世界経済フォーラム、AARP、OECDの調査によると、多世代の労働力への投資により、30年間で一人当たりGDPが約19%増加します。
主な調査結果は、あらゆるライフステージの従業員を含む活力ある労働力が、社会と企業の双方に利益をもたらすことを示しています。
パンデミック後の世界で成長を加速する方法を模索するなか、年齢の多様な労働力に投資する企業は、その恩恵を得るでしょう。
過去1世紀、人類史上かつてない速さで長寿化が進みました。今日、私たちはこれまでのどの時代よりも長く生きており、65歳以上の人口は他の年齢層より速く増加しています。この人口動態の変化は、医療や年金制度など、経済と社会のあらゆる側面ですでに影響を及ぼしています。しかし、長寿化がもたらす影響をまだ十分に探れていない分野の一つが、仕事の未来です。
史上初めて、職場で5世代が肩を並べて働いています。真の多世代型労働力が生まれているのです。健康寿命が延びて高齢期も働けるようになる一方、退職を先送りして長く働く人も増えています。新たな調査研究によると、この新しい労働力の年齢構成は、企業の成長を力強く後押しする潜在的な源泉です。
高齢者はすでに世界経済活動の大きな部分を担っています。米国だけでも、50歳以上の米国人は2015年に約8兆ドル相当の経済活動を生み出しました。2032年には13.5兆ドルに達する見込みです。さらに新たな調査により、多世代の労働力を雇用することは大きな競争優位性をもたらし、人材パイプラインの強化、労働力の継続性と安定性の向上、知識の維持に役立つことも明らかになっています。
これらは、OECDが本日発表した報告書『年齢を問わず活躍できる労働力の促進:長く生き、学び、稼ぐ』の主な調査結果の一部です。この報告書は、2年間にわたる調査、インタビュー、事例研究をまとめたもので、「長く生き、学び、稼ぐ(LLEL)」イニシアチブの一環として実施されました。世界経済フォーラム、AARP、OECDの協力により、LLELは2018年の発足以来、さまざまな業界の世界的な雇用主50社で構成される学習協働ネットワークへと発展しました。参加企業は、優れた取り組みを共有し、現代の雇用主が長寿化を受け入れるべき理由と方法を理解することに取り組んでいます。

このイニシアチブから得られた主な知見は、活力ある多世代型労働力には明確な利点があることを示しています。社会全体の観点から、OECDは、年齢の多様な労働力がより効率的で生産的かつ収益性の高い経済を生み出し、今後30年間で一人当たりGDPを約19%押し上げると推計しています。
企業レベルでは、報告書は明確な競争優位性をいくつか示しています。高齢の労働者は、自らの経験や知恵に加え、スキルの適合、すなわち若手とベテランの従業員間で知識を共有することを通じてチームのパフォーマンスを高め、企業の生産性を向上させることができます。その結果、世代を超えた学習と協働が生まれます。さらに、高齢の労働者は若い同僚よりも他社へ移る可能性がはるかに低く、安定性と継続性をもたらします。
しかし、「長く生き、学び、稼ぐ」イニシアチブは、重要な点も明らかにしました。大半の雇用主は、年齢の多様な人材プールの構築にまだ本格的に取り組んでいません。多世代の労働力にどう投資できるかを考え始めた雇用主は多く、私たちの取り組みからは、年齢の多様な労働力戦略の基盤となる3つの領域が見えてきました。
あらゆる年齢層の人材を惹きつける
企業は採用時の年齢差別をなくすため、より一層取り組むべきです。OECDは、求人票に年齢に左右されない画像や表現を使い、応募書類の選別にはソフトウェアを活用することを推奨しています。柔軟な時期に労働市場から退くことができる段階的な退職制度を設け、従業員の定着を支援しましょう。調査によると、世界の労働者の57%は従来の退職年齢を超えて働きたいと考えていますが、フルタイムからパートタイムに移行できる人は3人に1人未満です。
包括的な職場環境をつくる
従業員のあらゆるライフステージに適した職場環境をつくりましょう。従業員の満足度を高める最も有効な手段の一つは、パンデミック中に多くの人が経験した柔軟な働き方です。人生のどの段階にいる労働者にも利用できる柔軟な勤務スケジュールを提供することは、従業員の満足度を保つうえで欠かせません。パンデミック後も選択肢として維持する必要があります。身体的な健康だけでなく、精神面や経済面のウェルビーイングにも焦点を当てたウェルネスプログラムに投資しましょう。従業員は、退職後の生活設計などの支援を含め、生涯にわたり企業がさまざまな形で支えてくれることを期待しています。
従業員のキャリアを通じてスキル向上と再習得を支援する
多くの労働者は新たなスキルを学び、仕事で成長し続けることを望んでいます。プライスウォーターハウスクーパースの最近の報告書は、退職年齢に近い人々が労働力にとどまるよう促すことで、OECD加盟37カ国の経済に3.5兆ドルを加える可能性があると推計しています。スキル向上と再習得は、多くの企業が取り入れている潮流です。しかし、若い従業員だけに限るべきではありません。誰もが継続して能力を高め、新しいツールの恩恵を受ける機会を持つべきです。
最後に、私たちの調査で得られた根本的な知見は、多世代の労働力は対立や競争を招くという一般的な固定観念に異議を唱える必要があるということです。LLELイニシアチブから得られた主な知見の一つは、異なる世代が共に働くことで、イノベーションが促進され、チームのパフォーマンスが向上するということでした。これは、世界経済フォーラムの『仕事の未来レポート2020』とも一致しています。同レポートでは、企業が成長を続けるために2025年までに最も必要とする15のスキルを、フォーラムが明らかにしました。
これらのスキルの多くは技術的なもので、若い労働者に結び付けられることの多い知識に重点を置いていますが、時間をかけて年齢とともに磨かれる傾向があるスキルも含まれています。批判的思考と分析、感情知能、説得力と交渉力です。
これらの取り組みを総合すると、明確な結論が見えてきます。多世代の労働力への投資は、企業にとって理にかなっています。パンデミック後の世界で経済成長を加速する方法を模索する今、年齢の多様性を推進することは単なる美談だという考えを改める必要があります。
職場の未来はすでに訪れています。多世代の労働力に真剣に投資する企業こそが、明日のイノベーターやビジネスリーダーとして最も有利な立場に立つでしょう。


