何十年もの間、経済的不平等の主な要因は階級であり、人種など格差を生むほかの要因の役割は小さいと主張する声が、ますます大きくなってきた。人種間の不平等に注目するのは逆効果であり、代わりに、米国の貧困層全体と、ますます富を増すエリート層との間の不平等を考えるべきだという。新たな研究(PDF)は、スタンフォード大学、ハーバード大学、米国国勢調査局の経済学者らによるもので、この考えに異を唱えているようだ。
米国の子どもと親、2,000万人の世代間経済移動に関するデータを分析したこの論文は、主に黒人と白人の米国人の間に見られる人種的不平等について、階級では格差を説明できないことを示している。
この調査結果は、機会平等プロジェクトによるもので、スタンフォード大学の経済学者ラジ・チェティ氏が主導した。同プロジェクトは、黒人の少年の将来の見通しについて、とりわけ厳しい結果を明らかにした。裕福な家庭の出身であっても、黒人男性は、より貧しい家庭で育った白人男性と比べて、低所得層に入る可能性がはるかに高い。
この研究は、1978年から1983年に米国で生まれた子ども、または子どもの頃に米国へ移住した在留資格のある移民を対象とし、現在30代後半の米国人のほぼ全員を網羅している。教育、家庭環境、近隣地域、生まれ持った能力などが格差の原因だとする、人種的不平等をめぐる長年の仮説の多くを検証した。報告書の主な結論の一つは次のとおりだ。
所得、資産、教育水準が同程度の両親のもとで育った黒人男性と白人男性の結果を比べても、黒人男性の成人後の所得は依然として大幅に低い。
下方への流動性
調査によると、米国のヒスパニック系住民は世代を超えた所得の上昇移動率が高く、白人の米国人との所得格差を縮める方向に進んでいる。
しかし、黒人の米国人(およびアメリカ先住民)は、上方への移動率が低いだけでなく、下方への移動率も高い。このことは、広く、根強い所得格差を時間をかけて縮めることが、現時点では手の届かない目標であることを示している。
たとえば、世帯所得が最下位の五分位(最も貧しい20%)に属する親のもとに生まれた黒人の子どもが、世帯所得の最上位の五分位(最も豊かな20%)に上がる確率はわずか2.5%だ。白人の場合は10.6%である。一方、所得が最上位の五分位に属する親のもとに生まれた黒人の子どもは、成人後も最上位にとどまるのとほぼ同じ確率で最下位に転落する。最上位の五分位に生まれた白人の子どもは、最下位に転落する場合に比べ、そこにとどまる可能性が約5倍高い。
とりわけ黒人の子どもにとって、階級上の地位は確かなものではなく、将来の繁栄を保証するものでもない。
この研究によると、黒人と白人の所得格差は女性ではなく、男性の結果の違いによって全面的に生じている。所得が同程度の家庭で育った黒人女性は、白人女性よりわずかに多く稼いでいる。対照的に、黒人男性は、親の所得が同程度の白人男性より「大幅に」所得が低かった。
男性では、この格差は高校卒業率、大学進学率、収監率にも表れている。なかでも収監率は深刻な懸念材料だ。最も所得の低い家庭に生まれた黒人男性の21%が、ある時点で収監されており、他のどの集団よりもはるかに高い。
米国の99%
地理的な要因による違いはほとんどない。報告書によると、「米国の近隣地域の99%で、黒人の少年は成人後、同程度の所得の家庭で育った白人の少年よりも所得が低い」。同じ街区で育った子ども同士でも同じだった。著者らは、学校の質など、近隣地域単位の資源だけでは世代間の平等を説明できないことが示されたとしている。
経済的な流動性の乏しさと人種間の格差は、異なる二つの米国の姿を浮かび上がらせる。貧困率が低く、試験の成績が高く、大学卒業者の割合が大きい「良好な」近隣地域では、黒人と白人の双方で上方への移動率が高い。しかし、その差は実際には他の地域より広い。つまり、こうした地域で育つことで得られる恩恵は、黒人の少年より白人の少年のほうが大きい。
世代間の結果における黒人と白人の格差を小さくする環境もある。貧困率が低く、白人の人種的偏見が少ないこと、そして黒人の間で父親がいる割合が高いことが重要な近隣地域だ。(父親は必ずしも子ども本人の父親である必要はなく、地域社会に父親がいればよい。)
報告書の著者らによると、幼い頃にこうしたより恵まれた地域へ移った黒人男性は、成人後の所得が高く、収監率が低い。問題は、現在、貧困率が10%未満で、父親がいる家庭の割合が半数を超える地域で育つ黒人の子どもは5%未満であるのに対し、白人の子どもでは63%に上ることだ。
スタンフォード大学のチェティ氏は以前、機会平等プロジェクトが、より適切な政策判断に役立つデータを提供できるようにしたいと述べている。政策は理論に基づいて策定されることがあまりにも多いが、今日では公的・民間の膨大なデータによって、実際の証拠に基づく公共政策を立案できるはずだ。同プロジェクトはすでに、「失われたアインシュタインたち」、すなわち、異なる近隣地域で育っていれば革新者になっていた可能性のある数百万人を調査し、格差の拡大がアメリカン・ドリームの終焉につながっていることを示した。
米国の人種間の経済格差を縮めるには、黒人男性の上方への移動を促すことに特化した政策が必要だ。報告書によると、一時的な現金給付、最低賃金の引き上げ、ベーシックインカム制度など、一世代の不平等を減らす政策だけでは、長期的に格差を縮めるには不十分である。学校や住宅の分離を減らしても、学校や近隣地域での統合を進めなければ効果はない。むしろ、黒人の少年を対象とするメンタリング、白人の人種的偏見を減らす取り組み、刑事司法制度における差別を減らす介入など、対象を絞ったプログラムに最も期待が持てる。







