新興経済の中心には、その急速な発展を支える活気ある都市があります。
アジア各地で、こうした意欲的な都市の多くは、ビジネスサービス、エンジニアリング、金融、小売企業が集積する拠点となり、活発なクリエイティブ産業も育んでいます。
インドのバンガロールから中国の深圳まで、これらの都市は国内で高く評価されており、将来の成長を担う企業や人材を呼び込むため、国際舞台での存在感を高めようとしています。
JLLのグローバル・リサーチ・ディレクター、ジェレミー・ケリー氏は次のように述べています。「新興経済国の都市は、イノベーションのグローバルネットワークにおける重要なハブとなりつつあり、『エンタープライザー』と呼ばれています。こうしたビジネスや企業活動の拠点は、大きな機会を生む場所であり、自国や広域地域の労働者を引きつけています。通常、製造業に加えて高付加価値の活動に特化し、それぞれの国で最大級の都市に数えられます。近年はビジネス環境の優位性を生かしてきました。」
そのため近年、これらの都市は世界で最も活気ある不動産市場の一角を占め、海外の不動産投資家からもますます注目されています。
急速な成長を遂げる一方で、エンタープライザーは経済を次の段階へと押し上げるため、生産性とイノベーションの向上を目指すなか、固有の課題にも直面しています。地元の人材供給を確保すること、土地利用の効率を高めること、都市ブランドを強化して世界に効果的に発信することなどが課題です。
では、どのアジアの都市が「エンタープライザー」に加わり、その機会はどこにあるのでしょうか。
インド・バンガロール:インドを代表するIT拠点であるバンガロールは、多国籍企業の主要なアウトソーシング先にとどまりません。Google(米国外では初となる研究開発センター)、Uber、Amazon、IBMなど、進出する世界的企業が増えており、研究開発施設を構えています。また、Ola、BigBasket、Flipkart、Mu Sigma、InMobiなど、多くのテック系「ユニコーン企業」やスタートアップも集まっています。工学分野に力を入れる大学が複数あり、人材が安定して供給されるうえ、大手企業の集積が国内各地から労働者を呼び寄せています。企業側も同市への進出を強く望んでおり、商業オフィスの吸収率は世界でも最高水準の一つです。一方、バンガロールには課題もあります。人口が急増するなか、環境への負荷や無秩序な都市化が深刻化しています。
中国・深圳:「中国のシリコンバレー」として知られる深圳は、1980年に中国初の経済特区(SEZ)に指定されて以来急速に発展し、現在の人口は約1,200万人です。インターネット大手のTencent、ハードウェア企業のHuaweiやZTEなど、中国有数の革新的なテクノロジー企業が拠点を置いています。世界初かつ最大のハードウェア・アクセラレーターであるHAXもあります。さらに、ドローンメーカーのDJI、UBtech Robotics、Royoleなど、複数のテック系ユニコーン企業を擁します。その結果、世界の都市のなかで特許出願件数は3番目に多くなっています。確立された高等教育機関は少ないものの、中国各地からテクノロジー人材を引きつけています。中国の技術力が高まるにつれ、深圳はその中心地となる可能性が高いでしょう。
台湾・台北:台北とその周辺地域は製造業の確立された拠点であり、Foxconn、Acer、Asusをはじめ、電子工学、IT、精密機器の製造を専門とする主要企業が集まっています。一方、台北は成長するアジアの競合都市に対抗するため、視野を広げようとしています。クリエイティブ産業が発展し、2016年には世界デザイン首都に選ばれました。起業を促進してスタートアップを育成し、大学の研究成果を商業化するとともに、ハードウェアからソフトウェアへの転換を推進する長期的な政府施策の恩恵も受けています。工学人材の育成に特に力を入れる充実した教育制度も、その目標を後押ししています。
中国・広州:中国を代表するもう一つの大都市、広州は、深圳や香港とともに珠江デルタの巨大都市圏を形成しています。貿易の中心地として知られ、広州交易会や世界最大級のコンベンションセンターがあり、港湾や空港を通じた国際的な結びつきも強い都市です。また、製造業中心だった過去から脱却し、科学イノベーションの拠点へと位置づけ直すため、都市のイメージ刷新にも取り組んでいます。重点分野はIT、バイオ医薬、新素材・ハイエンド設備、新エネルギー車、省エネルギー・環境保護です。琶洲インターネット・イノベーション・クラスターは開業から3年足らずで、Alibaba、Tencent、Xiaomiを含むテクノロジー大手17社を誘致し、各社は地域本部の建設に合計630億元を投資しました。それでも今後、深圳や杭州のような都市と競争できるのか、疑問は残っています。
ベトナム・ホーチミン市:東南アジアの有力都市の一つとして急速に評価を高めるホーチミン市には、Microsoft、LG、Intel、なかでもSamsungなど、大手多国籍テクノロジー企業からの投資が増えています。また、ベトナム唯一のテック系ユニコーン企業であるVNG Corporationの拠点でもあります。オフィス、小売、ホテル需要が高まるなか、不動産開発が急速に進み、新しい地下鉄システムも建設中です。同国で最も高い建物となるVincom Landmark 81は今年後半に開業する予定です。サイゴン川東岸の657ヘクタールの区域、ティエム新都市区は、新たな中央金融地区として整備される計画です。ホーチミン市は国全体の成長の恩恵を受けるうえでも有利な位置にあります。ベトナムは世界でも特に成長の速い国の一つであり、将来必要となる人材を担う、若く規模の大きい、教育水準が高まりつつある労働力を有しています。
マレーシア・クアラルンプール:東南アジアで人材を集める新興拠点とみられるクアラルンプールは、1850年代の錫採掘の時代から大きく発展しました。現在、マレーシアの首都はBMW、Motorola、HSBC、PayPalなど多様な企業に、熟練労働者、十分な英語運用能力、高い生産性を、シンガポールや香港など域内の他都市より低いコストで提供しています。より広く見ても、世界銀行の「ビジネス環境の現状」などの指標で、同国は事業環境の評価が高くなっています。クアラルンプールは東南アジアで最も住みやすい都市の一つにも選ばれており、地理的にも経済的にも、地域全体の成長の恩恵を受けやすい位置にあります。






