目標を達成してほしいなら、人々の自信を育むことに取り組みましょう。そう語るのは、ウォートン校の教授ケイティ・ミルクマンです。
このマネジメントのナノツールで、彼女は人の自信を育むための3つのステップを解説します。助言を求めること、成果が振るわない従業員にメンター役を任せること、そして成長マインドセットを促すことです。
あなたとチームがどのような目標に取り組んでいるにせよ、成功は、その目標を達成する能力をどれだけ信じているかに左右されることがあります。
目標
チームから必要な成果を引き出すために、自信を育む人になりましょう。
ナノツール
「できると思っても、できないと思っても、どちらにせよその通りになる。」—ヘンリー・フォード
ほとんどの管理職は、フィードバックを伝えるのを気が重いと感じています。称賛と批判を織り交ぜれば、チームメンバーが得意なことをさらに伸ばし、うまくいかなかった分野を改善できるとされています。しかし、研究によれば、実際にそうなることはほとんどありません(ナノツール「年次業績評価:廃止すべきか?」を参照)。著書『変わる方法』で、ウォートン校の教授ケイティ・ミルクマンは別の考えを示しています。目標を達成してほしいなら、人々の自信を育むことに取り組むのです。紀元前20年頃のウェルギリウスの言葉を借りれば、「できると思うから、できるのだ」。
スタンフォード大学の心理学准教授アリア・クラムらの科学者は、私たちが何が起こるかについて期待を抱くことができ、それがひいては何が実際に起こるかに、主に4つの形で影響を及ぼすことを示しています。第一に、信念は感情を変えます。前向きな期待はしばしば肯定的な感情を生み、それによってストレスの緩和や血圧の低下など、さまざまな生理的効果が得られます。そして、それがその後の展開を大きく左右することがあります。信念は注意の向け先も変え、途中で起こる小さな挫折や不便ではなく、目標に集中し続けられるようにします。さらに、信念が意欲を高め、生理機能にまで影響を及ぼすという証拠もあります。
一方、研究によると、変化する力が自分にあると信じていないと、変化に向けた進歩は小さくなります。管理職が、何がうまくいっていないのか、どう改善すればよいのかについて役立つと思う助言をすると、その信念が強まることがあります。善意の助言が、意図せず批判と受け取られ、自信を損なう可能性があるのです。
あなたとチームがどのような目標に取り組んでいるにせよ、成功は、その目標を達成する能力をどれだけ信じているかに左右されることがあります。以下の3つの行動ステップは、自信を育む人になる助けとなり、チームメンバーそれぞれの可能性を引き出します。
行動ステップ
1. 助言を求める。ノースウェスタン大学の経営学助教ローレン・エスクリース=ウィンクラーの研究によると、管理職が自分の助言を与える代わりにチームメンバーに助言を求めると、その人とその能力を信頼していることが伝わります。その結果、同じ質の助言を受け取った場合よりも、本人の意欲が高まります。じっくり考える時間がなく、その場であっても、人は自分自身が苦労している目標にうまく取り組む方法について、有益な洞察を生み出せます。そして、助言を与える行為は、助言する側自身の成果を高めることも実証されています。
2. 成果が振るわない従業員にメンター役を任せる。直感に反するように思えるかもしれませんが、低迷する成果を高められる可能性があります。アルコホーリクス・アノニマス(AA)のように、持続的な変化を助ける定評あるプログラムが、メンバー同士のメンタリングを奨励しているのは偶然ではありません。AAでは参加時に別のメンバーが「スポンサー」になりますが、スポンサーの役割は支援を受ける人の断酒を助けることだけではありません。スポンサーになることで、自信が高まることもあります。それだけでなく、目標達成に最善の方法を深く考えて助言できるようにすることや、他者に対して責任を負うことも、自分自身の決意を強めるはずです。企業や学校のメンタリング制度も、こうした追加的な効果を意図して設計されたかどうかにかかわらず、同じ二つの目的を果たします。
3. 成長マインドセットを自ら示し、ほかの人にも身につけるよう教える。成長マインドセットを持つ人は、知性を含めた能力は固定されたものではなく、努力が人の可能性に大きな影響を与えると理解しています。成長マインドセットを身につけると自信が高まり、挫折から立ち直りやすくなります。具体的な行動ステップは、ナノツール「マインドセットを変える:成果につながる問い」をご覧ください。
リーダーによる実践例
世界的に有名なヘヴィメタルバンド、ドリーム・シアターのリードドラマーであるマイク・マンジーニは、ほかのドラマーから助けを求められたことを通じて、スターになるために必要な自信を身につけたと語ります。マンジーニは1980年代、ソフトウェア技術者として働きながら、夜や週末に絶えずドラムを練習し、音楽界で大きく活躍することを夢見ていましたが、目標を達成できる望みはほとんどありませんでした。ところが、共有の練習スタジオにいたドラマーたちが、思いがけず彼にレッスンを頼み始めました。その依頼がマンジーニに新たな自信を与えました。多くの人が自分に特別な才能があると思っているなら、本当にそうなのかもしれない。そう考えた彼は本業を辞め、ドラムに専念しました。今では業界で最もよく知られるドラマーの一人です。彼は、自分の成功は少なからず、ほかの人に助言を求められたことによるものだと考えています。
ハーバード・ビジネス・スクールのジェシー・イシドール・ストラウス経営学教授、マックス・ベイザーマンは、メンタリングに関して数々の賞を受けています。成功の秘訣は3つあります。第一に、明確で率直な助言は控えめに、求められたときに限って伝えます。それよりも、学生自身が提案を共有する機会を設けることのほうが多くあります。第二に、より経験豊富なメンティーが、新しく指導を受ける学生と共同研究に取り組むよう強く勧めています。これは新入生と同じように、博士課程の上級生にも役立ちます。第三に、指導する学生一人ひとりが、「とても優秀」から「ずば抜けている」まで、際立った才能を持つという揺るぎない信念があります。競争の激しいキャリアにつきものの困難に直面しても、ベイザーマンの学生たちは、博士号を目指す多くの人を悩ませるような疑念に苦しむことがほとんどありません。彼らを信頼するベイザーマンの姿勢が、その理由です。
スーパーボウルとカレッジフットボールの全米選手権の両方で優勝した、わずか3人のコーチの一人であるピート・キャロルは、シアトル・シーホークスの選手たちが懸命に努力し、成長できると信じる姿勢で広く称賛されています。キャロルはキャリアの早い段階でパフォーマンス心理学を学び、選手の成長を重視しています。その取り組みは、選手の目に見える形での投資から始まります。健康とパフォーマンスを支える専門家チームを置き、ライフスキル・コンサルタント兼依存症カウンセラーや、ハイパフォーマンスを専門とするスポーツ心理士を配置しています。キャロルは前向きなエネルギーも重視しています。選手にはロッカールームに否定的な気持ちを残してくることが求められ、練習中であっても、成果を上げるたびにコーチたちが称賛します。選手同士も同じように互いを称えることが求められ、責任をなすりつけることは許されません。


