切りを守れなかった同僚や、別の人種や性別の人に向けた発言について同僚に異議を唱えると、昼食を一人で食べることになるかもしれません。

3. 心理的な苦痛――新しい改善案を出して厳しく退けられると、自分に自信が持てなくなるかもしれません。

4. 身体的危害――規則に違反したり、不適切な発言をしたりする顧客や同僚に立ち向かうと、殴られたり、武器で脅されたりするかもしれません。

最近、こうした悪影響を経験していなくても、声を上げる危険性について、すでに内面化した一連の思い込みを抱えているかもしれません。経営学者エイミー・エドモンドソンとの共同研究で示したように、そうした思い込みは、実際には安全に声を上げられる状況でも自己検閲へとつながります。

前に進む道

労働者が声を上げないとき、ある程度の責任は労働者にもあると私は考えています。しかし、率直さを促さない文化や環境をつくっている企業やその他の組織にも責任があります。

たとえば、労働者がより大きな発言力を持つことを妨げる構造的な障壁があります。その一つは、1950年代以降、労働組合の組織率が着実に低下していることです。もう一つは、医療や安定した老後といった必需品を特定の雇用主から切り離して保障する、十分なセーフティネットがないことです。

従来、労働組合は、労働者を守ってきました。たとえば、倫理上の問題について声を上げた人が不当に解雇されたり、その他の処罰を受けたりするのを防ぎ、前述のような不利益から労働者を守ってきたのです。

私の考えでは、この状況を好転させる方法はいくつもあります。立法者は、労働組合の結成を望む労働者を支援する法律を強化できます。これは、労働運動が再び活気づき、一部の雇用主から強い反組合の反発が起きている今、特に有効でしょう。

企業、非営利団体、政府のリーダーは、従業員から継続的に意見を求め、意見を述べたことを罰するのではなく称賛することで、従業員が声を上げるよう積極的に促すために、さらに取り組むことができます。ちなみに、リーダーがこうした環境づくりに力を入れれば、従業員が労働組合の必要性を感じることも少なくなるでしょう。

報復を恐れる労働者は、より効果的に声を上げ、その悪影響を最小限に抑えるためのスキルを学べます。伝え方を変えるだけで大きな違いが生まれることもあります。たとえば、安全上の問題に対処するよう管理職に求める際、道徳的な理由を挙げるよりも、効率を改善する機会だと説明するほうが、受け入れられやすいことがあります。

これらの取り組みはどれも簡単ではありません。関係するそれぞれのグループのメンバーに、より勇気ある行動が求められます。しかし、安全、違反行為、業績といった問題について労働者が自分の考えを述べられるようにする方法を見つけることは、極めて重要だと私は考えています。こうした場面での出来事が、人々が起きている時間の大半を過ごす場所を形づくり、そこで働き続けたいと思うかどうかにも影響するからです。

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