世界各地の独立系メディアは、経営難に苦しんでいる。米国だけでも、2004年以降、2,000紙を超える新聞が廃刊した。
独立系メディア、とりわけ地域紙や地域メディアの衰退は、重要なニュースを未報道のままにし、民主主義の後退を加速させることが示されている。
独立系メディアが存続するには、地域市場のデータと、専門家による実践的な経営相談が必要だ。
民主主義の「第四の権力」である独立系メディアは、絶滅の危機に直面し、世界各地で民主主義の後退をさらに深刻化、加速させる恐れがある。手遅れになる前に、報道機関の財務基盤を根本的に強化するため、大胆な共同の行動が必要だ。
あらためて、あらゆるレベルの政府における民主主義にとって、独立系メディアがいかに重要かを強調したい。ハーバード大学のニーマン・ラボによると、公的メディアへの資金がより充実している国ほど、民主主義が健全だ。
このことは、国内外のレベルで目に見える形で表れている。「パンドラ文書」のように、多額の費用と複雑な調査を要する国境を越えた調査報道は、国家指導者を告発し、あるいは失脚させてきた。国内の報道機関は日常的に選挙運動を報じ、開票結果の信頼性を検証し、指導者が公約を実行しているかを問い続けている。
目立ちにくいものの、同じくらい重要なのが、地域レベルでのメディアによる説明責任の確保だ。市民は基本的な行政サービスを政府に頼っている。たとえば米フロリダ州では、地域ジャーナリストの減少により、地域政治家が特定の利害関係者と結びつくのを抑止するメディアの監視役が少なくなった。地域メディアの不足は、投票率の低下や、民主主義を損なう政治的分極化の深刻化とも関連づけられている。
地域ニュースの広告収入に対するテクノロジーの影響
一方、従来型メディアのビジネスモデルを揺るがす変化は、民主主義の柱を倒しかねない。テクノロジー・プラットフォームはウェブ上の出版をますます支配し、地域ニュースから価値ある読者層と広告収入を奪っている。自社のプラットフォームに記事を掲載することで利益を得ているにもかかわらずだ。
たとえば英国では、GoogleとFacebookだけでデジタル広告市場のほぼ70%を占める。米国全土では、ヘッジファンドが報道機関を買収し、記者を一斉に解雇して、ジャーナリズムの質を低下させてきた。低所得国や低所得地域の報道機関は、購買力の限られたニュース消費者から収入を得るのに苦労している。
米国では、2004年以降、2,000を超える新聞が廃刊し、地域の報道機関がない郡、いわゆる「ニュース砂漠」が200か所以上生まれた。この傾向は世界各地のメディア市場でも見られる。南アフリカからインドに至るまで、広告収入やその他の財政支援源が減少し、民主主義の発展段階を問わず、説明責任を損なう恐れがある。
財政難による報道機関の閉鎖が続く傾向は、世界的な民主主義の後退に明らかに寄与している。この流れをどう変えればよいのだろうか。
メディア事業者が、自らの市場の読者に合った事業戦略を立てるには、詳細なデータが必要だ。
ジーン・ブルゴー、ジェイソン・ランバート(インターニュース)
独立系メディアのためのデータに基づく戦略
機能するメディアのビジネスモデルはある。購読型ニュースレター、ペイウォール、寄付の呼びかけ、オンライン・クラウドファンディング、従来型広告、協賛イベントなどがその例だ。メディア起業家たちは、こうした手法のいずれもが、報道機関の成長を支える収益を生み出せることを示してきた。
問題は、ある国や地域の報道機関でうまくいく手法が、別の場所でも最善とは限らないことだ。メディア事業者が、自らの市場の読者に合った事業戦略を立てるには、詳細なデータが必要だ。しかし、経営難にある報道機関がこうした知見を独自に得るには費用がかかりすぎることが多い。とりわけ、低所得国や報道の自由が制限されている国ではそうだ。
国際的なコンソーシアムが、報道機関を支援し、ひいては民主主義に資するために、こうしたデータを作成するとしたらどうだろう。心強いことに、それを実現する初期段階の取り組みが進んでいる。
メディア・バイアビリティ・アクセラレーターができること
昨年の民主主義サミットの閉幕に際し、米ホワイトハウスは独立系メディアを支援して民主主義を促進するための取り組み一覧を発表した。その中でも特に重要なものとして、メディア・バイアビリティ・アクセラレーター(MVA)の立ち上げを約束した。
MVAは、高所得国と低所得国のメディア起業家、広告代理店やテクノロジー企業、市民社会団体、メディアの自由を擁護する人々、さらに対外援助を行う各国政府からなる多様な連合が主導する。メディア企業から収益を吸い上げてきた世界的かつ構造的な市場の失敗に対処する方法を特定するとともに、個々の報道機関が財務的に持続可能になるよう、役立つリソースや専門知識を提供する。
MVAの中核となるのは、メディア企業に関係するデータの収集だ。これには、読者数やエンゲージメント、各事業分野の収益見込み、規制リスクのモデル、その他の情報が含まれる。参加する報道機関は、プライバシーと競争力を守るため匿名化したデータを提供し、その見返りとして市場全体の情報を得る。技術専門家は、報道機関がこの情報を活用し、財務的自立への道筋を描く事業計画を策定できるよう支援する。
地域市場のデータと実践的な経営相談を組み合わせたこうした支援は、大きな変化をもたらし得る。ヴィエスティは、モンテネグロを代表する報道機関の一つで、地域市場のデータに基づく個別の経営指導を受けた後、主要な収益源を2か月で400%伸ばした。
世界各地で財政難に苦しむ何千もの報道機関が、同じ成功を収める姿を想像してほしい。それは民主主義の命綱となるだろう。
