オゾンが食料安全保障に課題をもたらす可能性がある理由

The ozone is one of the most potent air pollutants for agricultural crops worldwide.Image: REUTERS/Antonio Bronic
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オゾンはよく知られた興味深い気体です。成層圏に存在するときは「善玉」の気体と考えられており、そこで形成されるのがオゾン層です。地表から15~30キロメートル上空にあり、有害な紫外線から生命を守っています。

しかし、大気の最下層である対流圏に存在する場合、オゾンは人間や植物の健康にとって懸念材料となります。対流圏は地表から8~14キロメートルの高さまで広がっています。オゾンは二酸化炭素とメタンに次いで3番目に重要な温室効果ガスでもあります。オゾンが植物に対して最も毒性の強い大気汚染物質の一つであり、世界各地の農作物に深刻な被害をもたらしていることを示す有力な証拠があります。

複数の汚染物質が組み合わさって発生

これは一部には、オゾンが二次大気汚染物質であるためです。オゾンは直接排出されるのではなく、主に窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、揮発性有機化合物(VOC)といった一次汚染物質が、晴天時に光化学反応を起こして生成されます。これらの一次汚染物質は、主に運輸、工業、発電における化石燃料の燃焼によって排出されます。

こうした光化学反応が起きるには数時間かかるため、オゾン濃度は都市部や工業地帯の風下で高くなることがよくあります。

都市部や工業地帯に近い重要な農業地域の一部では、オゾン濃度が上昇しています。これには米国中西部、ヨーロッパ大陸の大部分、南アジアのインド・ガンジス平原、そして中国沿岸部が含まれます。

これらの地域では、オゾン濃度が作物の生理機能、生育、収量に影響するほど高くなることが頻繁にあります。オゾンやその前駆物質は半球規模で輸送されることもあり、ある大陸での排出が別の大陸の濃度に影響する場合があります。たとえば、北米からの排出は、ヨーロッパにおけるオゾンによる収量減少に影響を及ぼす可能性があります。

オゾンは、ガス交換を促す孔である気孔を通じて植物の葉に入り、細胞成分と反応します。そこで一連の化学反応が起こり、強い酸化ストレスが生じます。被害は、黄化(クロロシス)や斑点など目に見える葉の損傷、局所的な細胞死(壊死)から、光合成の低下や早期老化といった微妙な生理的変化まで多岐にわたります。こうした影響は最終的に作物の収量を減少させます。

高まる懸念

オゾン濃度は、人為的な排出によって産業革命以前の2倍に増加しました。厳格な大気質規制により、ヨーロッパと北米では過去数十年間にオゾン濃度のピークが低下しました。しかし、地域の人為的発生源がない場合のオゾン濃度を指す「バックグラウンドオゾン」は、ここ数年、世界的に上昇しています。

オゾンガス濃度は1860年以降、2倍になった。Image: AGU Publications

発展途上国、とりわけ南アジアと東アジアでは、オゾン濃度が上昇しており、オゾン前駆物質(NOxおよびVOC)の排出が大幅に削減されない限り、この傾向は少なくとも2030年まで続くでしょう。

現在および将来にオゾン濃度が高くなる地域は、世界の農業と食料生産で重要な位置を占める一方、食料不安に脆弱である点に留意することが重要です。

中国とインドは、オゾン汚染がすでに作物生産を脅かしている国の重要な例です。インドでは、オゾンによって小麦と米の収量がそれぞれ最大14%、6%減少したと推定されています。

広範囲に及ぶ社会経済的影響

このようにオゾンは、これらの地域の一部で食料と栄養の安全保障を脅かしている貧困、栄養不良、気候変動の影響という既存の複合的な問題に、さらに一つの要因を加えます。また、こうした食料システムの不安定化は、食料価格、農家の収入、消費者の行動、女性を含む社会のさまざまな集団の栄養へのアクセスの変化を通じて、広範囲に及ぶ社会経済的影響をもたらすことも考慮する必要があります。

環境要因による作物の減収は、しばしば農家に打撃を与え、負債を増やし、労働負担を重くするだけでなく、ジェンダー関係にも変化をもたらすことが研究で示されています。

同時に、既存および将来の農業地域における収量格差を縮めることは、世界の食料安全保障に不可欠です。

農家や政策立案者は、大気汚染が作物の減収要因であることを見落としがちです。また、大気質への懸念は、汚染濃度の上昇が人間の健康に影響する都市や市街地に集中しています。したがって、メディア、科学者、環境活動家が率先して農家、市民、政策立案者に働きかけ、リスクと被害を示す証拠を提供するとともに、オゾン汚染とその影響を抑えるためにどこで解決策が必要かを理解するために協力することが重要です。

オゾン汚染を組み込む

こうした課題を踏まえ、科学者は季節ごとの作物収量予測にオゾン汚染を組み込むことを検討すべきです。ストックホルム環境研究所の研究者は、作物向けのオゾンリスク・被害評価ツールを開発しています。最近の報告書は、バックグラウンドオゾン濃度や高濃度オゾン事象の頻度を評価するうえで、農村地域のオゾン監視ネットワークが重要であると指摘しています。

大気質の監視は一般に都市部や半都市部に重点が置かれているため、これは特に重要です。この報告書は、欧州監視・評価プログラムを含む世界各地の15のオゾン監視ネットワークの情報に加え、個々の研究者や、より小規模な地域・国レベルのネットワークが収集したデータを統合しました。

こうしたネットワークにより、オゾン汚染に関する情報を統合でき、数日から数週間続くことも多い高濃度オゾン事象を早期に警告できる可能性があります。これにより、農家は適切な管理方法を通じて作物の損失を最小限に抑えられます。

強靭な農業システムを開発する研究では、作物育種の改善や農学的手法を通じて、気候変動への適応と並行して、オゾン汚染による最悪の影響を避けるための適応策を組み込むことが理想的です。しかし、問題の全体像を明らかにし、効果的な解決策を提示するには、大気質、気候変動、農業、食料供給、および関連する社会経済的影響の間のつながりや相互作用を、地域、国、世界の各規模で理解することが絶対に必要です。

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