米国労働者の大半で、実質賃金は数十年ほとんど変わっていない

U.S. Dollar banknotes are seen in this photo illustration taken February 12, 2018. REUTERS/Jose Luis Gonzalez/Illustration
After inflation, wages have about the same purchasing power as they did 40 years ago.Image: REUTERS/Jose Luis Gonzalez/Illustration
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一見すると、米国の労働者にとって景気のいい時期のはずだ。米国の失業率は約20年ぶりの低水準にあり(7月時点で3.9%)、民間部門の雇用主は101か月連続で雇用を増やしている。大不況に伴う人員削減が2010年初めにようやく収束して以降、雇用は1,950万人増え、今年初めからだけでも150万人増加した。

しかし、労働市場が好調であるにもかかわらず、賃金の伸びは、経済学者の予想を下回っている。実際、ここ数十年に多少の上下はあったものの、現在の平均実質賃金(つまり、インフレを考慮した賃金)の購買力は、40年前とほぼ同じだ。これまでに生じた賃金上昇の大部分は、最も高賃金の労働者層に流れてきた。

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雇用市場と労働者の給与の隔たりは、州や都市で最近広がっている、最低賃金の引き上げをめぐる活動の大きな原動力となってきた。また、少なくとも、今年の連邦議会選挙運動の一部でも争点の一つとなっている。

連邦労働統計局のデータによると、7月の民間部門の非管理職労働者の平均時給は22.65ドルで、6月から3セント上昇し、前年同月の平均賃金を2.7%上回った。これは過去5年間の平均的な賃金上昇率に沿っている。2013年初め以降、前年同月比の上昇率は大半の期間で2~3%の範囲にある。しかし、2007~08年の金融危機直前の数年間には、平均時給が前年同月比で約4%上昇することも多かった。さらに、1970年代から1980年代初めの高インフレ期には、平均賃金が前年同月比で7%、8%、あるいは9%上昇することも珍しくなかった。

一方、インフレ調整後の現在の平均時給の購買力は、1980年代から1990年代初めにかけて長期的に落ち込んだ後、その後の不安定で一貫しない伸びを経ても、1978年当時とほぼ同じだ。実質ベースで見ると、平均時給は45年以上前にピークを迎えている。1973年1月に記録された時給4.03ドルは、現在の23.68ドルと同じ購買力だった。

同様の指標である、通常の週給(雇用されているフルタイムの賃金・給与労働者のもの)も、対象期間はより短いものの、ほぼ同じ状況を示している。季節調整済みの名目額で見ると、通常の週給の中央値は、1979年第1四半期(統計系列の開始時)には232ドルだったが、今年第2四半期には879ドルに上昇しており、大幅な増加に聞こえるかもしれない。しかし、実質額、つまりインフレ調整後で見ると、この期間に中央値はほとんど変わっていない。1979年の232ドルは、現在の840ドルと同じ購買力だった。

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一方、賃金上昇の大半は高所得層に集中している。2000年以降、通常の週給は、所得分布の下位10分の1に属する労働者で実質3%、下位4分の1では4.3%上昇した。しかし、分布の上位10分の1に属する人々では、実質賃金が累計15.7%上昇し、週2,112ドルに達した。これは下位10分の1の通常の週給(426ドル)のほぼ5倍にあたる。

もちろん、労働者への報酬は現金だけではない。健康保険、退職口座への拠出、授業料の払い戻し、交通費補助など、ほかの福利厚生も報酬に含まれる場合がある。しかし、賃金と給与は従業員報酬の最大の(約70%を占めると労働統計局は述べている)うえ、最も目に見える要素である。

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賃金の停滞は、これまで多くの経済分析や論評の対象となってきたが、予想どおり、その原因についての見解はほとんど一致していない(そもそも労働統計局のデータが実態を、十分に捉えているかどうかについても同様だ)。一つの見方として、福利厚生費、とりわけ雇用主が提供する健康保険の上昇が、雇用主の現金賃金を引き上げる能力や意欲を抑えている可能性がある。労働統計局が作成する報酬コスト指数によると、民間部門と公的部門を合わせた全労働者の福利厚生費総額は、統計系列が始まった2001年以降、インフレ調整後で22.5%上昇した。一方、賃金・給与コストの上昇率は5.3%だった。

ほかに要因として挙げられているのは、継続する労働組合の衰退、他国に比べて遅れている学歴の向上、競業避止条項などの転職を妨げる制約、就業も求職もしていない、公式に定義された労働力人口の外にいる潜在的労働者の大きな集団、製造・生産部門における雇用の広範な減少、そしてその結果としての低賃金産業への雇用増加の移行などだ。

賃金の伸び悩みと偏りは、米国で所得格差が拡大する主な要因として指摘されてきた。最近のピュー・リサーチ・センターの報告書は、国勢調査局の世帯所得データを分析し、2016年には所得分布の上位10分の1に属する米国人の所得が、下位10分の1の米国人の8.7倍だったと明らかにした(109,578ドル対12,523ドル)。分析対象期間の始まりである1970年には、上位10分の1の所得は下位10分の1の6.9倍だった(63,512ドル対9,212ドル)。

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