男女間の賃金格差はよく耳にしますが、男女間の通勤格差についてはいかがでしょうか。
英国の調査によると、男女間の通勤格差は現実に存在し、女性の賃金や就業機会に影響を及ぼす可能性があります。
英国国家統計局の調査(ONS)によると、ロンドンを除く英国のすべての地域で、15分以内の通勤をする割合は男性より女性のほうが高くなっています(ロンドンでは比較的長距離の通勤が一般的です)。

一方、1時間以上かかる通勤の3分の2(65%)を男性が占めました。
男性は職場までの移動距離が長いだけでなく、英国の地域間を通勤する割合も女性より高くなっています。
男女間の通勤格差:その理由と影響
では、なぜ女性は自宅に近い場所で働くのでしょうか。統計からは、主な介護・養育の役割を誰が担うかが大きく関係していることがうかがえます。
別のデータを見ると、シンクタンクの財政研究所(IFS)は、子どもを持つ前と後の男女の通勤パターンを分析しました。
グラフが示すように、第1子の誕生前、女性の平均通勤時間は男性よりわずかに短い程度でした。しかし、第1子を持ってからの10年間で、女性の平均通勤時間は短くなった一方、父親の通勤時間はおおむね変わりませんでした。

親としての責任から自宅に近い場所で働くことは、高賃金の仕事やキャリア形成に最適な機会を提供する仕事を女性が見つける可能性を狭めるおそれがあり、男女間の賃金格差を生む多くの要因の一つかもしれません。
世界経済フォーラムの『世界男女格差報告書2018』によると、これまでに世界全体で、賃金格差の平均63%、推定勤労所得格差の50%が解消されています。
第1子を持ってからの10年間に広がった男女間の通勤格差は、「男女間の賃金格差の推移と驚くほどよく似ている」とIFSは分析で記しました。ただし、両者に直接的な因果関係があるとは限らないとも付け加えています。
通勤時間が短いと仕事の選択肢が狭まる
世界銀行によると、世界各地で女性はいまも無償のケア労働のより大きな割合を担っており、それは移動のパターンにも表れています。世界銀行は、男女間の通勤格差を探る調査に資金を提供し、ブエノスアイレスで実施しました。
調査によると、アルゼンチンの首都では、女性の通勤時間は男性と同程度でしたが、移動距離の短い移動をより多く行っていました。特に母親は移動速度が遅く、混雑時間帯を避けて頻繁に移動していました。たとえば、保育施設への子どもの送迎などです。
世界銀行によると、この調査結果は欧州、米国、そしてペルーやベトナムなどの開発途上国での調査結果とも一致しています。
長距離通勤が制約されることは、女性の賃金率や雇用機会に「避けられない影響」をもたらすと世界銀行は述べています。ブエノスアイレス都市圏の一部では、父親が就ける仕事の数は母親より80~100%多くなっています。

不利益を被るのは女性だけではありません。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが2015年に発表した報告書によると、女性の平等を推進すれば、世界のGDPに12兆ドルを上乗せできる可能性があります(2025年までに)。
男女間の賃金格差の説明は、女性の賃金が男性より低く、低賃金の業界で働く傾向があるという点だけではありません。「母親ペナルティ」も、その一因です。母親はパートタイムや柔軟な働き方を選んだり、キャリアを中断したりする傾向がより強いことなどが含まれます。
フォーラムの『世界男女格差報告書2018』によると、データが得られた29カ国では、女性が家事や家庭内のケアを含む無償労働に費やす時間は、男性の平均2倍に上ります。
しかし、IFSが指摘するように、男女の所得差のかなりの部分はまだ十分に解明されていません。男女間の通勤格差を調べることで、この問題への理解が深まるかもしれません。


