ソフトスキルが生産性や所得の向上にどう役立つかについては、盛んに議論されている。この研究分野に、新たな興味深い論文が加わった。アチュータ・アドバリュ、ナムラタ・カラ、アナント・ニャシャダムによるこの研究は、インドの工場労働者にこうしたスキルの研修を提供することの効果を調べている。企業がこうしたスキルの研修を実施することには、経済合理性がある可能性を説得力をもって示している。
舞台は南インド。アドバリュらは、国内最大の既製服輸出企業と連携した。労働者は全員女性で、約70~100人のラインに分かれて働き、各人が一度に特定の衣服の型を生産するための作業を担当する(論文にはその工程について興味深い説明があり、シャツを見る目が変わるかもしれない)。企業と協力し、アドバリュらはラインを無作為に割り当て、さらに各ライン内の労働者も無作為に選んでソフトスキル研修を受けさせた。
ソフトスキルの意味は人によってさまざまだが、この研究では何を指すのだろうか。このプログラムは「Personal Advancement and Career Enhancement(PACE)」と呼ばれ、時間管理、効果的なコミュニケーション、問題解決、金融リテラシーなど幅広いテーマを扱う。研修全体は11カ月にわたり計80時間で、その半分は労働者の自由時間、残り半分は勤務時間に行われた。
アドバリュらはさまざまなデータを収集した。最も重要なのは生産データで、工場の現場にタブレット端末を設置し、担当者が生産ラインの労働者に関する指標を記録した(こうした生産データの収集担当者は以前からいたようだが、タブレットは新たに導入された)。データ収集上の制約として興味深い点が一つある。最終的にタブレット端末が故障し(多くは同時期に故障した)、介入後の効果を観察できる期間に上限が生じた。アドバリュらは生産データを、出勤状況と給与に関する人事データ、および研修終了から1カ月後に実施した労働者調査で補った。この調査により、主要な性格特性の一部も測定できる。
では、何が分かったのだろうか。まず、定着率を見てみよう。これらの仕事では全体として離職率が高く、26カ月の観察期間後に残ったのは、当初のサンプルの約25~30%にすぎなかった。PACE研修は定着率を改善したものの、その効果はわずかで、しかも研修期間中に限られた。研修後は両群の割合に大きな差はなかった。このことは推定に問題を生じさせる可能性がある(たとえば、プログラムが離職の性質に影響した場合など)。しかしアドバリュらは、時点ごとのベースライン特性の均衡検定など、さまざまな確認を行い、懸念は不要だと示している。離職を別にすれば、このプログラムは研修中と研修後の両方で、出勤率に正で有意な効果をもたらした。
研修を受けた労働者の生産性は高まったのだろうか。アドバリュらは三つの異なる指標を用いている。一つ目は生産した製品(衣服)の点数。二つ目は効率性で、生産点数を目標値で割って測定する。目標値の基準となるのは、「標準許容分(SAM)」という見事な名前の指標だ。産業エンジニアが定めた世界共通の業界標準で、衣服の生産に何分かかるべきかを示す。(重要な補足として、アドバリュらは効率性を推定する際、複雑さを調整するために衣服の型ごとの固定効果を用いている。)三つ目の生産指標では、SAMを実際に調べ、研修を受けた労働者がより複雑な作業を担当しているかを確認する。
研修を受けた労働者の生産量は増え、1時間当たり約6着、対照群に比べて10%多く生産した。効率性も7パーセントポイント(対照群比12%)上昇した。興味深いことに、これら二つの指標が上昇したのは研修中ではなく、研修後だった(生産性の各指標では、勤続期間を調整している)。労働者に割り当てられた作業の複雑さは研修中に実際に高まり、研修後も高い水準を保った(有意水準10%)。
賃金に移る前に、効果が生じる仕組みとして考えられる要因を見てみよう。アドバリュらは調査データから手がかりを示している。性格特性では、外向性が対照群に比べて大幅に高まったことが大きな変化だった。研修を受けた人々には、将来を見据えた行動が増えた兆候も見られる。教育費を貯蓄する可能性が高まり、子どもの教育に対する希望も高くなった。また、政府の年金や補助付き医療を利用する可能性も大幅に高まった(研修の金融リテラシーの部分が影響した可能性がある)。もう一つ興味深い効果として、ソフトスキル研修を受けた人は、技術的な(ハード)スキルの研修を希望する可能性が約15パーセントポイント高かった。したがって、生産性や作業の複雑さの向上を見る際には、この点を念頭に置く必要がある。
潜在的な効果経路を探るもう一つの方法として、アドバリュらは波及効果を調べている。前述のとおり、同じラインの労働者全員が介入を受けたわけではなく、介入はライン間でも無作為に割り当てられた。このためアドバリュらは、介入を受けなかった同じラインの同僚に対する効果を調べることができる。興味深いことに、こうした同僚にも同程度の生産性と作業の複雑さの向上が見られたが、性格には変化がなかった。
スキルの向上と生産性の上昇は、賃金の上昇にもつながるのだろうか。そうとは言い難い。研修を受けた労働者の賃金は、研修後にわずか0.5%上昇したにすぎない(有意水準10%)。アドバリュらは賃金と生産性の上昇を基に、研修による企業の純投資収益率を計算できる。研修期間終了時の収益率は12%で、その大部分は離職率の低下によるものだと結論づけている。つまり、このプログラムは実施中でも企業にとって合理的だ。さらに研修後は生産性が急上昇し、プログラム終了から20カ月後の純投資収益率は驚くべき256%に達する。
興味深い論文だ。この労働者グループでは、成人後も性格特性の一部が大きく変化しうることを示している。そして、こうしたスキルが変わると、生産性の向上が見られる。労働市場について明らかにしている点も印象的だ。得られた利益のほぼすべてを企業が手にしている。シグナリングの問題や、企業がこうしたスキルを見極める能力の不足(あるいは意欲の欠如?)が原因かもしれない。そのため、この種の研修で身につけたスキルはすぐに別の職場へ持ち運べるものではない。この課題の構図を理解することが、次の重要な課題となる。


