空の旅の未来は……ペーパーレス。世界経済フォーラムが打ち出した取り組みにより、そうなる見込みだ。
Known Traveller Digital Identity(KTDI)プログラムにより、人々は書類を携帯せずに国際線で渡航できるようになる。この制度の試験が進められており、実証プロジェクトに参加する旅客は、パスポートの代わりに携帯電話を使ってカナダとオランダの間を移動できるようになる。
世界的に、旅客数の増加が空港の処理能力の伸びを上回り、航空システムへの負荷が高まっている。KTDIは、空港を通過する旅客の流れを速め、国境を越えた身元詐称のリスクを減らすことを目指す。
「2030年までに、国際線の到着旅客数は18億人に達し、2016年から50%増加すると予測されています。現在のシステムでは、空港はこの成長に対応しきれません」と、世界経済フォーラムのモビリティ部門責任者、クリストフ・ヴォルフ氏は述べる。「このプロジェクトは解決策を提示します。相互運用可能なデジタルIDやその他のKTDI技術を活用し、安全で円滑な旅行を実現する包括的な答えを旅客に提供します。これが航空とセキュリティの未来を形づくるでしょう。」
流れをスムーズに
参加空港に到着する旅客は、パスポートのマイクロチップではなく、携帯電話に暗号化した身元情報を保存しておく。
旅客が空港に到着する前に、関連情報が航空会社や国境当局などに送信される。データを送信するたびに本人の同意が必要となるため、既存のパスポート制度よりも個人データを自分で管理しやすくなる。
指紋認証や顔認証などの生体認証技術を使えば、旅客は出発手続きから搭乗、目的地到着まで、円滑でペーパーレスな移動を実現できる。
画期的な節目
KTDIプログラムの試験は2019年を通じて実施され、デジタル記録を用いた最初の出発地から目的地までの一貫した旅程は、2020年に実現する見込みだ。
世界各地の空港で旅客の流れを速めれば、今後数年間に急成長が見込まれる航空業界の負担を和らげられる可能性がある。

上のグラフが示すように、国際観光客の到着数は今後10年間で大幅に増加する見込みだ。
成長が最も著しいのは、アジア、ラテンアメリカ、アフリカ、中東の新興国と予測され、2030年には国際到着数全体の57%を占める見込みだ。
KTDIプログラムは、旅客数の増加への航空業界の対応に役立つ可能性がある。しかし、世界規模でペーパーレス旅行を導入するには課題もある。
成功には、世界各国の政府、テクノロジー提供企業、航空業界、国境当局などが協力し、すべての関係者が遵守する世界共通のセキュリティ基準とデータ保護基準を確立することが欠かせない。
この実証計画は、カナダとオランダの関係者による独自の協働の取り組みであり、他の国々が参考にするモデルとなって、空の旅のあり方を変える可能性がある。
