心配はいらない。仕事のストレスは必ずしも悪いものではない

Traders work on the floor of the New York Stock Exchange shortly after the opening bell in New York, July 23, 2015. REUTERS/Lucas Jackson
You have to find a balance though.Image: REUTERS/Lucas Jackson
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英国では、職場での不満が高まっているようだ。調査によると、職場のストレスや燃え尽き症候群が増加している。一方、企業は、病欠の増加、生産性の低下、従業員の離職による経済的損失を訴えている。

しかし、適度なストレスが仕事のパフォーマンス向上に役立つと知れば、従業員の気持ちは少し楽になるだろうか。あるいは、「否定的な思考」を慎重に取り入れることで、より強く、機敏な企業をつくれるとしたらどうだろうか。

こうした仮説を裏付ける研究は数多くある。それでも多くの企業では、士気と従業員エンゲージメント(ウェルビーイングを指す流行語)の向上に注力するのが主流だと、ルイス・ガラッド氏は言う。同氏は組織心理学の公認専門家で、マーサー・シロタの成長市場部門を率いている。

「世に出ている研究を見ると、エンゲージメントと業績指標の相関は決して完全ではありません。つまり、『エンゲージメントの高い』個人やチームの多くが、経営陣の期待する成果を上げているわけではないのです。同様に、最も業績の高いチームが、最も満足度の低いチームの一つだと分かる企業もあるでしょう」

職場のストレスには、プラス面とマイナス面の両方がある

2016年、ガラッド氏はこのテーマについて、ハーバード・ビジネス・レビューに、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのビジネス心理学教授で、マンパワーのチーフ・タレント・サイエンティストを務めるトーマス・チャモロ=プレムジック氏と共に記事を寄稿した。両氏は、エンゲージメントと生産性には強い結び付きがあると認める一方で、企業は職場での不満や不安がもたらす利点を見過ごしがちだと論じている。

チャモロ=プレムジック博士によると、前向きな考え方は職場に「開放性と創造性」をもたらす一方、より批判的な考え方は「集中力と注意力」をもたらし得る。また、満足度の低い人の方が、意欲が高く、準備が整っており、批判的思考力にも優れていることが多いと示す研究も紹介している。

満足度の低い人の方が、意欲が高く、準備が整っており、批判的思考力にも優れていることが多い

チャモロ=プレムジック博士

「また、集団思考や現状に異議を唱える傾向も強く、それは大規模な組織全体でイノベーションを推進するうえで鍵となります」と同氏は言う。

士気の向上とストレス対策にばかり注意を向けると、リーダーは、強いリーダーシップや風通しのよいチーム文化など、より重要な業績向上の要因を軽視する恐れがある。また、自己満足を招く可能性もあると、チャモロ=プレムジック博士は指摘する。同氏は、企業文化に誇りを持ちながらも、競争上の脅威を見極められず、イノベーションを止めてしまった企業の例として、ヤフー、ノキア、ブラックベリー、コダック、IBMを挙げている。

「企業が大きくなり、市場を支配するようになると、自らの成功の犠牲者になります。従業員エンゲージメントもこの過程に関わります。成功に続いて生じる自己満足や幸福感が、その源になっていることが多いからです」と同氏は言う。

鍵となるのは、ストレスの適切なバランス

しかし、ある程度のストレスや不安が成果を高めるとしても、過剰になれば害を及ぼす。英国の安全衛生庁によると、2016~17年には、仕事に関連するストレス、うつ、不安が原因で、1,250万労働日が失われた。要因として、業務量、支援の不足、いじめなどが挙げられている。

また、エンゲージメントの高い事業部門は、売上高や利益で測った業績が向上する傾向にあり、熱意ある従業員がいる組織は、顧客サービスの評価も高い傾向にあることを示す有力な研究もある。

Image: リンクトイン

では、適切なストレスの水準とはどの程度で、企業はどうすればその恩恵を得られるのか。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのマーケティング助教、ヘザー・カッペス博士は、否定的な思考はビジネスに役立つことがあるが、その意味を明確にすべきだと言う。

「『これは絶対にうまくいかない』と考えることではありません。むしろ、『これは大変なことになりそうだし、すべてが順調に進むとは限らない』と想像することです。後者のように考えると、懸命に取り組み、想像した問題を乗り越える計画を立てようと、意欲が湧くことがよくあります。創造的な突破口を見いだす助けになる可能性もあります」とカッペス教授は言う。

これを実践する際には、適度さが鍵だと同教授は考えているが、適切なバランスを取るのは難しい場合がある。同じ状況でも人によって反応は異なり、「ある人にとって適度な覚醒状態が、別の人には強すぎたり弱すぎたりすることがあります」。

従業員ごとに異なる対応が必要

ガラッド氏も、一律の対応を避けるべきだと警告する。部門全体にかける圧力を高めれば、短期的には活力が高まるかもしれないが、長期的には逆効果になり得る。代わりに、リーダーは従業員一人ひとりをよく理解し、より効果的にマネジメントすべきだ。

「不安を感じやすい人は、ストレスを強く感じやすいため、より多くの励ましと、通常はより手厚い支援が必要です。感情面で非常に安定している人には、改善に必要な活力や努力を引き出すため、もう少し焦点を絞った明確なフィードバックが必要かもしれません」と同氏は言う。

ストレスは通常、長く続いて慢性化すると健康とウェルビーイングに悪影響を及ぼすため、管理職はストレスの多い時期と、休息や回復の期間とのバランスを取るべきだ。また、チームメンバーの目標をより明確にし、努力をきちんと評価するとともに、柔軟な働き方を提供することも考えられる。

しかし、チャモロ=プレムジック博士は、企業も従業員も、実現可能なことを現実的に捉える必要があると考えている。職場からストレスや不満をなくすことは望ましくないだけでなく、そもそも不可能かもしれない。

「簡単に言えば、ストレスは、私たちを取り巻く環境がどれほど負担となり、脅威となるかを知らせる信号です。それを無視するより、反応する方がよいのです」と同氏は言う。「良い仕事にもストレスは伴うと理解し、それを感じ取る力をなくそうとしてはいけません」

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