グローバルサウスにとってロックダウンは最善策ではない理由

A woman wearing a protective mask waits for a bus to return to her village during lockdown by the authorities to limit the spreading of coronavirus disease (COVID-19), in New Delhi, India March 23, 2020
Economic and cultural contexts make lockdowns even more challenging in the Global SouthImage: REUTERS/Adnan Abidi
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  • 高所得国のパンデミック対応をまねることは、グローバルサウスにとって最善の戦略とは限りません。

  • 例えばロックダウンは、貧しい国々が立ち直れないような予期せぬ影響をもたらす恐れがあります。

  • これらの国々は、短期的な応急措置よりも、医療分野の長期的な能力構築を優先すべきです。

COVID-19のパンデミックが進むにつれ、高所得国がウイルス対策として導入した多くの手段や措置は、低・中所得国(LMIC)の状況にはおそらく適していないことが、ますます明らかになっています。どの国にも同じ策が通用するわけではありません。

世界のリスクにさらされている人口の半数を占めるにもかかわらず、LMICの視点から見た課題や解決策の可能性は、メディアの注目を集め、広く議論されるには至っていません。このブログシリーズでは、LMICの視点から医療の課題を取り上げます。具体的には、プライマリーヘルスケア、ワクチンへのアクセス、性と生殖に関する健康、メンタルヘルスに対する現在および将来起こりうる影響などです。私たちは、地域と世界の医療分野に携わり、前向きな変化を起こすという共通の情熱を持つ人々のグループです。

この最初の記事では、ロックダウンの実行可能性と妥当性を問い、LMICの経済が縮小した場合に医療提供へ現在および将来もたらされうる影響を指摘します。最後に、COVID-19だけにとどまらず、最大の苦痛と死を招く恐れのある医療課題に、指導者たちが改めて目を向けるよう呼びかけます。

危機は深刻です

欧州や米国では再び経済活動が始まっていますが、グローバルサウスの広い地域では依然としてロックダウンが続いています。インドなどで、ロックダウンに巻き込まれた労働者とその家族が、灼熱の中、何百キロも歩く以外に選択肢がない様子を捉えた映像は、COVID-19への対応でLMICが直面する難しい選択を示しています。高所得国でも激しい議論を呼ぶロックダウンは、LMICではさらに難しい課題です。LMICには、複数世代が同居する家族構成や人口密度の高い都市部があり、労働者の大半が日払いの非公式部門で働く国も含まれます。つまり、同じ場所にとどまり自己隔離する能力が限られた人々が多いのです。さらに、COVID-19以前から基本的な医療ニーズへの対応に苦慮していた、資金不足の医療制度もあります。こうした状況を踏まえると、高所得国の対応をまねることは望ましくなく、LMICで最善の結果をもたらす可能性も低いことが分かります。

まず、この問いから始めましょう。LMICはパニックに陥り、西側諸国の最悪の解決策を盲目的にまねる余裕があるでしょうか。答えは明確に「ありません」です。世界銀行によると、大半の国が景気後退に陥る見通しです。LMICもその中に含まれ、過去60年間で最大の経済縮小が予想されています。これらの数字をもとに、Center for Global Developmentは、今後の景気後退によって驚くべき数に上るCOVID-19以外の原因による乳児死亡が10万~20万件来年までにLMIC全体で発生する可能性があると推計しています。)。実際、ネパールで行われた最近の研究では、ロックダウン中に乳児死亡率が3倍になったことが分かりました。

世界では、約1億2,000万人の子どもが不可欠な予防接種を受けられない恐れがあります。例えば麻疹の予防接種が該当します。また、オックスファムは、パンデミックによって悪化した飢餓危機が、感染症そのものよりも1日当たり多くの人々の命を奪う可能性があると警告しています。LMICの多くの国には効率的な医療制度があると主張する人もいるでしょう。しかし、こうした制度がパンデミックに直面すると脆弱であることを忘れがちです。ロックダウンは人の移動を妨げるだけでなく、医療物資の供給網や栄養へのアクセスも阻害します。医療へのアクセスが限られるLMICでは、もともと危機が深刻でしたが、ロックダウンは、これらの国々が立ち直れないような予期せぬ影響をもたらしているようです。

「過去に戻って新たな始まりをつくることはできない。でも、今日から新たな結末をつくることは誰にでもできる。」—マリア・ロビンソン

パンデミックは、貧困対策で積み重ねた何年もの進歩を覆しかねないImage: エコノミスト

強靭で公平な医療制度への投資

WHO事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス氏は、次のように述べています。「あらゆる感染症の流行に対する最善の防御は、強固な医療制度です」。実際、パンデミックによって、ほとんどのLMICで医療制度の脆弱さが露呈しました。比較的強固な医療制度を持つ国として、スリランカとマレーシアが挙げられます。スリランカの制度は、感染症が広がっていた1920年代に設計され、長期にわたる公平なプライマリーヘルスケアを目標としていました。順風満帆とはいかなかったものの、この制度によって、スリランカは現在の危機により効果的に対処できています。マレーシアでは、政府が速やかに資源を動員し、不可欠な保健サービスを継続しながらプライマリーヘルスケアの対応能力を十分に高めました。マレーシアが最も深刻な打撃を受けた国の一つではなかったという意味ではありません。しかし、戦略的な準備と医療制度への過去の投資により、パンデミックに対処し、多くの国より早く立ち直ることができました。インド、バングラデシュ、ネパール、パキスタンのような国々は、これらの例から何を学べるでしょうか。答えはおそらく明らかです。場当たり的な応急措置から脱し、戦略的な能力構築策へと移行することです。そうすれば、医療制度は現在のプライマリーヘルスケアのニーズ、パンデミック、そして将来のニーズに、より適切に対応できるようになります。

私たちの知る限り、COVID-19はすぐにはなくなりません。全体的な結果を左右する重要な要素の一つは、初期のパニックから、ほかの既知の病気と同じようにCOVID-19に対処する段階へ、どれだけ早く移行できるかです。興味深いことに、中国に近い国々は、これまでのところうまく対応しています。これらの国々からは、現在のパンデミックへの対処だけでなく、将来のパンデミックへの備えについても学ぶことができます。各国の対応には違いがありますが、共通する重要な点の一つは、SARSなど過去の感染症流行で苦労して得た経験を、すべての国がパンデミック対応の仕組みに取り入れていることです。中国からの初期警告を真剣に受け止め、社会的距離の確保、検査、保健当局間の積極的な連携を実施し、ウイルスの拡散を速やかに抑えました。

COVID-19の収束後に力強く立ち直ることは選択肢ではなく、必須です。そのためLMICは、世界が病気やさまざまな対策の有効性について知見を深めるなかで、適切な問いを立て、軌道修正しながら、より賢明かつ機敏に対応しなければなりません。そうすることでLMICは、パンデミックに対処しながら、パンデミック前の水準の予防接種、糖尿病管理、母子保健、避妊へのアクセス、その他の不可欠な医療を維持できます。結局のところ、目標はCOVID-19に勝つことではなく、誰一人取り残さないことだと忘れてはなりません。

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