優れたチームは、適切な基準に基づいて編成され、組織内のあらゆる階層、さらに外部の利害関係者を含む非常に多様な人材で構成されているときに最も効果的かつ迅速に機能する。本稿の寄稿者であるデイビッド・コムロス氏とデイビッド・ベンジャミン氏はそう述べている。両氏は『Cracking Complexity: The Breakthrough Formula for Solving Just About Anything Fast』の共著者である。コムロス氏はSyntegrityのCEO、ベンジャミン氏は同社の最高設計責任者(チーフ・アーキテクト)を務める。
リーダーたちは、多様なチームが大きな問題への対処、より優れたイノベーション、そして組織全体のパフォーマンスにとって鍵となると、長年耳にしてきた。しかし実際には、最重要課題を解決するために必要な特定の人材の多様性を備えたチームを編成する方法を知るリーダーはほとんどいない。「誰を」「何人」選ぶかという観点で何が多様性に当たるのか、またそのようなチームをどう構成すればよいのかが明確ではないのである。これは複雑性を使いこなすうえで不可欠である。その理由を説明しよう。
ある朝オフィスに入ると、机の上に獰猛なライオンがいるところを想像してほしい。たいていの人は、瞬時にドアを閉め、全速力で逃げ出すだろう。その一瞬を分解してみると、1秒にも満たない間に、ライオンを認識し、その意味を理解し、選択肢を検討し、取るべき行動を決め、それを滑らかに実行している。混乱もなく、矛盾したメッセージもなく、合意形成もない。ライオンを認識してから逃げるまでの道筋は、非常にスムーズなのである。
組織、事業部門、チーム、合弁事業は、それほどの速さでは機能しない。事業の成長の加速、コスト削減、合併、デジタル化、変革といった課題は、どれも単独の個人によって解決されるものではなく、解決策が単独の個人によって実行されるわけでもない。認識し、理解し、考え、決定し、そして統一された形で行動するには、多くの人々が必要なのである。
1962年から1964年まで一般システム研究学会の会長を務めたW・ロス・アシュビーはこれを理解していた。彼の「必要多様性の法則」は「多様性だけが多様性を破壊しうる」と述べており、これは多次元の課題に直面するリーダーは、その課題と同じくらい多次元的でなければならないことを意味する。それを可能にするのは、通常の候補者の枠を超え、より幅広く深い多様な人材を活用することだけである。こうした人材は、複雑性に見合う知識、経験、専門性を併せ持ち、その協力が実行に不可欠な存在である。必要多様性を軽視すれば、必ず部分的な結果しか生まれない。部分的な理解から始まり、部分的な解決策が続き、その結果、弱い実行に終わるのである。
チームを編成する際に、多様性を厳密に検証するための枠組みは以下のとおりである。
役割、視点、知識、専門性に基づいて人材を選べる12のゾーン。
基本的な人口統計、思考様式、性格、態度、影響力といった人間的側面にまたがる13の特性と照合する。
課題が異なれば、必要なゾーンと特性の組み合わせも異なる。
多様性の高いチームを編成する
課題に応じて(例:ネット・プロモーター・スコア(NPS)の向上、製造およびサプライチェーンの変革、顧客からの信頼と支持の確立など)、まずは顧客、利害関係者、パートナーを含め、組織全体を広く見渡すことから始めよう。各ゾーンを検討し、関与させるべき人材を特定したうえで、その他の考慮事項や特性を重ねていく。例えば、経営陣から選ぶ場合は、誰が最も変化に前向きで、進んで異論を受け入れられるか。IT部門から選ぶ場合は、誰が最も重要な実行者となり、誰が最大の懐疑派か。取引先の代理店やベンダーの中で、いつも最初に耳を傾け、後から優れた洞察を示してくれるのは誰か。強みは、こうした違いをすべて同時に、一度に取り込むことにある。
必要な多様性を、最小限の人数で実現することがポイントである。「必要な」という言葉に関して言えば、重要なのは人選における効率性である。全体として所望のゾーンをカバーする具体的な人物を挙げ、それらの人物がカバーする特性を照合したら、候補者の長いリストが得られる。そのリストを絞り込み、重複を取り除き、いくつかのゾーンと特性をわずかにしかカバーしない3人を、それらすべてをカバーする1人に置き換えれば、多様性の高いチームの完成である。少なければ8人、多ければ50人か60人程度になるかもしれない。
NPSの向上
ある大手金融サービス企業は、NPSを大幅に向上させることを目指していた。同社は通常、主に上級管理職とその部下、そして若くて有望な少数の社員を招集して進めていた。しかし、解決策を見いだすために招集するチームを再考するにあたり、「12のゾーン」と必要多様性の考え方を用いた結果、現場の有力者、主要機能部門の階層的に多様な代表者、外部の専門家数名、PMOの外部委託パートナー、数名の顧客、そして計画の実行を統括する社内のタスクフォースを招き入れた。ほかに重要な特性を検討する中で、同社は、別の業界で同様の課題に取り組んだ社内関係者を数名追加し、当初選定していた経営幹部の一部を入れ替えて人口統計的な多様性を高め、主要セグメントをより反映するよう顧客構成を変え、さらに本物の挑戦者としての評判を持つ現場の人物をもう1人加えた。
6か月以内に、この慎重に選ばれた、いわゆる「通常の顔ぶれ」と「非通常の顔ぶれ」の組み合わせが、同社のNPSスコアを−15から+28へと向上させた要因とされた。
製造およびサプライチェーンの変革
ある複合企業は、通常この課題の検討には関与しない多くの人々を巻き込んだことが大きな理由となり、製造およびサプライチェーンの変革を予想以上に速く実現することができた。すべての事業部門と複数の主要機能部門が代表として参加した。また、一部のサプライチェーン・パートナー、顧客、サプライチェーン変革ならびにデータ・分析の分野の外部専門家、そして地理的に分散した工場や物流センターの現場の奥深い階層の人々も含まれていた。事業部門から誰を招くかについては、変革を強く支持する人と最も強く抵抗する人がバランスよく含まれるよう、意図的な選択が行われた。こうした「非通常の顔ぶれ」は全員、これほど重要な議論に、これほど早い段階から参加させてくれた経営陣を評価した。彼らにとっては、キャリアで初めての経験だったのである。
「必要な多様性を、最小限の人数で実現することがポイントである。」
顧客からの信頼と支持の確立
生命に不可欠な製品を供給する医療機関は、戦略計画の各サイクルを通じて、真逆の見解や動機を持つ外部の利害関係者を意図的に関与させることで、信頼と評判を高め、市場シェアの圧倒的な地位を獲得することができた。これらの人々は、利害関係者とのエンゲージメント会議や市場調査のインタビューを通じて関与するのが通例だったが、今回は戦略策定の中心に身を置くことになった。彼らは自らのニーズを表明し、懸念を述べ、最終的には今後の方向性を共に創り上げた。同席したのは、組織内の多様な人材であり、率直に意見を述べ、異論を唱え、実現できること・できないことについて弱さを見せ、既存の社内プロセスや方針が誤っているかもしれないという可能性にも開かれた態度をとることを十分に認められていた。実際、ある特定の戦略では、参加者全員が既存の国の政策が誤っていることに気づき、足並みを揃えてその変更に責任を持って取り組むことになった。関係者の多くは、そのような展開は予想していなかったと語り、その日の会議室に多様な人々がいなければ、変革の必要性はそもそも見いだされなかったとも述べた。
成果を分ける要因
これらの事例のいずれにおいても、必要な多様性を活用したことが、解決策の質と、その後の実行の速さを左右する重要な要因となった。もちろん、必要な多様性を組み立て、確保することは必要条件ではあるが、十分条件ではない。その人々を同じ場に集めた後に何をするかによって、チームが堅牢な解決策を確実に導き出し、共に創り上げたものに心から同意できるかどうかが決まるのである。
複雑性こそ、現代を象徴する課題である。最大の課題を飛び越え、その先にある機会をつかむ能力は、今日における唯一最も重要なリーダーシップと組織の能力である。そのための人材は希少ではなく、豊富にあなたの周りに存在する。彼らは比較的安価で、解決策の一部であり、適切な方法で動員されれば、極めて迅速に動ける。必要多様性の考え方と、目的特化型チームを編成する手腕を身につけることこそが、その入り口となる。


