多国籍企業は世界規模で男女間の賃金格差にどのような影響を及ぼすのか

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• 男女間の賃金格差の是正は、ジェンダー平等の実現に向けた取り組みの中心課題であり続けている。

• 多国籍企業は賃金格差の形成に重要な役割を果たす。

• 先進国とは異なり、開発途上国では、多国籍企業で働く女性の賃金は国内企業で働く女性より低い。

世界経済フォーラムの『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2020』によると、男女平等の実現まで世界はなお約1世紀を要する見通しであり、ジェンダー不平等は今日、最も深刻な社会的不正義の一つとなっている。メリンダ・ゲイツ氏は最近、ジェンダー平等の推進に10億ドルを拠出すると表明した。これは2019年に出版した同氏の著書のテーマでもある。興味深いことに、ゲイツ氏とそのチームは、真の変化をもたらすには、職場で女性が直面する障壁と、ジェンダー平等の実現に向けた企業の責任に主眼を置くべきだと強調している。

男女間の賃金格差に関する統計

この課題の重要な側面の一つが男女間の賃金格差であり、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット8.5「同一価値労働同一賃金」にも掲げられている。世界では、女性の賃金は、同等の価値の仕事に対しても男性より平均で約20%低い。国や地域によって大きな違いがあり、男女間の賃金格差はルクセンブルクの3%から、韓国の驚くべき37%まで幅がある。世界で所得の平等を実現した国はまだない。

男女間の賃金格差は依然として大きく、特に子どもを持つ女性で顕著だ。Image: UN Women

したがって、男女間の賃金格差の是正は、世界的なジェンダー不平等を減らし、社会全体の持続可能な発展を実現するうえで欠かせない。こうした目標の達成に企業は決定的な役割を果たす。雇用を生み出す経済主体として、企業は採用や昇進の方針を直接定め、最終的には賃金格差を決定する。

グローバル化への関心が高まるなか、多国籍企業が事業を展開する地域の経済に及ぼす影響に注目が集まっている。そこで、私たちの最近の研究では、多国籍企業の男女間賃金格差を調べ、国内企業の格差と比較することで、多国籍企業がこの社会的不平等の是正により効果的に取り組んでいるかを検証した。私たちは、次の重要な問いへの答えを示したいと考えた。賃金の面で、女性は多国籍企業で働くほうが有利なのだろうか。

多国籍企業が男女間の賃金格差に及ぼす影響

13カ国の4万人を超える従業員の包括的なミクロデータを用いた結果、先進国では多国籍企業のほうが国内企業より男女間の賃金格差が小さい一方、開発途上国ではそうではないことが分かった。予想に反して、開発途上国では多国籍企業の格差が国内企業よりさらに大きかった。具体的には、先進国では国内企業の男女間賃金格差が多国籍企業より25%大きく、購買力平価換算の総時給で比較すると、-2.78ドル対-2.23ドルだった。一方、開発途上国では逆の結果となり、男女間賃金格差は国内企業ではなく多国籍企業で(大幅に)大きかった(-2.53ドル対-1.20ドル)。その差は開発途上国で際立っており、多国籍企業の格差は国内企業より110%大きかった。

この結果は、多国籍企業の国境を越えた事業活動がもたらす影響を、さらに慎重に評価する必要があることを示唆している。一方で、私たちの研究では、先進国では多国籍企業の男女間賃金格差が国内企業より小さいことが分かった。これは、多国籍企業が国際的な人事管理制度を高度に制度化していること、そして特に、そうした国々で「良き地球市民」としての役割や評判を重視していることの表れと考えられる。

男女間の賃金格差の大きさは、先進国と開発途上国で大きく異なる。Image: 国連

一方、開発途上国では、多国籍企業は国内企業よりも大きな男女間賃金格差と結び付いている。その理由の一つとして、先進国の投資家や取締役が大きな存在感を持つなかで、多国籍企業が主に採用するグローバルな人事管理制度が先進国の基準に収れんしてきた可能性が考えられる。つまり、先進国の女性の生活パターンが地域を問わず広く当てはまるとみなされているのかもしれない。たとえば、妊娠に伴う休暇や育児休暇などが挙げられる。

しかし、制度化された権利との関連が薄く、家族や社会における女性の役割に対する文化的な認識に関わる面では、国による大きな違いがある。たとえば、高齢の親の介護における女性の役割への期待は国によって異なり、海外出張や転勤に制約がある場合もある。これは多国籍企業で働く際に特に重要な点だ。したがって、先進国では多国籍企業の人事管理制度の標準化が進み、男女間の賃金格差の縮小に寄与したとみられる一方、私たちの研究結果は、ほかの状況ではそのような収れんのあり方が異なっていたか、まったく進まなかったことを示唆している。

世界経済フォーラムはジェンダー格差の解消に向けて何をしているのか?

私たちの研究は、多国籍企業が地域経済に及ぼす影響について、深く考察する必要性を訴えている。得られた結果から、こうした影響が常にプラスとは限らず、特に、多国籍企業が開発途上国で男女間の賃金格差を縮小するどころか拡大させていることが分かった。この点で多国籍企業は決定的な役割を担う。先進国だけでなく、開発途上地域でも、とりわけそこにおいて、この問題に取り組んでいることを示すのが、企業のリーダーたちの重要課題となるべきだ。

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