農地の拡大は、世界の自然地域を破壊する最大の要因となってきた。
しかし、この時代は終わりを迎えた。食料生産と農地利用の「世界的なデカップリング」によって、今ではより少ない土地でより多くを生産できる。
この傾向を続けるには、作物の収量と生産性を高めるとともに、肉の消費を減らす必要がある。
世界はかつてないほど多くの食料を生産しているが、現在、利用する土地の面積は減少している。つまり、より多くの人々を養いながら、野生生物の生息地を回復できる。
人類は、作物を育て家畜を飼育するために自然地域を切り開き、数千年にわたって地球の土地を形づくってきた。その結果、人類は世界の森林の3分の1を伐採し、最終氷期の終わり以降、野生の草原の3分の2を転換してきた。
これは地球の生物多様性に甚大な損失をもたらした。過去5万年間に、人類が世界各地に定住するにつれて、野生哺乳類のバイオマスは85%減少した。
農業の拡大は、世界の自然地域を破壊する最大の要因となってきた。
農地の拡大は今や終わりを迎えた。数千年を経て、私たちはピークを越え、近年、世界の農地利用は減少している。
「農地のピーク」
農地とは、作物の栽培に使われる耕作地と、家畜の飼育に使われる牧草地の合計である。
農業に使われる土地の正確な面積を測るのは難しい。すべての農場が、作物を密に植えた畝だけで構成されているなら、利用面積を計算するのは簡単だろう。畑を四角で囲み、その面積を計算すればよい。しかし、世界の多くの地域で農業はそのような形ではない。作付け密度が低かったり、農村の集落と混在していたり、ごく小規模な農地があったりする。こうした土地は、庭と農場の中間のようなものだ。農地の始まりと終わりが明確でない場合も多い。
そのため、農業に使われる土地の面積については、さまざまな推計がある。
ここでは、世界の土地利用の変化に関する3つの分析をまとめ、図に示した。それぞれ異なる手法を用いており、その内容は図表で説明されている。国連食糧農業機関(UN FAO)は、1961年以降の各分析の基礎となるデータを作成している。ただし、研究者はその上に独自の手法を適用し、データ系列をさらに過去にさかのぼって延長している。
ご覧のとおり、各分析は農業に使われる土地の面積と、土地利用がピークに達した時期について見解が異なる。しかし、いずれもピークを越えたという点では一致している。
これは、人類と地球との関係における歴史的な節目であり、世界の生態系を守るうえで重要な一歩となる。
これは、食料生産の未来が過去と同じ破壊的な道をたどる必要はないことを示している。この道を進み続ければ、地球の自然地域や野生生物のための場所を取り戻せる。
農地と食料生産の世界的なデカップリング
農地が減少しているにもかかわらず、世界の食料生産は増え続けている。作物と畜産物のどちらにも当てはまる。
国連食糧農業機関(UN FAO)のデータを示した図表から、このデカップリングが見て取れる。世界の農地(緑の線)はピークを迎えた一方、農業生産(茶色の線)はピーク後も力強く増加し続けている。
農業の各要素を個別に分けて見ても、あるいは金額ではなく物量で見ても、同じ傾向、つまり生産量の継続的な増加が見られる。あらゆる作物や畜産物のデータは、Global Food Explorerでご覧いただける。
これは、より多くの人々を養うために、ほかの野生生物から生息地を奪う必要はないことを示している。このデカップリングにより、より多くを生産しながら、土地を自然に返すことも同時にできる。
世界の農地はピークを迎えたが、耕作地はまだピークに達していない
世界の牧草地はピークを迎えた。世界の耕作地はまだピークに達していない。
世界の肉の消費量が増えていることを考えると、意外に思えるかもしれない。それでは、家畜の牧草地がピークを迎え、今では減少しているのはなぜだろうか。
世界の肉の生産量は、50年前の3倍に達している。しかし、肉の生産方法や食べられる肉の種類は変化してきた。第一に、牧草を食べない豚肉や鶏肉の生産が大幅に増えた。
第二に、牛肉生産の多くが、牧草地での放牧から、より集約的な飼育方法へと移行し、土地が節約されている。ここには重要なジレンマがある。穀物飼料で育てる家畜は、牧草で育てる家畜より土地効率が高いことが多く、全体として必要な土地は少なくて済む。しかし、放牧地の生物多様性は、集約的な耕作地より豊かなことが多い。
その結果、牧草地ではなく、耕作地で育てた作物を飼料として与えられる動物がますます増えている。実際、世界の耕作地のほぼ半分が家畜の飼料生産に使われている。残念ながら、作物を肉に変えるこの過程は依然として効率が悪く、少量の食料を生産するために広大な土地が必要となる。
バイオ燃料も耕作地への圧力を強めており、特に米国やブラジルなどでその影響が大きい。
多くの国では農地利用が依然として増加しており、その多くは炭素を豊富に含む生息地を犠牲にしている
世界全体の状況は明るいものの、この進展を楽観視すべきでない理由がいくつかある。
第一に、農地利用がピークを迎えていない国は確実に存在する。農地利用は減少した国もあるが、増加し続けている国もある。
第二に、こうした土地利用の変化が世界各地でどのように分布しているか、また生物多様性の喪失や炭素排出にどのような影響を与えるかという問題がある。牧草地の大幅な減少は乾燥地域で起きており、温帯地域でもここ数十年で減少が見られる。一方、多くの熱帯諸国では牧草地が拡大し続けている。実際、別の記事で取り上げたように、牛肉生産のための放牧地拡大は、世界全体(および熱帯地域)の森林減少を引き起こす最大の要因であり続けている。
乾燥地域や温帯地域から熱帯地域へ牧草地が移っていることが重要なのは、熱帯地域のほうが生物多様性と炭素に富んでいるためだ。世界の種の半数以上が熱帯林に生息している。熱帯林は大規模な炭素吸収源でもあり、単位面積当たり多くの炭素を蓄えることができる。
第三に、先ほど述べたように、世界の耕作地は今も拡大している。図表からもそれが分かる。ほかの情報源によれば、この増加のペースはさらに速い可能性がある。世界資源研究所(World Resources Institute)はこの研究をこちらでさらに詳しく検討している。
最後に、牧草地として利用される土地の面積を定量化するのは難しい。ここでは、国勢調査データ、各国の報告、専門家の推計に基づく国連食糧農業機関(UN FAO)の農地利用報告データに焦点を当てているが、そこには不確実性が伴う。衛星データなどを活用して農地利用の測定方法を改善すれば、変化をより綿密に監視できる。
減少の継続は保証されない。土地利用の未来は、今日の私たちの決断にかかっている
複数の情報源によると、世界の農地利用はここ数十年で減少している。しかし、今後も減少が続くとは限らない。
最初の図表にあるHYDE 3.2の系列を見ると、土地利用は2000年代初頭に最も高い水準に達し、その後減少したが、近年は小幅な回復を見せている。サハラ以南アフリカと南米では、土地利用が依然として拡大している。人口が増え、所得が上がるにつれて、土地への圧力は今後も続く。
だからこそ、私がこちらで論じているように、作物の収量と農業生産性の向上が重要となる。肉の消費を減らして土地への圧力を和らげること、そしてバイオ燃料に充てる土地を減らすことも不可欠だ。
こうした改善への投資を怠れば、この世界的な傾向を逆転させるおそれがある。ピークは短命で一時的なものに終わるかもしれない。これを優先課題にすれば、あらゆる地域でピークへの到達を早められる。



