より安全で、低コスト、健康的な選択肢――高齢者の在宅ケアを今こそ見直す

A doctor in protective suit visits the home of a person suffering from the coronavirus disease (COVID-19) in Bergamo, the epicentre of Italy's outbreak, April 16, 2020. Patients with symptoms that are not too severe are treated at home in Bergamo, to avoid overcrowding hospitals already overwhelmed with patients needing intensive care
Even before the pandemic, home care was a preferred option for many older peopleImage: REUTERS/Flavio Lo Scalzo
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  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、介護施設の脆弱性が明らかになりました。

  • 在宅ケアは施設ケアより安全で費用も抑えられ、患者の転帰も良好です。

  • 政府や医療提供者が、在宅ケアをより手頃で利用しやすくする方法を紹介します。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界の医療制度の強みと弱みを浮き彫りにしました。注目された分野の一つが在宅ケアであり、その利点と課題の両方が明らかになりました。在宅ケア業界は、医師の訪問診療、創傷処置や経鼻胃管の交換などの看護サービス、慢性疾患の管理、入浴、理学療法といったサービスに加え、服薬のリマインドや入浴、話し相手になることなど、臨床以外のサービスも提供しています。

パンデミックにより、病院が新型コロナウイルス感染症の患者への対応に苦慮するなか、医療機関へのアクセスが制限され、施設中心の医療は大きく揺らぎました。予定手術は延期され、治療は中断し、診療も縮小されました。同時に、介護施設や熟練看護施設の脆弱性も明らかになりました。これらの施設ではウイルスが急速に広がり、新型コロナウイルス感染症による死亡者の多くを占めています。米国では、死亡者のうち40%が介護施設で発生しました。一方、欧州では、死亡者の50%がこうした施設で発生しました。カナダでは、その割合は80%に達することもありました。パンデミックの間、高齢者にとって自宅にとどまることは、自らを守り、必要な医療サービスを受けるうえで最も安全な方法でした。

なぜ在宅ケアなのか?

パンデミック以前から、在宅ケアは高齢者に好まれるケアの形でした。年を重ねるにつれて、人々が最も恐れるのは自立を失うことです。米国で2007年に実施された調査では、高齢者の26%が、自立を失うことを最大の不安として挙げました。次いで13%が、自宅を離れて介護施設に入ることを最大の不安としていました。死を最大の懸念として挙げた回答者はわずか3%でした。同じ調査では、高齢者の89%が、自宅で暮らし続けることを非常に重要だと考えていることも示されました。

そうした気持ちは理解できます。自宅で暮らせば、高齢者は日々の生活について自分で決め続けられ、社会的なつながりも保てます。ケアを個々の状況に合わせやすく、高齢者はより高い生活の質と、より大きな幸福感を得られます。

在宅ケアは施設ケアより費用が抑えられ、患者の転帰も改善することが示されています。2019年に実施された、メディケアの入院件数1,700万件を調べた研究は、2010年から2016年にかけて、在宅ケアと熟練看護施設への入所を比較しました。その結果、在宅ケアは入院後60日間で平均4,514ドルの費用削減につながることが分かりました。個人用緊急通報システムや遠隔モニタリングなどの技術支援を活用すれば、患者の転帰が改善する一方で、費用はさらに下がります。在宅医療業界を対象とした2016年の調査では、在宅ケア提供者に遠隔医療の利用がもたらす影響を尋ねました。回答者が挙げた最大の効果は、ケア全体の質が75%向上したこと、患者満足度が63%上昇したこと、予定外の入院が63%減少したことでした。

多くの国で、介護施設は新型コロナウイルス感染症による死亡者の大きな割合を占めましたImage: Statista

主な課題

利点がある一方で、在宅ケアを選ぶことには課題もあります。虚弱度が高い場合や、より多くの臨床ケアを必要とする状態では、在宅ケアが現実的でない、または安全でないことがあります。在宅ケアでは、家族など介護者の関与もより多く必要です。その負担は女性の家族に偏りがちで、ケアの調整や監督、ケアの不足を補うために、より多くの役割を担わなければなりません。知識や技能が十分でないことに直面し、非公式な介護を担うなかで、より大きなストレスや不安を感じています。EUでは、高齢者または障害のある人に非公式な長期ケアを提供する人の62%を女性が占めています。とりわけ退職前の年齢層(50~64歳)の女性が、こうしたケアを担う可能性が高くなっています。そのため、退職後には女性の不平等がさらに深まります。

世界的に、在宅ケア業界では介護人材の需要が供給を上回り、人手不足が生じています。訓練を受けた人材の不足は医療全般に共通する問題ですが、在宅ケア分野では低賃金と職業への敬意の欠如が問題をさらに深刻にしています。米国やシンガポールを含む多くの国では、価格は政府の診療報酬率によって決まります。価格を引き上げようとする政治的意思が乏しいため、在宅ケア職員の賃金は事実上頭打ちとなり、職員の研修や福利厚生への投資にも影響しています。患者宅を訪問し、単独で働くため、在宅ケア職員は言葉や身体による暴力を受けるリスクが高く、業界の魅力を一層損なっています。国内の人材を増やせない多くの国は、こうした役割を担う人材を移民や一時的な外国人労働者に頼っていますが、それに伴う問題も生じています。

施設ケアと比べると、世界の在宅ケア業界に対する規制は限定的であり、質や基準をめぐる疑問が生じています。生産性や有効性を高める可能性があるにもかかわらず、テクノロジーの導入も進んでいません。

解決策

パンデミック後、政府は在宅ケアを改めて検討すべきです。高齢者にとって、より安全で手頃な価格の、質の高い選択肢となるからです。そのためには、各国の医療制度の運営や財源を見直し、在宅ケアにより多くの予算と資源を振り向ける必要があります。在宅ケアを公的・民間の医療保険で賄えるようにすれば、家族にとってより手頃で利用しやすくなります。在宅ケアへの補助率を引き上げれば、在宅ケア職員の賃金向上にもつながります。

より多くの家族が在宅ケアを選べるよう、非公式な介護を担う人々に、より多くの情報提供と地域の支援を行う必要があります。在宅ケアを利用する家族への補助や、非公式な介護者への税額控除など、無償で介護を担う人々を支えるために、より多くの資金を振り向けるべきです。

在宅ケア業界の基準をより明確に定め、規制を強化する必要があります。これにより、ケアの質を高め、研修基準を引き上げ、業界の専門性をさらに高められます。また、高齢者がケアの全過程を通じて切れ目のない多職種連携ケアを受けられるよう、在宅ケアを病院やその他の地域ケアとより緊密に連携させる必要があります。政府は在宅ケアにおけるテクノロジーの活用を促進すべきです。特に5Gやクラウドコンピューティングの登場により、遠隔医療などの革新的なケアモデルが可能になり、費用を抑え、ケアの転帰を改善し、職員の生産性を高められるからです。テクノロジーは、ケアの連携においても重要な役割を果たします。

多くの国が、ケアの質を高め、医療費を抑える方法として、地域ケアを取り入れ始めています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、施設中心のケアから離れる動きをさらに後押ししました。今こそ、在宅ケアを取り入れ、医療制度のあり方を抜本的に変えるために、必要な政策決定を行う時です。

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