人々がこれほど頻繁に旅をする時代は、かつてありませんでした。2017年には、40億人を超える人々が空の旅を楽しみました。同時に、旅行者の要求はかつてないほど高まっています。あらゆるものを求め、しかも今すぐ手に入れたいと考えています。スピード、本物らしさ、パーソナライズ、シームレスさ、安全性を期待しているのです。
こうした高い期待に応えるには、テクノロジーが欠かせません。テクノロジーはすでに、働き方や暮らし方、行動様式を変え、今後も変え続けるでしょう。旅行の検索、口コミの確認、選択、体験の仕方も一変させました。モバイルへの移行やデジタル搭乗券を考えてみてください。
旅行業界を変革する可能性を秘めた、テクノロジーと旅行に関する3つのメガトレンドを紹介します。
1)おまかせ(DFY)
自動化が進むにつれ、自分で行う(DIY)ことと、おまかせする(DFY)ことの割合は変化していきます。AIの進歩により、自動化の対象はもはや身体的な作業に限られません。思考に関わる作業も自動化されています。旅行業界では、在庫管理から予約、人員配置、取引に至るバックエンド業務ですでに自動化が進んでいますが、AIの活用はそこで終わりません。Amazonで体験するような自動パーソナライズを旅行に取り入れる可能性を考えてみてください。SiriやAlexaのような旅行向けデジタルコンシェルジュや、自動運転車さえ実現するかもしれません。
AIと自動化が社会を変え、ますます広く浸透するなかで、潜在的な利点と落とし穴を検討し、後者に先手を打つ必要があります。たとえば、自動運転車は交通インフラをどのように変えるでしょうか。この変化は、収益の40%超を駐車場に依存する空港に何をもたらすでしょうか。同様に、特定の作業が自動化されるなかで、旅行業界は最も「リスクの高い」職種に就く人々をどう特定し、異なるスキルを身につけるための再訓練を通じて、新たな質の高い仕事への移行をどう支援できるでしょうか。
業界は今後も雇用創出を促し続けると考えています。また、自動化によって、データ中心の作業から、人とのやり取りを伴う役割へと移行が進み、顧客に独自性のある記憶に残る体験を提供できるようになるでしょう。
2)#フィルターなしの体験
情報があふれ、その多くを信頼しにくい世界で、人々は心を動かしてくれる、ありのままの体験を求めています。
今日では、北極探検を目的とする遠征型の船旅、「サプライズ」旅行を提供するブティック旅行会社、宇宙旅行など、まったく新しい旅が登場しています。ヴァージン・ギャラクティックは2018年末までに飛行を開始する計画です。
逆説的ですが、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)のコンテンツは、こうした特別でユニークな体験へのアクセスを広げられます。顧客は高額な料金を支払う前に、試しに体験できます。

スーパーボウルを最前列で観戦したり、活動中の火山の内部を飛行したりできる人は、ほとんどいません。しかしVRなら、こうした体験をほぼ費用をかけずに再現できます。体験やブランドを紹介する3D・360度コンテンツを制作することで、利用者はその商品の本物らしさを信頼し、信じやすくなります。
1990年代にビデオ会議が対面での交流に取って代わるものではなかったように、VRが旅行に取って代わるとは考えていません。むしろ、人々が世界を発見するきっかけとなり、ファラオの時代のエジプトのように、もはや存在しない場所を知る助けにもなるでしょう。ただし、旅行者は今後もソーシャルメディアでネットワーク上の人々と体験を共有し続けるため、VRによってブランドや旅行先は、自らが提供する価値を誠実に伝えるよう求められると考えています。
3)ブロックチェーン
ブロックチェーン、なかでも暗号通貨は、2017年に大きな話題となりました。情報を分散型かつ安全に保存・共有できるこの新興技術は、摩擦や腐敗を最小限に抑えながら、信頼を高める可能性を秘めています。金融分野にとどまらず、ブロックチェーン、すなわち分散型台帳技術は、ほかにもさまざまな分野で活用できる可能性があります。
その一つが旅行の安全性、特に生体認証です。国境を越える際に個人の身元を確認する必要があるためです。安全でシームレスな越境旅行を実現するうえで、生体認証は解決策の一部にすぎませんが、この技術は大きな変化をもたらす可能性があります。包摂性、相互運用性、拡張性、資金調達の確立が不可欠です。
旅行・観光業界が、2036年までに航空旅客数をほぼ倍増させて78億人にする目標を達成するには、成長を支える基盤技術を取り入れなければなりません。そうした技術によって、これからの旅行者にスピーディーで、本物らしく、パーソナライズされ、シームレスで安全な体験を提供できます。
