新型コロナウイルス感染症の流行前から、燃え尽き症候群は「エピデミック」と呼ばれていました。
仕事上のミスにつながり、退職を考えるきっかけとなるほか、うつ病や睡眠障害、心血管疾患など、さまざまな健康問題との関連も指摘されています。
しかし、組織構造や職場文化を変えることで、燃え尽き症候群は予防・軽減できます。
ウォートン校の経営学教授が、燃え尽き症候群の予防に役立つお気に入りのモデルを紹介します。
目標
3つの効果的なアプローチで、感情的な疲労を軽減する。
ナノツール
パンデミック以前から、燃え尽き症候群はエピデミックと呼ばれていました。これは、疲弊させ、仕事の遂行能力を損なう、持続的な仕事関連のストレスです。米国では、従業員の半数以上が少なくとも時折、燃え尽きを感じており、最近「静かな退職」と呼ばれる現象につながることもあります。これは、無関心や疎外感として表れる、仕事への関与の低下です。燃え尽き症候群は仕事上のミスや退職を考えることにつながり、組織内で広がる可能性もあることが、証拠から示されています。また、うつ病、記憶力の低下、睡眠障害、免疫機能の低下、心血管疾患との関連も指摘されています。推計によると、米国だけでも年間の医療費を1,000億ドル以上押し上げています。
燃え尽き症候群は頭の中の問題ではなく、置かれた状況の問題です。ストレスは避けられないかもしれませんが、燃え尽き症候群は、高いプレッシャーのかかる仕事であっても予防・軽減できます。そのためには組織構造や職場文化の変革が必要です。私のお気に入りのモデルは、要求・裁量・支援です。
要求:業務を担う人の負担を軽くしたり、作業を再配分したりするために、組織構造を変えます。
裁量:要求をなくせない場合でも、それに対処するために必要な自律性とスキルを人々に与えることはできます。
支援:助けを求め、受け取りやすい職場文化をつくります。
具体的な取り組み
私のWorkLifeポッドキャストのエピソード「燃え尽き症候群は誰にとっても他人事ではない」では、リーダーや従業員が燃え尽き症候群に対処するため、要求・裁量・支援のモデルをどのように活用しているかを取り上げました。
1. 要求:職務の中で最も消耗の激しい要素を特定し、軽減する方法を探します。自動化できる作業があるかを検討しましょう。残業や、連絡可能な時間・メールに関する期待が燃え尽き症候群の原因となっている場合は、組織またはチームのレベルで対処します。プロジェクト管理ソフトやタスクボードを使うと、メールの送受信を減らせます。また、管理職が「オフィスアワー」を設ければ、何度もやりとりを重ねる必要がある事柄について、従業員が話し合えるようになります。
2. 裁量:自分の目標を設定する、達成に最適な方法を選ぶ、難しい作業に対処する力を高める研修を決めるといった場面に、人々の参加を促すことが考えられます。組織によっては、勤務時間の柔軟化やハイブリッド勤務を認めることで、一定の裁量を与えられます。
3. 支援:必要な種類と量の支援を提供し、従業員がそれを活用するよう促すには、職場文化の変革が必要です。リーダーが自分の課題を率直に話し、助けを求めれば、苦労することが当たり前になり、支援を求めるのは弱さの表れではなく強さの源だと示せます。さらに、病院で他の看護師を支援する看護師指導者のように、支援を担う役割を明確に設けることで、人々はより気軽に助けを求められます。
燃え尽き症候群は頭の中の問題ではなく、置かれた状況の問題です。
リーダーによる活用例
クリーブランド・クリニックでは、仕事上の負担となるストレスの原因と、その軽減策を特定するためのタスクフォースが設置されました。その結果、電子カルテの運用方法が見直され、医師やその他の医療従事者が情報の入力に費やす時間を減らし、患者と過ごす時間を増やせるようになりました。
フィラデルフィアの高校教師だったコンリー・キャラハンは、燃え尽きかけていました。勤務先の学校は資金難に陥り、生徒の約半数が卒業前に中退していました。週に約100時間働きながら、彼女は成績優秀な低所得世帯の生徒を対象とするメンタリング・プログラムの地域支部を立ち上げ、その後、自らメンターを務めました。一見、逆効果のように聞こえるかもしれません。しかし、意欲の高い生徒たちと関わることで、彼女は自分が状況をコントロールできるという感覚を取り戻し、効力感の回復によって、その後数年間も仕事を続ける意欲が湧きました。
海上の石油掘削施設で働く人々は、新たな支援文化を取り入れることで、ミスを減らし、同僚の安全とウェルビーイングを高めてきました。男性的な強さや大胆さ、技術力を示すことへの報奨を続ける代わりに、今では助けを求め、提供すること、ミスを認めてその原因(不安やストレス、経験不足など)を探ること、そして互いを公に認め、称賛することが奨励されています。


