変化がどのように起こるか、その背後にあるシンプルなルールを理解すれば、企業はこれから直面する課題に対処できる。
1888年、フランスの化学者アンリ・ル・シャトリエは、システムが危機にあるときに当てはまる自然の原理を発見した。安定したシステムはどれも、元の状態を回復しようとして変化に反応する。言い換えれば、どのシステムも、最も混乱の少ない道を選ぶと彼は推論した。
この基本原理は、19世紀の化学の方向性を変えた。しかし、熱力学の法則に限った話ではない。システムや組織、チームがどのように変化を学ぶかを説明するものでもある。
なぜ変革するのか?
Google、Johnson & Johnson、Coca-Colaなどの組織と仕事をした経験から、今日の著名企業の多くが絶えず変化する状態にあることが分かった。従業員からは、常に変化と適応を迫られていると聞いている。数世代前であれば、彼らの先人が経験した組織全体の大変革は、ほんの数回にすぎなかっただろう。
多くの大企業は、急速な変革や新しい働き方の導入に慎重だ。彼らは抵抗し、その理由として一見もっともらしい説明をする。すなわち、実績のある成功パターンを維持することで成長できるというのだ。
「過去は現在を予測し、未来にも投影できる」と、彼らから何度も聞かされる。変化は常にトレンドに従ってきた。副社長がテクノロジーのツール群を刷新したり、CFOが新しい予測システムを導入したりするのは、出来事が過去に左右され、過去の結果として起こるからだという。支配的な世界観では、あらゆる出来事は物質的な原因にたどり着く。AがBにつながり、BがCにつながる。過去が現在を決める。彼らにとって、変化とは直線的で連続したプロセスなのだ。
しかし、変化のペースが加速し現状を覆しつつあると、この考え方は問題になる。
今日、変化は、これまで頼りにしてきたルールに従わない。S&P 500企業の存続期間の短縮、技術革新の指数関数的な進展、経済成長の加速は、いずれもかつてない速さで進んでいる。
私たちは今、第四次産業革命のさなかにある。グローバル化とデジタル化の進展により、相互依存と相互接続が深まっている。
今日の変化は、より速く、より複雑で、より激しく、予測しにくいだけではない。今日の変化は、これまで経験したどの変化とも異なる。
変化そのものが変わった。
今日の指数関数的な変化を前にすると、組織の変革に関する従来の知恵はほとんど役に立たない。かつて大きな成果を上げた概念、ツール、解決策が、今では組織に成長痛をもたらしている。3年の事業計画、年次予算、トップダウンの統制、絶え間ないメールや会議、硬直的な方針が、仕事を制約している。
多くの上級幹部は、もはや役に立たない働き方から抜け出せずにいる。新しいものや異なるものを、古くても信頼できるものとどう組み合わせればよいか分からないのだ。変革の構想は、また次のサイクルまで棚上げされる。
落とし穴を避ける
なぜ経営幹部が現在のやり方を変えようとするのだろうか。直近のプロジェクトの締め切りに対処する方が、はるかに重要だ。今四半期のKPIには、「新しい働き方」によるメリットが反映されていない。変革の計画は後回しにできる。組織の働き方に干渉すれば、変革への自然な抵抗が生まれかねない。意識的であれ無意識であれ、プロジェクトで何度も目にしてきたように、これが解決策を台無しにすることもある。
私たちの経験では、多くの組織やチームが、現状を永続させる信念を守ることで、自らの最善の意図を損なっている。
今日の課題に応えるには、最新の小手先の手法や教科書的な技法で実現できることをはるかに超える取り組みが必要だ。組織は、絶えず自らを再設計する運営モデルへと、全体を変革しなければならない。
この新しい考え方には、まったく新たな実践を取り入れ、自社や業界に固有の、これまでに蓄積された知恵を手放すことが求められる。
組織やチームを変える方法について、重要な原則やルールを深く理解すれば、変革を持続させられる。
私の経験では、3つのシンプルなルールを複数のチームで取り入れると、大きな成果が得られる。
これらのルールがチームの働き方に重大な影響を与えることは、結果が示している。組織がプロジェクトや業務の流れを調整し、仕事を前進させる助けとなる。
一方、これらのルールを導入すると、従業員が情報共有や意思疎通にかける時間が大幅に減る。状況把握に費やす時間が減り、仕事に使える時間が増える。Slack、Trello、Google Driveなど、広く使われるツールによって、あらゆる種類の協働が可能になった。
他方、これらのルールは、判断に伴うリスクや複雑さに応じて、組織の意思決定を分散させる助けにもなる。これにより、より若手の従業員が意思決定できるようになり、自信が深まり、当事者意識も生まれる。
こうしたシンプルなルールは、自明ではない。導入しても、チームや組織ですぐに成果が出るわけではない。むしろ、上級幹部やチームが新しい体制を試し、最終的に行動変容につなげるための指針として活用するのが最適だ。

1. 全員が継続的かつ参加型で変革する
さまざまな業界、地域、規模の企業における成功事例は、組織のどの部分にも、円滑に機能するために必要な頻度で、形成、解体、再形成を行う力があることを示している。新たなデータが現れ、新しい実験から成果が得られることもある。チームメンバーは特定の会議で課題を提起し、組織の目的達成を妨げている障害を取り除く手助けができる。
継続的で参加型のガバナンスを習慣として取り入れたチームは、絶えず素早く「探り、感知し、対応する」。大胆で強い直感を活用して、問題を定義し、合意できる解決策へと導く。
これは変革管理と戦略に重大な示唆をもたらす。第一に、分析が行動に先行することはできない。問題と解決策は一緒に進化する。不確実性の中で前進する賢明な方法は、直感を形にし、実験し、創造的な仮説を検証することだけだ。第二に、小規模で安全に試せる調整を重ねれば、変革に伴う苦痛や困難を大幅に軽減できる。
これは、複雑で不確実、かつ変化の激しい環境で前進するための方法であり、ビジョンでもある。
詳しくは、こちらの継続的で参加型の組織再編に関するホワイトペーパーをご覧ください。
2. 複雑系と煩雑なシステムを区別する
複雑性とは何か。そして複雑系はどのように変化するのか。
煩雑なシステムと複雑系の違いを尋ねると、ほとんどの上級幹部は同じ答えをする。複雑と煩雑は同じ意味で使える、というのだ。それは違う。
複雑適応系と煩雑なシステムは同じように見えるかもしれないが、進化の仕方や周囲の環境との相互作用の仕方は異なる。
腕時計、自動車のエンジン、コンピューターソフトウェアのような煩雑なシステムには、多くの部品と因果ループがある。適切な知識があれば、専門家は最終的にその扱い方を理解できる。ひげぜんまえを交換する、ピストンに手を加える、コードを一行追加するといった操作は、明確な結果をもたらす。各入力とその結果としての出力は、追跡できる。
都市、天候、朝のラッシュアワーのような複雑適応系は、状態依存型のシステムだ。多くの主体、入力、相互依存関係があり、そのどれかを調整するだけで混乱が生じることがある。
複雑なものは調整したり、刺激を与えたり、研究したりできるが、何がどのように起きているのかを理解することはできない。煩雑なシステムの場合のように、特定の入力にどう反応するかを正確に予測することも、まずできない。
ここまで読めば、組織は複雑系だということに、ほとんどのリーダーが同意するだろう。それでも私たちは、組織が煩雑なシステムであるかのように振る舞い、設計し、関わり、変革し続けている。
私たちは組織を、直線的な結果につながる直線的なものとして扱っている。
大企業の最高経営責任者が、組織の周縁で何が起きるかを制御できるという考えは、部分的に誤っている。
複雑系におけるリーダーシップとは、実験に心を開くことだ。新しいアイデアを試し、起きたことを振り返り、チームとして学び、組織にも学ばせ、やがて適応する。
複雑系の働き方のすばらしい点は、高い適応力を持ち、素早く学び、環境に応答できるようになることだ。
煩雑さと複雑性の違いを忘れず、組織の変革に取り組む際に、より適切に活用する必要がある。さまざまなチーム、業務の流れ、個人を再編し、新たな役割を与えるときには、特に重要だ。
このテーマについて生き生きとした議論を聞くには、こちらのDeutsche Telecomの講演をご覧ください。講演者はNiels Pflaegingです。
3. 主にデジタルチャネルで、オープンなコミュニケーションを基本とする
私たちのクライアントの多くは、まずメールを使う。つまり、業務の相談、ワークフロー管理、文書共有、協働のすべてが同じプラットフォームで行われる。メールの管理はありふれた作業となり、勤務時間中もその後も何時間も費やされる。その間にプロジェクトの締め切りは先延ばしになり、従業員は即時の返信を求められる負担とプレッシャーを感じる。受信トレイを空にすることが至上の目標となり、実際の仕事から注意をそらすプロセスが生まれている。
情報をオープンに流通させ、非同期でコミュニケーションを取ることは、ニーズや問題の発生に応じて対応できる、機動的なチームに不可欠だ。チームをメールから離し、目的に合ったプラットフォームに移行すれば、より効果的なコミュニケーションが可能になる。
すべてを中断して電話に出たり、会議に出席したりする必要がなくなる。ビデオ会議、チャンネルベースの会話、プロジェクト管理、進捗追跡が、日常的に使う手段となる。
私たちの経験では、組織のITセキュリティシステムの範囲内で、業務のリズムを支える現在のプラットフォーム(Office365、SAP、Salesforce、Oracle、IBMなど)を使えば、これを実現できる。
情報共有やコミュニケーションの方法を改善すれば、メールの泥沼から抜け出し、今日の変化のペースに合った健全な組織運営を実現できる。
今日の組織に適したツールについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。著者はSpencer Pitmanです。
私の経験では、多くの組織が上記3つのルールを何らかの形で実践し、ある程度の成功を収めながら変革を乗り越えてきた。Favi、Buurtzorg、Netflix、Zappos、SEMCO、Spotify、Patagonia、Morningstar、HAIERなどが共有している事例を見てほしい。
変化は誰にとっても恐怖を呼び起こす。未知への恐怖、失敗への恐怖、新しい秩序の中で自分が必要とされなくなることへの恐怖だ。
それでも、思い切って踏み出さない限り、組織を変えることは困難に思えるままだ。この3つのルールは、足元を固め、不確実性の中で前へ進む道を探る助けとなる。
この記事で述べられている見解は著者個人のものであり、The Readyの見解を示すものではない。


