COP28では、気候変動と闘いながら食料安全保障を支えるため、25億ドル超の拠出が表明された。
低・中所得国で生産される食料の最大70%を、小規模農家が担っている。
世界中の何十億もの人々を支える農業システムの崩壊を招かないためにも、小規模農家のニーズと優先事項に耳を傾けなければならない。
世界で最も貧しい農家と働く私たちにとって、昨年11月にドバイで開かれたCOP28は希望を抱かせるものだった。気候サミットに参加した世界の指導者らは、気候変動と食料安全保障という二つの課題に焦点を当て、25億ドルの動員を約束した。農業由来の温室効果ガス排出に対処し、地球温暖化によって脅かされる農家の生計を守るためだ。
この宣言は、世界の食料の大半を生産する小規模農家にとって大きな勝利だと歓迎された。世界には約5億1,000万の小規模農場がある。しかし、表明された資金は政治宣言に続いて実際に拠出され、最も必要としている人々に届くのだろうか。そして、その資金は適切な人々に渡るのだろうか。
小規模農家は、低・中所得国で生産される食料の最大70%を担っている。しかし、資金調達、市場、肥料、種子、電力、データへのアクセスなど、成長に必要な資源が不足していることが多い。2023年、気候政策イニシアティブ(CPI)は、気候資金のうち小規模農家に向かったのは、わずか55億ドル、つまり0.8%にすぎないと推計した。その間も、運輸やエネルギー生産など他の分野では気候資金が増加していた。
食料供給を守る鍵を握る
小規模農家向けの気候資金が不足していることは、深刻な懸念材料だ。農家にとって公正な気候移行を確保し、世界の食料供給を守るための取り組みが不十分であることの表れだ。COP28で追加表明された25億ドルのすべてが最貧困地域の農業コミュニティに渡ったとしても、気候資金から得られる額は6年前を下回る。これは食料供給だけでなく、地球も危険にさらす。大規模な単一作物のプランテーションに比べ、小規模農家のほうが生物多様性を保全し、守り、再生する可能性がはるかに高いことが分かっているからだ。彼らは再生型で、農業生態学的に安全な自然に根ざした手法を用いている。

複数の課題が競合するなかで、農村の人々のニーズはあまりにも簡単に見過ごされてしまう。農家の声に耳を傾け、必要な資金を提供することがかつてないほど重要になっている今、この状況を変えなければならない。気候変動は地球規模の現象だが、その影響と解決策、とりわけ地球温暖化の影響への適応は、非常に地域に根ざしたもので、畑ごとに異なることもある。だからこそ、食料システムを変革するには、農業コミュニティの専門知識と地域の知見が必要だ。彼らが積極的に関わらなければ、食料生産をより強靱で生産性の高い、自然との均衡が取れたものにする取り組みは失敗する運命にある。
上意下達の解決策はめったにうまくいかない。作物の改良に取り組む科学者に聞けば分かる。何十年も研究室で開発を重ねても、新品種の多くは農家や消費者に受け入れられない。害虫には強くても調理に時間がかかる、あるいは干ばつに耐えても高価な肥料が必要、といったことがある。そのため科学者は、研究の中心に農家を据えつつある。世界最大の農業イノベーションネットワークである国際農業研究協議グループ(CGIAR)は、国際農業開発基金(IFAD)が改良種子の普及に向けて多額の資金を提供してきたパートナーであり、科学者、小規模農家、政府機関など、ハイブリッド種子の開発に関わる関係者を含む、国・作物別の「デザインチーム」を設置している。これまでにこの取り組みは、アフリカ東部・南部の15カ国に広がっている。
農家の優先事項を理解する
小規模農家のニーズを伝え、解決策を見いだすうえでは、農家組織も重要な役割を果たす。IFADは世界で最も貧しい地域の農家組織と連携している。小規模農家、零細漁業者、牧畜民の団体を通じて、気候資金が最も必要とされる場所や、公正な価格で販売する際の障壁など、彼らの優先事項を把握している。IFADの設立以来、農家は公平で効果的な食料システムを目指す取り組みにおいて重要なパートナーであり続けてきた。農家や生産者の組織は、IFADの支援を受ける農家が競争力のある市場価格を得て、買い取り業者と交渉するための重要な手段でもある。
例えば、スリランカでは、小規模農家が国内の茶とゴムの大半を生産している。IFADは気候リスクに対処するため、生産者組織や流域管理協会に投資している。パラグアイでは、地元の女性たちが所属する協会と協力し、首都で農産物を販売できるよう支援した。また、ブルキナファソでは、IFADは稲作農家組合と連携して、アグロエコロジーなどの持続可能な農法を導入している。
IFADは、農民フォーラムの設立を支援した。このフォーラムには、世界各地の何百万もの小規模農家や農村生産者を代表する農家リーダーが集う。2005年から活動する同フォーラムは、農村の農家組織、IFAD、加盟国の間で継続的な対話を促す役割を担っている。次回の農民フォーラムの世界会合はローマで今年2月に開催される。
今日、開発途上国では小規模農家が何十億もの人々を養っている。しかし、貧困や気候変動、資源不足を考えれば、このことを当たり前とせず、行動を起こす必要がある。これほど多くの人々の運命が、最も農村部に暮らす小規模農家にかかっている時代はかつてなかった。彼らの声にもっと耳を傾けるべき時だ。
