新型コロナウイルスの影響で世界の自然観光が停止し、従業員と地域社会は生活の維持に苦しんでいる。
犯罪組織の標的となるおそれさえある。
20年以上にわたり、M・カイリは公園ガイドとして働き、西インドネシアの緑豊かな森林を歩いたり、絶滅危惧種のオランウータンを見つけたりしたい観光客を、絶え間なくではないものの定期的に案内してきた。
群島各地にある56の保全地域は、新型コロナウイルスの拡大を抑えるため3月以来すべて閉鎖されている。そこで生計を立てる他の何千人もの人々と同じく、カイリも今は失業し、暮らしを成り立たせるのに苦労している。
「米を買うくらいはできます」と、収入が約75%減って週17ドルになった48歳のカイリは語った。
「私たちのうち約500人が職を失いました」と、スマトラ島のグヌン・ルセル国立公園で働く仲間のガイドについて、トムソン・ロイター財団に語った。
ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界で新型コロナウイルス感染症の感染者は350万人を超え、死者は25万人を上回っている。
各国が経済活動を停止し、移動制限を実施して呼吸器疾患の封じ込めを進めるなか、国立公園や保全地域も打撃を受けている。
訪問者を頼りに生計を立てるガイドや森林地域の住民から、保護地域での保全活動、そうした生息地に依存する野生生物まで、環境保護活動家はパンデミックが広範囲に及ぶ影響をもたらしかねないと警告する。
統計局のデータによると、新型コロナウイルスの流行で旅行が敬遠され、インドネシアの外国人観光客の入国者数は3月に前年同月比64%減の約47万1,000人となり、1月の半分を下回った。
政府は、今年、観光収入が100億ドルを超えて失われる可能性があると警告している。
4人の子どもを養うカイリは、ゴム農園で低賃金の肉体労働を見つけることができたが、地方政府から金銭的な支援を受けておらず、先行きを不安に感じている。
「今は私たち全員にとって、とても厳しい状況です」と彼は語った。
犯罪組織
アフリカでは、ルワンダ、ケニア、ボツワナなどで、野生生物観光事業に頼って生計を立てる地域社会が新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われている。
国連世界観光機関によると、昨年は7,000万人を超える観光客がアフリカを訪れた。その多くはサファリや野生動物の観察ツアー、あるいはトロフィーハンティングに魅力を感じていた。
しかし、空港や国境が閉鎖され、そうした収入の大半は一夜にして消えた。
これにより、アフリカの国立公園や保護区の内外に暮らす貧困家庭の何百万人もの経済活動が断たれただけでなく、森林保全や密猟対策の取り組みも損なわれた。
政府からの資金が乏しいなか、大陸各地の国立公園は運営費を賄い、そこで繁栄する動植物を保護するため、観光収入に大きく依存している。
「資金が不足すると、公園は頻繁にパトロールできません。車の燃料が必要ですし、レンジャーが巡回に出るための食料も必要です」と、アフリカ野生生物財団の最高経営責任者、カドゥ・セブニャ氏は語った。
「観光客はおらず、ソーシャルディスタンス対策でレンジャーも減っています。そのため犯罪組織が天然資源を採取しやすくなっています。」
セブニャ氏は、観光業から直接または間接的に生計を立てるアフリカの2,000万~3,000万人の人々を最も懸念していると語った。
多くの人が、サファリロッジの運営や村のツアーの案内、伝統的な農産物や手工芸品の販売など、エコツーリズム事業に携わっている。自給自足の農業以外に生計を立てる手段がない人もいる。
保全活動家は、何十年にもわたり森林破壊や密猟の抑制に協力してきた困窮地域の住民が、生活を立てるため、絶滅危惧種の密猟や木炭取引用の伐採を行う犯罪集団に利用されるおそれがあると懸念している。
「人々は家に座ったまま飢えるわけにはいきません。近くにある天然資源に頼るでしょう。森があれば木を切る。公園があれば動物を狩る。川があれば魚を獲りすぎる」とセブニャ氏は語った。
観光ロッジやレンジャーの仕事を解雇された人々は「誰よりも公園をよく知っている」ため、密猟者から勧誘の標的にされる危険があると、同氏は付け加えた。
「危機的な時期」
英国を拠点とする46の慈善団体から成るワイルドライフ・トラスト連合も、パンデミックによる前例のない課題に直面している。
世界でも自然が最も損なわれた国の一つである英国では、新型コロナウイルスの流行により、自然保全がこれまでになく難しくなっている。
同ネットワークによると、一部の職員は一時帰休となった一方、働き続ける職員は、野生生物の銃撃や不法投棄など違法行為の増加への対応に貴重な時間を取られている。
その一方で、不可欠な保全活動は中断を余儀なくされ、外来種の急増、希少な野生の花が咲く草地の劣化、野生生物の再導入の停滞、ヤマネなどの種が失われる可能性につながっている。
「ビジターセンターや募金活動からの収入が急減する一方、何千もの自然保護区を管理する需要はかつてなく高まっており、私たちの運動にとって危機的な時期です」と、ワイルドライフ・トラスト連合の最高経営責任者、クレイグ・ベネット氏は語った。
ベネット氏はまた、新たな法律の制定の遅れ、動物のワクチン接種プログラムや海岸清掃の中止、自然保護区での不法投棄、破壊行為、盗難の増加、希少な鳥の違法な銃撃がもたらす悪影響を指摘した。
各国政府は新型コロナウイルス感染症という「人道上の緊急事態」への対応に追われ、今、自然への投資を訴えるのは難しくなっていると、国連開発計画(UNDP)生物多様性ファイナンス・イニシアティブのグローバルマネージャー、オンノ・ファン・デン・ヒューベル氏は語った。
しかし、生物多様性の保全は世界で推定2,200万人の雇用を生み出している。ロックダウン中、人々は進行中のプロジェクトへのクラウドファンディングを通じて支援できると同氏は述べた。
UNDPは現在、例えばレンジャーが職を続けられるよう資金を集めるため、3~6カ国を対象にした具体的なクラウドファンディング・キャンペーンを検討している。同氏によると、パンデミック以前から貧困状態にあった人が多い地域社会への支援も行う。
「公園は閉鎖され、観光客は自宅にいて、収入源は枯渇しつつあります。追加資金をすぐに必要としているのです」と同氏は語った。
