自動運転車の革命によって、多くの仕事がなくなるだろう。米国だけでも、自動運転車によって失われる仕事は410万件に上ると推定されている。トラック運転手、配達員、タクシー運転手、Uberのドライバーは職を失うことになるが、その時期は思っているより早いかもしれない。しかし、自動化は、より低コストで、安全かつ効率的に仕事を行うという、社会にとって有益な力にもなり得る。実際、さらなる自動化が切実に求められている分野がある。救急医療サービスだ。
救急車の利用需要は、急速に高まっている。先進国では、人口の増加と高齢化、慢性疾患の増加、そしてプライマリケアを担う診療所や医療従事者の不足が重なっているためだ。その結果、救急サービスは過重な負担を抱え、今後の見通しも厳しい。
すでに自動運転車が道路を走るなか、一部の政府は自動運転救急車の導入を検討している。自動運転救急車をはじめとする技術は、救急サービスの負担を軽減し、救急救命士が重症患者の対応に専念できるようにする可能性がある。治療を待つ時間が1分延びるごとに、患者の生存率が大幅に低下するようなケースだ。これには心停止の患者も含まれる。心停止では通常、4~6分以内に脳の損傷が始まる。
当初、医療サービスは自動運転救急車を、現在の有人救急車と並行して導入し、軽症患者に対応させることができる。いわば「医療タクシー」として運用を始めるのだ。軽症患者を自動運転救急車で迎えに行き、治療を受けるため最寄りの病院や診療所へ搬送する。こうした救急車の導入により、重症度にかかわらず、あらゆる通報に救急救命士が出動する必要性は大幅に減るだろう。
ただし、自動運転救急車に誰もが賛成しているわけではない。米国で1,000人強を対象に行われた調査では、およそ半数が自動運転救急車に乗ることに抵抗はないと答えた。
ドローンによる支援
ドローンは、Amazonの荷物を配達したり、近隣住民を監視したり、軍事攻撃に使われたりするだけでなく、救急サービスの負担を軽減するために医療機関でも活用できる。とりわけ、遠隔地への医療機器の配送に役立つだろう。実際、Ziplineというスタートアップ企業はすでに、ルワンダ全土で血液や医薬品の配送に成功している。こうしたサービスは先進国でも活用できる。たとえば、へき地の医師がまれな疾患の患者を治療する際、診療所や地域の病院に必要な医療用品がなければ、ドローンで届けることができる。また、有人救急車が到着する前に、治療に不可欠な医療機器をドローンで指定の受け渡し地点に運ぶこともできる。そうすれば、救急救命士が到着し次第、患者の治療を始められる。
ドローンは、専門的な機器や医薬品、さらには血液製剤を病院間で輸送する用途にも使える。これにより、患者を治療できる施設を探して救急車が遠くまで走る必要性を減らせる。
緊急事態を予測する
世界各地の警察は数年にわたり、高度なアルゴリズムを用いて、犯罪が起きる可能性が最も高い地域を予測してきた。これにより、警察は「需要の高い」地域に警察官を配置できる。「マイノリティ・リポート」のような予測システムは論争を招いてきたが、疾病が多発する地域を予測する同様のシステムなら、反発は起きにくいだろう。
同様のシステムを救急サービスにも導入できる。有人・無人を問わず、救急車の過去の出動データを収集する。ソフトウェアは、季節、天候、コンサートや抗議活動などの公共イベント、高齢者や困窮者といった住民の属性、そして救急車が過去に対応した緊急事態を考慮する。これにより、自動運転救急車は待機中にリスクの高い地域に配置され、通報により迅速に対応できるようになる。
こうしたシステムは、情報を蓄積するほど、医療上の緊急事態をより正確に予測できるようになる。ソーシャルメディア企業や広告会社が使うデータマイニングツールが、好みの食べ物や服、映画など、さらには将来気に入りそうなものまで把握する精度を高めていくのと同じだ。
こうした新しい手法はまだ先の話に思えるかもしれない。しかし、医療制度がどれだけ早くこうした技術に投資し、導入するかによっては、数十年以内に医療の受け方を変える可能性がある。高まり続ける需要を前に、技術は救急サービスの救世主となり、対応をより迅速、効果的かつ安全にする可能性が高い。ただし、人々がこの考えに抵抗を感じなくなるまでには、時間がかかるかもしれない。

