地球は深刻化する食料危機に直面しています。国連によると、8億人を超える人々が恒常的に栄養不足の状態にあります。2050年までに、さらに20億~30億人が地球規模の食卓に加わることになります。
この課題に取り組むには、一人ひとりに十分なカロリーを提供するだけでなく、健康に不可欠なタンパク質や栄養素を含むバランスの取れた食事を確保する必要があります。新たに発表された研究では、海洋性微細藻類が世界的な大規模飢餓を解決する持続可能な手段となり得ることを説明しています。
現在の食料生産システムが抱える問題
現在の西洋型の食生活には膨大な土地、水、エネルギーが必要で、深刻な汚染を引き起こし、気候変動の大きな要因にもなっています。一人当たりの需要が増加するなか、増え続ける世界人口に栄養価の高い食料を供給することで、現在の食料生産システムは限界を超えつつあります。
畜産は、食肉や家畜飼料の生産のために、森林を農地や牧草地に置き換えています。飼料用穀物などの作物を育てるために使われる窒素・リン肥料は、土壌を劣化させ、生物の生息できない海域を生み出しており、世界の約400の河口域でその影響が見られます。
魚は、タンパク質を構成するオメガ3脂肪酸や必須アミノ酸の重要な供給源です。しかし、魚を食べることにはいくつかの欠点もあります。魚の組織には重金属や有毒な有機化学物質が蓄積し、それが人間に移ることがあります。さらに、海洋漁業の大半は乱獲されているか、漁獲量が最大水準に達しています。
養殖は、世界の水産物に占める割合を拡大させています。しかし、養魚場は水質汚染、野生魚への病気の伝播や生息地の破壊など、深刻な環境影響をもたらすことがあります。養殖魚の餌となる小型の海水魚への需要は、野生魚の資源を枯渇させています。
別のアプローチ:「中間の魚」をなくす
私たちの論文では、人間の主食や家畜・養殖魚の飼料として、海洋性微細藻類を商業生産するという代替策を提案しています。こうした微小な生物は、オメガ3脂肪酸やアミノ酸の究極の供給源です。これらは人間の食事に必要なもので、多くの人は魚を食べることで摂取しています。しかし、栄養の面で魚は水中の中継役にすぎません。「中間の魚」をなくせば、より効率的に世界の人々を養うことができます。
微細藻類は、ほとんど利用されていない資源であり、淡水と海水の両方の水域に生息しています。大きさはわずか数マイクロメートルですが、アミノ酸、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、ポリマー、炭水化物を生み出します。
例えば、オメガ3を豊富に含む微細藻類のナンノクロロプシス・オキュラータ(通称ナンノ)は、栄養価の高い食品や飼料の有望な供給源となる可能性があります。乾燥重量の40%がタンパク質で、そのうち3分の1は必須アミノ酸を含みます。また、体内で利用されやすい形の必須脂肪酸であるEPA(オメガ3脂肪酸)を6%含みます。
現在、商業利用されている藻類はごく一部ですが、食品や飼料の供給源となる可能性のある株は数百に上ります。微細藻類は現在、食品原料や栄養補助食品、魚の養殖飼料として利用されています。
ナンノの生産
微細藻類は、持続可能性への影響がそれぞれ異なる複数の方法で商業的に培養されています。まず、好気発酵システムでは、暗所に置いた撹拌槽で培養し、糖を藻類の主なエネルギー源として使います。また、淡水または塩水を使い、二酸化炭素と太陽光を利用して開放池で培養する方法もあります。別の方法として、汽水または海水を入れた、フォトバイオリアクターと呼ばれる密閉式の透明な管の中で培養することもできます。
現在、ナンノはテキサス州の屋外池で二酸化炭素を加えた汽水を使って商業規模で培養されているほか、アイスランドの地熱発電所では、海水と二酸化炭素を使ってフォトバイオリアクターで培養されています。ここでは太陽光の代わりに、発電所の安価で汚染を生じさせない再生可能電力で稼働する高効率LED照明を使っています。
フォトバイオリアクターは、水と肥沃な土地の使用量が最も少なくて済みます。これらのリアクターは、縦に積み重ねられるレゴブロックのようなものです。密閉システムであるため、水の蒸発による損失を最小限に抑えられます。
動物、植物、海洋藻類によるタンパク質生産を比較する持続可能性指標の一つは、それぞれの食品から同量の必須アミノ酸を生産するために必要な土地と水の量です。私たちの計算では、牛肉由来の必須アミノ酸を1キログラム生産するには、淡水148,000リットルと肥沃な土地125平方メートルが必要です。これに対し、開放池で汽水を使って育てたナンノから同量を生産する場合、必要な淡水はわずか20リットル、不毛地は1.6平方メートルです。
意外なことに、植物性タンパク質のなかには、一部の肉類と比べても、非常に多くの土地と水を必要とするものがあります。例えば、鶏肉と同量の必須アミノ酸を生産するには、エンドウ豆は淡水を約2倍、肥沃な土地の面積を6.5倍必要とします。
微細藻類を食品にする
ナンノはどのように食べるのでしょうか。現在は海洋性微細藻類オイルをソフトジェルカプセルにした製品があり、オメガ3の毎日の供給源として、クリルオイルや魚油の代替品として販売されています。粉末状にすれば、藻類全体や抽出物を、栄養バー、スポーツ用スナック、パスタの原料にできます。スピルリナやクロレラなどの藻類全体を使った製品は、すでに商業的に成立し、市場に出回っています。藻類茶や藻類粉末など、藻類を使ったほかの製品も販売されています。
現在の形態のナンノは、世界各地で栄養不足に苦しむ人々の栄養状態を改善するためのタンパク質・脂肪酸サプリメントや、養殖魚・家畜の飼料として使えます。藻類を使った製品の大半は、米国では栄養補助食品として販売されていますが、今こそ藻類食品を食卓に取り入れる時だと私たちは考えています。
すでに多くの企業が、革新的な代替肉製品を提供しています。こうした製品は、栄養価や味が肉に匹敵する大規模な食料源となる可能性があります。しかし、ジャガイモ、小麦、大豆を原料とする製品も、なお大量の淡水と耕作地を必要とし、現在の農業と同じ環境上の欠点を抱えています。
私たちの計算では、ナンノと同程度の栄養価のアミノ酸を含むエンドウ豆・大豆由来の代替肉製品は、牛肉の6.4分の1の淡水で生産できますが、肥沃な土地は2.2倍必要です。これに対し、海洋性微細藻類を使えば肥沃な土地が不要となるため、土地の使用量を75分の1未満に抑えられ、淡水の使用量も7,400分の1になります。
私たちの論文は、経済的に成り立つ微細藻類の持続可能な培養システムを紹介しています。次の課題は、これを代替肉製品の基盤として活用するよう、食品科学者を説得することです。料理人や目利き、食通や美食家、消費者や批評家は皆、藻類バーガーへの世界的な移行に参加することで、地球を守る力になれます。

