LinkedInのチーフエコノミスト、カリン・キンブロー氏が、今年の従業員の離職と採用について、短いながらも貴重な見解を示す。
2022年を新たなスタートとする人も多い一方で、雇用をめぐる苦労の多くは今年も続きそうだ。
オミクロン株とデルタ株が世界各地で広がり続けるなか、こうした問題はさらに悪化する可能性さえある。
どの角度から見ても、2021年は厳しい年だった。管理職にとっては、チームの意欲を保つことが難しかった。従業員にとっては、ただ出勤することが難しかった。親であっても大変だった。エッセンシャルワーカーであっても大変だった。では、大変ではなかった人などいただろうか。
2022年にはすべてが新たなスタートを切ると言えればよいのだが、オミクロン株とデルタ株が猛威を振るい続けるなか、同じ課題の多くはしばらく残るだろう。
よく言われるように、ビジネスは続けなければならない。従業員の仕事への意欲の低下、離職、人手不足、サプライチェーンの問題に続いて、採用も必要になる。
2022年の採用はどうなるのか。誰が仕事に就くのか。賃金はどうなるのか。そして今、従業員の意欲を高めているのは何だろうか。
LinkedInのチーフエコノミスト、カリン・キンブロー氏が、従業員の離職と採用についての予測を語った。
米国の労働者は新たな仕事を探す際に選り好みできる
米国人は記録的な割合で仕事を辞めた。2021年には、月ごとの離職率が過去最高を記録した。キンブロー氏によると、特に小売、レストラン、接客業など、同氏が「最前線の仕事」と呼ぶ分野で顕著だった。こうした人々の多くがすぐに労働市場へ戻っていないのも事実で、ここに「大量退職」の考え方が関わってくる。
しかし、より良い仕事に就くために辞める人も多いとキンブロー氏は説明する。ここで「大転職」の考え方が関わってくる。パンデミックが最も深刻だった2020年には起きなかったが、労働者が何をするか、何をしないかを慎重に選ぶようになり、求人が大幅に増えた今になって起きている。
米国労働統計局の11月のデータによると、米国では求人1件当たりの失業者数が1人を下回り、正確には0.7人だった。つまり、求職者よりも仕事のほうが多い。
そのため求職者は応募する仕事をかなり選べる。通常、より高い賃金や優れたキャリアの機会が得られる場合に限って、転職する意思がある。
「次のわずかな昇給を得るために、人々がどんどん短い間隔で仕事を辞めるような、異常で誇張された循環に入っているとは思いません」とキンブロー氏は述べた。ただし、転職のペースが高まった状態はしばらく続くと考えている。
「留保賃金」は上昇する
ある程度、昨年は誰もが同じ問いを自分に投げかけていた。人生とは何なのか。
人々は、時間はどれほどあるのか、本当に望むとおりに時間を使えているのかと考えた。仕事についても、なぜ通勤に2時間かけるのか、なぜ一緒に働きたくない人たちと働くのか、といった問いを抱いた。経済的な要因も関係した。住宅価格が上昇するなか、余裕のある人々は、なぜ退職したり、しばらく休んだりしないのかと考えた。裁量の小さい最前線の仕事に就く人々にとっては、尊厳や柔軟性、時間をより自分で管理することが主な関心事だった。
そこで登場するのが、留保賃金だ。
これは、労働者が労働市場に参加するために受け入れる最低賃金のことだ(最低
賃金と混同してはならない)。新型コロナウイルス感染症と、それが引き起こした問いによって、労働者は留保賃金をこれまでとは違う形で算出するようになった。
キンブロー氏はこう語った。「新型コロナの影響で、従業員は自分の人生をより大切に考え、働くことのリスクを新たな観点から評価するようになりました。突然、魅力が大きく薄れた仕事もありました。その結果、留保賃金が上昇したのです」
米国の賃金は今後も上昇する
「少なくとも今年は、従業員や求職者の希望や要望に、雇用主がより応えるよう求める圧力が高まるでしょう」とキンブロー氏は述べ、従業員をつなぎ留める取り組みの兆しとして、昇進率の上昇を挙げた。
今年も賃金上昇圧力が続く形で、そうした動きが見られるでしょう、と同氏は述べた。米国労働統計局(BLS)の最新データによると、平均時給は4.8%上昇した。
リモートワークは今後も従業員に重視され、採用にも役立つ
キンブロー氏によると、リモートワークは、雇用主が従業員に提供する「さまざまな条件」の一つだ。勤務時間や働く時間帯の柔軟性に加え、少し仕事を離れても世界が崩壊するわけではないという意味での、仕事と生活のバランスも含まれる。
ただし、リモートワークは特に重要とみられる。パンデミック以前は、LinkedInの米国求人では、リモート勤務が可能な仕事は67件に1件だった。現在はおよそ6件に1件だとキンブロー氏は述べる。求職者がリモート勤務の仕事に応募する可能性は、そうでない仕事に比べて「2.5倍高い」と同氏は言う。
雇用主にとっても明らかな利点がある。キンブロー氏によると、職種がリモート勤務に対応できれば、採用担当者ははるかに広い地域から人材を探せる。これは、より多様な人材や、見つけにくいスキルを持つ希少な人材を引きつけたい雇用主にとってプラスとなる。
もちろん従業員にとっても、今では「ある場所に住みながら、実質的には別の場所で働けます」とキンブロー氏は述べ、それは「非常に魅力的」だと付け加えた。
最も需要の高い仕事のスキル:デジタルと、何より人間らしさ
最も需要の高いスキルを尋ねられたキンブロー氏は、二つの分野を挙げた。
今や、デジタルスキルが何らかの形で求められない職種を見つけるのは難しい、と同氏は言う。これには、一般に「デジタル」とは考えられていない仕事も含まれる。倉庫で在庫全体を確認する携帯端末を使って働くこともあるだろう。あるいは看護師として、記録の管理や患者の状態の確認にテクノロジーやソフトウェアを使うこともある。
二つ目の需要の高いスキル分野は、ある意味で習得がより難しい。ロボットやAIには担えず、教えることも容易ではないスキルだからだ。共感力、判断力、リーダーシップなどがこれに当たる。
「人を導いて身につけさせることはできますが、訓練で習得させるのは難しいのです」とキンブロー氏は述べた。だから、思いやりと理性を備え、生まれ持ったリーダーシップの資質もある従業員を見つけたら、手放さずにいよう。できることなら。


