インドの農業分野は、気候変動の脅威が続くなか、1億人の小規模農家の収入を支えることが期待されている。
しかし、この分野では、サプライチェーンの効率性、持続可能な資源利用、その他の生産要素を改善するための転換が必要である。
ブロックチェーン、人工知能(AI)、ドローン、モノのインターネット(IoT)などのデジタル技術は、この転換を促す大きな可能性を秘めている。
農業のこうした変化を支えるため、各州が官民連携と新たな資金調達モデルをどのように機能させられるかを紹介する。
農業分野はインド経済にとって、5,800万世帯を超える家計の生計を支え、13億人の食料安全保障を確保するうえで不可欠である。この分野は重大な岐路に立っている。限られた天然資源と生態系の課題のもとで増加する人口を養うという重圧にさらされる一方、農業分野には、気候変動の脅威が続くなかで1億人の小規模農家の収入を支えることも期待されている。この状況に効果的に対応するには、生産要素への包摂的なアクセス、効率的なサプライチェーン、持続可能な資源利用に関して、農業分野の転換が必要である。
ブロックチェーン、人工知能(AI)、ドローン、モノのインターネット(IoT)などのデジタル技術は、この転換を促す大きな可能性を秘めている。これらの技術が導入され、大規模に積極活用されれば、3つの指標すべてに長期的な影響をもたらし得る。2022-23年度予算演説でインド政府は、デジタル農業技術とイノベーションの可能性を認識し、これらの技術を拡大するための官民連携(PPP)スキームを立ち上げると発表した。
2021年、世界経済フォーラムの第四次産業革命センター(C4IR)は、テランガナ州政府と連携し、同州の農業分野でデジタル技術を拡大する、前例のないPPPを開始した。このプロジェクトから得られた教訓は、こうしたPPPの枠組みでは、拡大を妨げる構造的課題に対処して技術の持続可能な市場をつくる促進役を政府が担うべきことを示している。このアプローチは、民間企業が事業拠点を持たない地域への参入も促す。
PPPの仕組みと技術の双方が革新的であることを踏まえ、政府は、まず初期検証を行い、その後に全面的な規模拡大へ進む2段階の実施プロセスを採用できる。どちらの段階でも、民間部門の投資リスクを軽減し、継続的な関心と財務的な持続可能性を確保するには、商業資金へのアクセスが不可欠である。
インドの農業技術への資金調達
インドは、株式投資の対象となる農業技術(アグリテック)市場として最大級の規模を誇り、2020~21年にはアグリテックのスタートアップに約5億ドルが投資されたが、商業資金への需要は依然として満たされていない。ベイン・アンド・カンパニーの2021年の報告書は、インドのアグリテック分野が2025年までに300億~350億ドルの投資を呼び込むと推計している。異なるリスクマネー(取り組みの実現可能性を示すため、高リスク・高インパクトの事業に投じられる資金)を組み合わせるブレンデッド・ファイナンスの仕組みは、この分野への投資を始動させるうえで重要な役割を果たし得る。

現在、こうした金融手段を提供する組織は、個別に活動している。慈善団体が提供する助成金は、主に非営利団体に振り向けられ、限られた地理的地域で、定められた期間内にデジタル農業プロジェクトを実施するために使われている。こうした非営利団体は、その後、デジタル技術ソリューションの導入にあたり民間部門と連携する場合がある。しかし、取り組みの焦点が地域にとどまるため、その規模拡大は依然として課題である。
一方、銀行やノンバンク金融会社(NBFC)などの主要な商業金融機関は、運転資金ローンや資産金融の形でスタートアップに直接資金を提供している。しかし、理解の不足、適切な商品がないこと、与信意欲の低さから、こうした融資は限定的である。開発金融機関によるリスク分担の仕組みは、活況を呈するアグリテック分野への商業資本の投資を主流化できる。たとえば、ラボ・ファウンデーションは、アグリテックと持続可能な農業を対象に、インドの主要な金融機関と複数の融資プログラムを実施している。こうした仕組みは、インドの金融機関と連携した国内外のファンドを通じて、さらに拡大できる。
デジタル農業のPPPは、さまざまな種類の資本を活用するブレンデッド・ファイナンス・プログラムを始めるのに最適な基盤となる。助成金は初期段階の未検証のアイデアを効率的に検証するために使えるほか、国内の金融機関と連携することで、融資と投資の両方に必要な商業資本の流入を促すこともできる。適切なPPPガバナンスのもと、開発部門と政府がリスク分担基金を創設できる。
構想されているブレンデッド・ファイナンスの枠組みは、政府機関、または政府を代表する多国間機関が調整役を担うことができる。このプラットフォームには、デジタル農業の拡大という共通のビジョンを持つ機関の連合体を結集できる。協働型の仕組みであれば、柔軟性と機動性を確保しながら、各機関が戦略的利益に応じて容易に参加・退出できる。
こうした連携の可能性は非常に大きい。まず、必要な資源、具体的な価値提案、連携のためのガバナンス構造の設計をさらに検討する必要がある。次の差し迫った課題は、前述の関係者間で建設的な対話を行い、ビジョンを定め、協力関係を築くことである。国レベルでこの対話を主導し、連合体の形成を促すには、政府が最適な立場にある。