コンパスを見ると、かつて北を指していた針の赤い部分が、今では反対方向に振れている――そんな光景を想像してみてください。
恐ろしく聞こえるかもしれませんが、これはいずれ起こる現実の現象です。有害な太陽放射から地球を守る重要な盾として働く地球の磁場は、地球の歴史を通じて何度も反転してきたことが、地球物理学者の間で長く知られています。直近の反転は78万年前に起きており、次の反転が起きてもおかしくない時期を過ぎていると考える科学者もいます。
新たな研究は、磁場の将来について高い確度で予測しています。利用可能なすべての古地磁気データ(過去200万年間に岩石に記録されたデータ)を使い、研究チームは、その期間に起きたすべての反転を正確に予測し、将来について現実的な予測を可能にする数学的枠組みを構築しました。
この研究は、学術誌『Physics of Earth and Planetary Interiors』に掲載されています。
「私たちの手法の独自性は、簡略化した数値モデルと高度な手法を使って、モデルとデータを組み合わせる点にあります」と、アリゾナ大学数学科の助教で、この研究の筆頭著者であるマティアス・モルツフェルト氏は述べます。「私たちの計算によると、今後4,000年間は反転を心配する必要はありません。」
地球の磁場は、惑星の核における液体金属の非常に複雑な流れによって生み出されるため、教科書でおなじみの、北極と南極が1つずつあり、その間に目に見えない磁力線が走るという図よりも、はるかに複雑です。実際には、ほかにも極の成分がありますが、その強さは、私たちの多くがよく知る2つの極に比べてずっと弱いものです。
「磁場の反転が起こることは分かっています」とモルツフェルト氏は言います。「しかし、何がそのような事象を引き起こすのか、反転の最中に何が起こるのかは、誰にも分かっていません。たとえば、磁場は完全に消失するのでしょうか。それとも形が変わるのでしょうか。」
現在唱えられている、互いに競合する理論によると、地球の磁場が一定のしきい値を下回るほど弱まった場合、あるいは強度が急速に低下した場合、反転が差し迫っているとされます。現在の磁場は強い一方で急速に弱まっているため、これを反転が間近に迫っている兆候と見る科学者もいれば、反転するには磁場が強すぎると考える科学者もいます。

「簡略化した模式図」
モルツフェルト氏の研究チームは、岩石の磁化を調べて得た地球物理学的データと簡略化した数学モデルを組み合わせ、どちらの理論がより正しい可能性が高いかを明らかにしようとしました。
「過去数十年間の詳細なデータや、過去数世紀にわたる船舶による測定値があります。しかし、それより古い時代については、岩石を調べるしかありません」とモルツフェルト氏は言います。「岩石の磁化から磁場について何かを知ることができます。そのため、磁場の強さや構成を示す200万年分のデータがあるのです。」
地球の磁場を生み出す極めて複雑な過程を計算しようとする代わりに、モルツフェルト氏と共著者たちは、ノートパソコンで実行できるほど単純なモデルを使い、過去200万年間のデータを入力しました。この期間には、7回の反転が起きています。
磁場を生み出す液体金属の流れを現実に即して数学的に記述するには、数百万もの方程式が必要となるため、数百万年にわたる過程を忠実に表現できるコンピューターはありません。しかし、数学モデルは、有用であるためにそれほど複雑である必要はないのかもしれません。
「低次元モデルを使えば、惑星内部で起きていることを簡略化した模式図のように表現できます。そのうえで、非常に高度で最新のアルゴリズムを適用し、モデルと地球物理学的データを組み合わせることができます」とモルツフェルト氏は言います。「これにより、計算に必要なモデルの規模を少し抑え、データとの統合により多くの計算資源を割り当てられます。」
過去のデータで予測を検証
次に研究チームは、過去予測と呼ばれる手法を使ってモデルを検証しました。
「地球物理学的記録のデータでモデルを調整した後、そのデータを使うのをやめます」とモルツフェルト氏は説明します。「次に、過去の任意の時点を選んで予測します。モデルが過去に起きたことを正確に予測できたと分かれば、ある程度の確信をもって将来も予測できると考えられます。」
検証した複数のモデルの中から、特に単純で強力なモデルが1つ見つかり、過去200万年間に起きたすべての磁場反転を正しく予測しました。このモデルは3つの方程式を用います。双極子を記述するもの、非双極子磁場を記述するもの、そして核内部の流れの影響を表すものです。
「反転が今後20億年以内に起こると言っても、あまり意味はありません。明日反転すると言っても、同じくあまり意味はないでしょう」とモルツフェルト氏は説明します。「こうした単純なモデルで予測できる、意味のある期間を見つけようとしたところ、それは約4,000年でした。」
興味深いことに、研究者たちは、磁場反転の引き金となる強度のしきい値、いわゆる「後戻りできない点」が存在するという説を支持する証拠を見つけませんでした。しかし、モデルを使って計算した確率については、信頼できるしきい値を見いだしました。
「モデルと数学的枠組みによって、『4,000年以内に反転が起こる』といった事象の確率を計算できます。計算した確率がしきい値を超えれば、実際に反転が起こる可能性が非常に高いことが分かりました。」
何が起きると予想されるのか
地球では平均すると25万年ごとに磁場の反転が起きてきましたが、その間隔は大きくばらつきます。では、いよいよ反転が起きたとき、人類には何が予想されるのでしょうか。
「磁場は非常に弱くなるでしょう」とモルツフェルト氏は説明します。「しかし、その後に何が起こるかは誰にも分かりません。磁場の形が変わり、双極子から四重極の構成に移るだけかもしれません。磁場が完全に崩壊する可能性もあります。その場合、地球が太陽風にさらされ、衛星などに影響が及ぶため、かなり深刻でしょう。一方で、磁場の反転はこれまでも起きており、地球上の生命は生き延びてきました。」
この研究は、パリ地球物理学研究所のアレクサンドル・フルニエ氏およびゴーティエ・ユロ氏との共同研究として実施され、アリゾナ大学グローバル・イニシアチブの「国際研究開発助成金」と全米科学財団から一部資金援助を受けました。
