サウジアラビアは、2030年までに聖地を訪れる人の数をほぼ4倍にするという目標に、巨額の資金を投じている。
同国は266億ドルを投じ、メッカの大モスクを拡張してハッジ期間中により多くの巡礼者を受け入れられるようにするほか、近くに36億ドルを投じて、客室数1万室を擁する世界最大のホテルとなる施設を建設している。
メッカ・メディナ間の鉄道など関連事業も含めると、サウジアラビアはメッカだけで800億ドルを支出していると推定される。

政府は、2030年までにユネスコに登録されたサウジアラビアの遺産の数を2倍以上にすることを目指し、国内各地の歴史的・宗教的遺跡の修復や整備にも追加の資金を投じている。
石油の後の暮らし
サウジアラビアの宗教的・歴史的遺跡への支出は、石油依存から脱却させようとする同国指導者たちの取り組みの一環だ。
サウジアラビアはロシアと並び、世界最大の石油・天然ガス生産国である。
石油産業はおよそ政府歳入の87%、GDPの42%、輸出の90%を占める。
原油価格の低迷が続き、サウジアラビア経済は打撃を受けている。同国の今年第1四半期のGDPは0.5%縮小した。同じ期間に石油・天然ガス部門が2.4%縮小したことが原因だ。
サウジアラビアを多額の債務に陥れた1980年代の石油過剰供給の記憶に、石油・天然ガス部門はかつての姿を取り戻すことはないかもしれないという認識が重なっている。
再生可能エネルギーの普及と電気自動車の台頭は、石油・天然ガスの利用がせいぜい横ばいにとどまり、価格が長期的に下落する可能性もある未来を示している。

ビジョン2030
石油依存から脱却するため、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン・ビン・アブドルアジズ皇太子は昨年、経済を多角化するためのロードマップを発表した。名称はビジョン2030だ。
石油・天然ガス以外の幅広い事業分野に加え、インフラや教育への投資も計画に盛り込まれている。
計画の資金の大部分は、国営石油会社サウジアラムコの株式5%未満を来年売却して賄う予定だ。同社は、史上最大のIPOになると広く予想されており、企業価値は約2兆ドルと評価される見込みだ。
ビジョン2030で成長分野に位置づけられた、石油・天然ガス以外の産業の一つが観光だ。
同国にはすでに年間800万人が訪れており、その圧倒的多数はイスラム教の聖地であるメッカとメディナを訪れる巡礼者だ。今年のハッジ巡礼では、わずか5日間で175万人が訪れた。
サウジアラビアの指導者たちは、年間の巡礼者数を2020年までにほぼ倍増させ、1,500万人にすることを目指している。2030年までには、毎年3,000万人のウムラ巡礼者を迎える計画だ。

観光客を引きつける
サウジアラビアが呼び込もうとしているのは、宗教目的の観光客だけではない。
同国はまた、紅海沿岸の島々を開発し、ベルギーと同じ広さの観光リゾートをつくろうとしている。
50の島々で、高級ホテルや空港、新しい道路、港の建設が予定されている。建設は2019年に始まり、開発の第1期は2022年に開業する予定だ。
紅海の島々は、「国際的な最良慣行」に沿った法律が適用される「特別区域」として開発される。
このリゾートにも、アルコールを禁じ、慎み深い服装を義務づけるサウジアラビアの保守的な法律が適用されるのか、王国当局はまだ明らかにしていない。
宗教目的とレクリエーション目的の両方の訪問者を呼び込む取り組みの一環として、ビジョン2030はビザ規制の緩和も打ち出している。
