ウクライナでの戦争により、作物栽培に不可欠な肥料が不足している。
制裁と戦争に伴う保険上の懸念により、配送はごくわずかにまで減少した。
この混乱は、世界で最も脆弱な人々の食料安全保障を脅かしている。
ウクライナでの戦争は、農業用肥料の世界供給に大きな影響を及ぼし、世界各地の食料安全保障を損なうおそれがある。
ロシアはベラルーシとともに、世界有数の鉱物肥料供給源である。2022年2月にウクライナへ侵攻した後、米国や欧州連合(EU)を含む多くの国・地域がロシアに制裁を科した。
制裁体制には、ロシアとベラルーシが肥料の供給を継続できるようにするための特定の適用除外が設けられていたものの、輸出は地域を孤立させることを目的とした他の措置の影響を受けている。
世界経済フォーラムの「2023年グローバルリスク報告書」は、迫り来る食料供給危機を世界が直面する上位4つの脅威の一つに挙げ、「肥料価格急騰の遅行効果」が世界各地の食料生産に打撃を与えると予測した。
ロシア産肥料の輸出容認は、ウクライナからの穀物輸出再開を認めるために国連が仲介した合意の一環だった。しかしその後、ロシアは自国の肥料がグローバルサウスの顧客に届くのを妨げられていると述べた。
肥料の輸出は、ロシアの銀行が世界的なSWIFT決済システムから排除されたことに加え、保険会社が戦争地域への輸送を補償することに消極的であることによって妨げられている。同時に、EU域内を通る輸出ルートも閉鎖された。
不足に拍車をかけているのが、中国が課した輸出制限である。中国は世界のリン酸肥料供給の30%を占める。国内市場を守るための措置の結果、2022年の中国の輸出は50%減少したと世界銀行は述べている。
同時に、戦争によって引き起こされたエネルギー価格の急騰により、欧州の肥料生産は70%減少し、世界供給はさらに制約されている。世界食糧計画(WFP)によると、世界人口の半数は鉱物肥料を使って生産された食料に依存している。
肥料供給:時間との闘い
広範な飢餓を回避するための時間も残り少なくなっている。「世界の多くの地域で作付けの時期が迫るなか、すべての農家が必要な肥料を速やかに入手できることが極めて重要です。しかも、手頃な価格でなければなりません」とWFPは警告した。
WFPのデータによると、肥料価格は2020年5月から2022年末までに199%上昇した。2023年第1四半期には価格が下落したが、これは一部には、発展途上国の農家が肥料を購入せず、糞尿のような効果の低い代替品に頼ったためだった。
「従来のルートが遮断されているなか、貿易円滑化はウクライナや中央アジアからの肥料の流通を促進する一つの方法となり得ます」と、世界経済フォーラムの国際貿易・投資部門責任者、ショーン・ドハティ氏は述べた。
「世界的に見ると、食料や肥料の輸出制限は他国にも広がりかねません。可能な限り、各国政府はこうした制限を控え、供給に関する透明性を最大限高めるべきです。長期的には、調達先の多様化と社会保障制度の強化によって、レジリエンスを高めることができます。」
WFPは、オランダで差し押さえられていたロシア製肥料26万トンの放出を交渉し、モザンビークへ運び、そこからマラウイへ輸送するための船を手配した。
一方、現在の供給源からの肥料に対する世界の依存を緩和するための取り組みも進められている。米国のジョー・バイデン大統領は、国内の肥料生産を増やすための5億ドルの計画を発表し、EUにも同様の措置を講じるよう求める声が上がっている。
カナダは、すでに世界最大のカリ肥料供給国であり、他国からの供給が途絶えて生じた不足を補うことを目的として、2022年11月に輸出を20%増やすと発表した。
「この肥料不足を解消することが重要です」と、WFP経済・市場分析ユニットのエコノミスト、ステファン・マイヤー氏は述べた。「利用可能な土地で十分な量の[食料]を生産しなければなりません。土地は限られており、肥料はその重要な要素です。」
「多くの農家が肥料の使用を減らしており、特に発展途上国でその傾向が顕著です。小規模農家は肥料を購入するのに苦労しており、その結果、現在の作付け期や今後の作付け期に生産量が減るおそれがあります」と同氏は付け加えた。
