従業員が自ら業務を割り当てることを認める職場が増えている。
しかし、従来型の業務割り当てはいまなお主流であり、イノベーション集約型の分野でも引き続き広く行われている。
ここでは、業務の自己選択が管理者による割り当てを上回る条件を研究者らが調査する。
決め手となるのは専門性の高さ
職場のトレンドをめぐっては、さまざまな話題が世間の関心と議論を集めてきた。たとえば、ワークスペースの設計、デジタル化、アジャイル手法、そしてパンデミック期に注目されたリモートワークなどだ。しかし、組織設計においてますます重視されるようになっている、仕事の重要な側面がもう一つある。自己選択に基づく分業だ。
従業員と業務をマッチングするプロセスである分業は、組織において、つい最近まで管理者が主導するトップダウンの割り当てだった。今日では、従業員が自ら業務を選べるようになるケースが増えている。これは、アダム・スミスが不朽のものとしたピン工場の労働者たちとは大きく異なる。たとえば、ソフトウェア企業のValveやフランスの自動車部品メーカーFAVIでは、従業員が自らの適性判断に基づき、業務だけでなくプロジェクトチームも選ぶ。実際、多くのソフトウェア企業や階層構造が比較的緩やかな組織では、従業員のモチベーションを高める効果から、自己選択が標準となっている。
しかし、従来型の業務割り当てはいまなお主流であり、イノベーション集約型の分野でも引き続き広く行われている。どちらの仕事の分担方法にも、明らかに長所と短所がある。どちらをいつ適用するかを見極めることは、組織の業績や従業員の士気に直接影響しうる。
私たちが新たに発表した論文は、マッシモ・ワルリエンとの共著であり、モチベーション面の利点がない場合でも業務の自己選択が管理者による割り当てを上回る条件を検討した。それは、従業員の専門性が高く、業務同士が独立しており、従業員がいつ対応可能になるか予測できない場合だ。
自己選択が一般化するにつれて、私たちの知見は、この方法を目指す組織が自社に適しているかどうか、また、より適合するようどう修正できるかを判断する助けとなるだろう。
従業員と業務のマッチング
従来型の業務割り当てと比べて、自己選択には、従業員自身のスキルに関する理解を活用できる利点があることが、既存研究で明らかになっている。その理解は、しばしば管理者の理解を上回る。また、従業員が希望する仕事を選べるようになると、モチベーションも高まる。一方で、従業員は組織全体の目標を重視する管理者の視点を欠きがちだ。その結果、調整に支障が出ることもある。担当者が決まらない業務さえ生じうる。
二つのアプローチの違いがもたらす影響を理解するため、私たちは分業を従業員と業務をマッチングするプロセスとして捉える考え方を打ち立てた。次に、数学的モデルを構築し、コンピューターシミュレーションを用いて、どのような条件でそれぞれのアプローチが相対的な優位性を持つかを検証した。
管理者による割り当てでは、割り当てを行う側が、対応可能な従業員の中から、各業務に最も適したスキルを持つ人を選ぶと仮定した。自己選択では、すべての従業員が自分のスキルを最も生かせる業務を選ぶとした。
上司が割り当てたほうがよい場合
分業におけるよくある状況では、管理者による割り当てが自己選択を上回るのは明らかだ。たとえば、すべての業務と従業員が同時に対応可能で、全体を見渡せる場合、割り当て担当者は各業務に最適な従業員を配置し、人手不足を避けようとする。一方、従業員が自ら選ぶ場合、ほかの従業員のスキルや選択にはあまり注意が払われない。現実の例としては、決められたメンバーで新しいプロジェクトを立ち上げる状況が考えられる。
従業員の退職時など、業務がいつ発生するか予測できない場合、割り当て担当者は対応可能な人の中から最適な従業員を選べる。しかし、従業員がその仕事に自ら立候補できるようにすると、希望者が一部に集中する「殺到」が起こりうる。
従業員が異なるタイミングで、しかも予測できない形で対応可能になる場合には、自己選択が割り当てを上回る可能性がある。こうした状況で、自己選択に有利な方向へ流れを傾ける鍵となるのは、従業員の専門性の高さだと私たちは見いだした。
自己選択の決め手
私たちの計算によると、従業員の専門性が高い場合、自己選択によって、割り当てられた業務全体でのスキル水準という点で、組織の総合的な業績が向上する。従業員の専門性が中程度、あるいは低い場合は、管理者による割り当てが自己選択を上回る。
モチベーションや生産性を含む他の変数は、モデル内ですべて一定に保った。割り当て担当者と従業員は、業務に必要なスキルを同じ程度正確に評価できると仮定した。また、業務同士は独立しており、一度決まった割り当ては変更できないとした。
実務上、私たちの知見が示すのは、異なる専門性を持つ高度なスキルの従業員が多くいる企業では、希望する業務を本人に選ばせることが有益になりそうだということだ。仕事の質とモチベーションは全体として高まり、資格やスキルが劣る従業員が、より適任の従業員を業務から「締め出す」リスクも小さい。
たとえば、オランダで有名な看護組織ビュートゾルフでは、看護師12人の自律型チームが、在宅ケアから採用、事務、勤務調整、研修まで、すべての業務を管理し実行する。各看護師は自ら選び、活動のポートフォリオを「作り上げる」ことができる。一方、従業員のスキルが互いに似ている場合は、管理者が業務を割り当てるほうがよいかもしれない。
私たちの研究では、従業員が得意なことは本人がやりたいことでもあると仮定した。知見を他の変数にも応用できるだろう。
社交的な従業員には管理者による割り当てを行い、おしゃべり好きな人たちによる業務の集中を防ぐ。一人で働くことを好む従業員には自己選択を適用する。
人材層が薄い場合は管理者が割り当て、人材層が厚い場合は自己選択を適用する。
業務が相互依存しており、未割り当ての業務が一つでもあれば重大な問題につながりうる場合は管理者が割り当てる。独立して完結する業務には自己選択を適用する。
自己選択をより効果的にする
自己選択による分業は、仕事でより大きな裁量を求める若い世代が増えていることもあり、組織にとって重要性を増している。しかし、すべての業務や組織体制が自己選択に適しているわけではない。私たちの知見は、このボトムアップ型のアプローチが自社で機能するかを判断するための手段を企業に提供する。
組織が問うべき重要な点は次のとおりだ。現在の業務に対して、従業員は高度に専門化されたスキルを持っているか。業務同士はおおむね独立しているか。従業員がいつ対応可能になるか予測しにくいか。すべての答えが「はい」なら、自己選択を進めるとよい。
さらによい方法は、従来型の割り当ての要素を取り入れて自己選択のプロセスを修正することだ。いわばハイブリッド型のプロセスである。ビュートゾルフをもう一度例に挙げよう。人気のない事務作業を看護師間で公平に分担する手順が、明確に設計されていた。業務に担当者がつかない事態を防ぐ別の方法として、最も得意な業務を選ぶのではなく、最も価値を付加できる、または最も大きな変化をもたらせる業務を選ぶよう従業員に促すことができる。
つまり、従業員Xがすでに選んだ業務A(ソフトウェア開発のように、状況によっては同じ業務を複数回実行できる)を選ぶ代わりに、従業員Yはまだ選ばれていない業務Bを引き受け、より大きく貢献できる。たとえYの業務Aを遂行する能力がXより高くても、そうするのだ。
その他のハイブリッド型のアイデアとしては、従業員が自分で選んだ「情熱を注げるプロジェクト」に取り組めるよう促すことや、誰もがリストから課題を選んで解決できるハッカソンを定期的に開催することが挙げられる。どのような形であれ、分業は今も組織の業績にとって欠かせない。


